金利は半年ごと、返済額は5年ごと

変動金利の適用金利は、通常半年に1回見直されます。 一方で毎月の返済額が変わるのは5年に1回です。これが5年ルールです。

多くの金融機関では、基準金利の見直しは4月1日と10月1日に行われ、 4月1日の見直しは7月の返済分から、10月1日の見直しは翌年1月の返済分から適用されます。 金利が動く月は借入月からの経過ではなく、この暦に貼り付いています。

つまり金利が上がっても、返済額は最長で5年近く据え置かれます。 銀行から金利変更の通知が届いても返済額が変わらないため、 「自分には関係なかった」と受け取ってしまう人が少なくありません。

全国銀行協会は2026年6月18日、住宅ローン利用者への金利変動リスクの説明について、 2004年12月の申し合わせを21年半ぶりに見直しました。 金利変更の幅を書面などで十分に説明すること、オンライン契約の利用者にもシミュレーションなどで リスクを分かりやすく伝えることが求められています。 裏を返せば、これまで十分に伝わっていなかった論点だということです。

返済額は同じでも、中身が入れ替わる

毎月の返済額は「利息」と「元金」に分かれています。 利息は残債 × 金利 ÷ 12で決まるため、金利が上がれば利息は必ず増えます。 返済額が据え置かれている以上、増えた利息の分だけ元金に回る額が減ります。

言葉だけでは実感しにくいので、実際に計算します。 3,000万円を35年・当初1.0%で借り、2年目から半年ごとに金利が上がり続けた場合の推移です (5年かけて+1.5%に向かうペース。据え置きが明ける時点の金利は2.2%)。

時点適用金利毎月返済額 うち利息うち元金残債
2026年4月 1% 84,685円 25,000円 59,685円 2,994万円
2027年4月 1.15% 84,685円 28,060円 56,625円 2,922万円
2028年4月 1.45% 84,685円 34,581円 50,104円 2,857万円
2029年4月 1.75% 84,685円 40,884円 43,801円 2,799万円
2030年4月 2.05% 84,685円 47,023円 37,662円 2,749万円
2031年2月 2.2% 84,685円 49,793円 34,892円 2,713万円

このサイトの計算エンジンで算出した値です(月割り利息・円未満切り捨て)。 エンジンは公表シミュレーション値と一致することを検証しています。

毎月の返済額は84,685円のまま、1円も変わっていません。 しかし内訳は入れ替わります。利息は25,000円から49,793円へ増え、 元金に回る分は59,685円から34,892円へ、 約42%減りました。

金利が上がらなかった場合と比べると、据え置きが明ける5年後の時点で残債は 742,756円多く残っています。 この差は、払ったはずのお金が元金ではなく利息に回った分です。

据え置き期間が終わって返済額が改定されるときには、想定より元金が減っていません。 その残った元金を、短くなった残り期間で返すことになるため、改定後の返済額はより大きく上がります。

125%ルールは「上限」であって「免除」ではない

5年ごとの改定でも、新しい返済額は直前の1.25倍までという上限があります。これが125%ルールです。 急に返済額が2倍になるような事態は避けられます。

ただし、これは支払いを減らすルールではありません。 本来必要な額との差は元金の返済が先送りされるだけで、返済期間の後半か最終回に必ず戻ってきます。

先ほどのペース(5年で+1.5%)では、5年後の改定額は102,793円で、 上限の105,856円には届きません。この程度の上昇なら125%ルールは出番がないということです。

上限が実際に効くのは、もっと急な上昇のときです。 同じ3,000万円・35年で、3年かけて+3.0%(1.0%→4.0%)まで上がった場合を計算します。

項目金額
改定前の返済額84,685円
本来必要な返済額136,034円
125%ルール適用後105,856円
先送りされた分(毎月)30,178円

2031年3月時点・適用金利4%での改定。計算エンジンによる算出値です。

本来なら136,034円必要なところ、上限に当たって105,856円で止まります。 差額の30,178円は免除されたのではなく、元金の返済が先送りされただけです。 次の5年でさらに金利が上がれば、この先送りは積み上がっていきます。

返済額別・125%ルールの上限はいくらか

上限の金額は、残債や金利ではなくいまの毎月返済額だけで決まります。 直前の返済額の125%が、次の改定で提示されうる上限です。

注意したいのは、上限が改定のたびに積み上がる点です。 1回目の改定で上限いっぱいまで上がれば、2回目の上限はその額の125%になります。 改定は5年ごとなので、3回目は15年後です。

いまの毎月返済額 1回目の上限
(5年後)
2回目の上限
(10年後)
3回目の上限
(15年後)
いまとの差
60,000円 75,000円 93,750円 117,187円 57,187円
80,000円 100,000円 125,000円 156,250円 76,250円
100,000円 125,000円 156,250円 195,312円 95,312円
120,000円 150,000円 187,500円 234,375円 114,375円
150,000円 187,500円 234,375円 292,968円 142,968円

計算エンジンの上限値(1.25倍)を改定ごとに適用した算出値です。 2回目・3回目は、いずれの改定でも上限いっぱいまで上がった場合の額で、実際の改定額は そのときの残債・残り期間・適用金利で決まります。

基準ケース(3,000万円・35年・当初1%)の返済額84,685円なら、 1回目の上限は105,856円、15年後の3回目の上限は165,400円で、 いまの約1.95倍にあたります。 125%ルールは1回の改定幅を抑えるもので、返済額の到達点を決めるものではありません。

もっとも、上限いっぱいまで上がるのは金利が急に上がった場合だけです。 上の表は「上限に当たったとき、いくらになるか」を示したもので、 上限に当たる上昇幅そのものは残り期間によって変わります。 返済額別の早見表は125%ルールの上限はいくらか早見表、 止まった差額が次の改定でどう戻るかは125%で止まった差額は次の改定で戻る、 上限が金利や総支払額には効かないことは変動金利に上限はないで扱っています。 自分の次の改定時期は借入年月の早見表で確認できます。

未払利息が発生する条件

金利がさらに上がり、1ヶ月分の利息が毎月の返済額を超えると、 返済額の全額を利息に充てても足りなくなります。この足りない分が未払利息です。

全国銀行協会は、この状態を 「返済額からローンの元金部分に充当される金額はゼロになります。つまり、ローン残高は減らなくなり、 利息だけを支払っていく状態が続いてしまいます」と説明しています。 未払利息は「通常の返済とは別に支払わない限り、翌月以降、返済終了時まで蓄積されていきます」。

重要な点として、未払利息にさらに利息がかかることは一般的にありません (全国銀行協会)。雪だるま式に増えるわけではありません。 ただし、通常の返済が終わっても未払利息分が残る可能性があり、 具体的な支払い方法は金融機関によって異なります。

未払利息が発生する金利の水準は、次の式で求められます。

未払利息が発生する金利 = 毎月の返済額 × 12 ÷ 残債

借入額ごとに計算すると、こうなります(いずれも35年・当初1.0%で借りた場合)。

当初借入額毎月返済額未払利息が発生する金利
2,000万円 56,457円 3.39%
3,000万円 84,685円 3.39%
4,000万円 112,914円 3.39%
5,000万円 141,142円 3.39%

計算エンジンによる算出値。借入直後(残債=借入額)の時点での水準です。

借入額が違っても閾値がほぼ同じなのは、返済額も借入額に比例して大きくなるためです。 効くのは借入額ではなく、当初の金利と返済期間だということが分かります。

残債が減るほど、この閾値は上がっていきます。返済が進んでいる人ほど余裕があり、 借りたばかりの人ほど閾値が近い、という関係になります。 ご自身の数字での閾値は、試算ツールで確認できます。

残債と残り期間別・未払利息が出る金利

閾値は残債と毎月返済額で決まるので、返済が進むほど上がっていきます。 3,000万円・35年・当初1%で借りた人が、金利が動かないまま返済を続けた場合、 残債と残り期間はこの組み合わせで進みます。

時点残債残り期間 毎月返済額未払利息が出る金利
借入直後 3,000万円 35年 84,685円 3.39%
5年後 2,633万円 30年 84,685円 3.86%
10年後 2,247万円 25年 84,685円 4.52%
15年後 1,841万円 20年 84,685円 5.52%
20年後 1,415万円 15年 84,685円 7.18%
25年後 967万円 10年 84,685円 10.51%
30年後 495万円 5年 84,685円 20.51%

計算エンジンで返済予定表を作り、各時点の残債と返済額から「毎月返済額 × 12 ÷ 残債」を算出した値です。 金利が当初のまま変わらなかった場合の推移です。

借入直後の3.39%に対し、15年後は5.52%、 25年後は10.51%です。 同じ残り期間なら、残債の大小で水位はほとんど動きません。 残り30年の時点で残債を変えて計算すると、 1,000万円で3.86%、2,000万円で3.86%、3,000万円で3.86% と、どれもほぼ同じ水準です。返済額も残債に比例して決まるためです。 効くのは残債の額ではなく残り期間と金利です。

ただし、据え置き期間中に金利が上がっている最中は、この水位の上がり方も鈍ります。 元金に回る額が減り、残債の減りが遅れるためです。 先ほどの「5年で+1.5%」のペースでは、据え置きが明ける直前の水位は3.74%で、 金利が動かなかった場合の3.84%より低い位置にとどまります。 金利が上がる局面では、水位が近づく一方で、水位自体が逃げてくれないという関係です。

金利別の水位は未払利息は何%から出るか早見表、 発生した場合の累計額と期間は未払利息はいつ発生していくらかで扱っています。 水位を上げる手段としての繰上げ返済は危険水位を1ポイント上げる必要額、 水位が近いときの選択肢の比較は未払利息が近いときの選択肢を比較にあります。

5年ルール・125%ルールが無い金融機関もある

これらのルールは法律で決まっているものではなく、金融機関ごとの取り扱いです。 ソニー銀行・PayPay銀行・SBI新生銀行など、ルールを設けていないところもあります。 また、これらのルールは元利均等返済の場合の取り扱いで、元金均等返済には適用されません。

ルールが無い場合、金利が上がるとその都度返済額が改定されます。 返済額はすぐ上がりますが、元金は予定どおり減り続けるため、未払利息は発生しません。 どちらが有利かは一概には言えず、

  • ルールあり … 返済額の変化は緩やか。ただし元金の減りが遅れ、総支払額は増える
  • ルールなし … 返済額はすぐ上がる。ただし先送りが起きないため総支払額は抑えられる

という違いです。ご自身の契約がどちらかは、金銭消費貸借契約書か金融機関の商品説明書で確認できます。

まず確認したい3つの数字

  1. 次に返済額が改定されるのはいつか(前回の改定から5年後)
  2. そのとき返済額はいくらになるか(125%の上限に当たるか)
  3. 未払利息が発生する金利は何%か(いまの金利からどれだけ余裕があるか)

この3つは、いまの残債・金利・残り期間があれば計算できます。 試算ツールでは、金利の上がり方を何通りか変えて、この3つがどう動くかを確認できます。

参考にした資料