1. 返済期間が10年未満になると、控除の対象外になる
住宅ローン控除には「償還期間10年以上」という要件があります。 借り換えのときに返済期間を短くして、10年を下回ると控除が受けられなくなります。
実際に計算します。次の条件で3通りを比べたものです。
残債2,500万円・残り12年・適用金利0.9%、控除の残りは3年、年収700万円。 借り換え先の金利は0.5%、諸費用は定率2.2%とします。
| 選択肢 | 総返済額 | 諸費用 | 受け取れる控除 | 実質の総支払額 |
|---|---|---|---|---|
| そのまま(残り12年・0.9%) | 26,383,593円 | — | −451,795円 | 25,931,798円 |
| 12年で借り換え(0.5%) | 25,762,633円 | 770,000円 | −450,313円 | 26,082,320円 |
| 9年で借り換え(0.5%) | 25,571,868円 | 770,000円 | 0円(対象外) | 26,341,868円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。控除額は年収からの概算の所得税額で頭打ち判定をしています。
まず目を引くのは、この条件では借り換えないのが最も安いことです。 金利は0.9%から0.5%へ0.4%も下がるのに、 残り12年では金利差で稼げる額が諸費用770,000円に届きません。 12年で借り換えても、そのままより150,522円多く払うことになります。
そのうえで、「どうせなら早く返そう」と9年で借り換えると控除がゼロになります。 残り3年分の451,795円を丸ごと失い、 そのままとの差は410,070円まで開きます。
総返済額だけを見れば、9年で借り換える案が25,571,868円で最も少なく見えます。 諸費用と控除を入れた瞬間に順位が入れ替わるのがこの表の要点です。 金利の下げ幅だけで判断すると、こういう逆転を見落とします。
なお「10年」は借り換え後の契約上の返済期間で判定されます。 繰上げ返済(期間短縮型)の結果として10年を切った場合も対象外になります。
2. 諸費用を上乗せして借りた分は控除の対象外
控除の対象になるのは住宅の取得のための借入だけです。 借り換えの諸費用を新しい借入額に上乗せした場合、その上乗せ分は対象になりません。
借り換え後の借入額が借り換え直前の残高を上回るときは、次の割合で按分します。
控除対象の割合 = 借り換え直前の残高 ÷ 借り換え後の借入額
先ほどと同じ残債2,500万円で、諸費用770,000円を上乗せして 25,770,000円を借りた場合、控除の対象になるのは年末残高の 97.0%です。手出しが減る代わりに、控除も少し減ります。
3. 借り換えで残高が減れば、控除額も減る
控除額は年末残高 × 控除率で決まります。 借り換えと同時にまとまった額を返済すると、その分だけ年末残高が下がり、控除額も下がります。
控除率が適用金利を上回っている間は、繰上げ返済を急がない方が有利になる場合があります。 たとえば適用金利0.475%・控除率0.7%なら、返済を早めて減らせる利息より、失う控除の方が大きくなります。 控除期間が終わってから繰上げ返済に回す、という判断が成り立ちます。
控除額には2つの上限がある
控除額は次の順で頭打ちになります。試算ツールでは両方を反映しています。
- 借入限度額:年末残高がこれを超えても、超えた分は計算に入りません。 限度額は入居年と住宅の区分(認定住宅・ZEH水準・省エネ基準・その他・中古)で変わります。
- 納めている税額:控除は「納めた税金が戻る」制度なので、 その年の所得税額を超えて戻ることはありません。所得税で引ききれない分は住民税から引かれますが、 こちらにも上限があります。
このため、年収が低めの方や扶養控除などが多い方は、 計算上の控除額(年末残高 × 控除率)を満額受け取れないことがあります。 「限度額いっぱいまで借りた方が控除で得」という話が、必ずしも当てはまらないのはこのためです。
借り換えのときに確認すること
- 控除はあと何年残っているか
- 借り換え後の返済期間は10年以上あるか
- 諸費用を上乗せするか、現金で払うか
- いまの控除額は満額受け取れているか(所得税額で頭打ちになっていないか)
試算ツールでは、この4点を入力に含めて、 控除の減少分を差し引いた実質的な損得を出しています。
手続き上の注意
借り換えをしても、要件を満たしていれば控除は引き続き受けられます。 ただし控除期間そのものは延びません。当初の入居年から数えた年数のままです。
また、借り換えた年は年末調整だけで済まない場合があります。 必要書類は借入先と税務署で確認してください。