返済額と生活費の何ヶ月分か(基準ケース)

生活防衛資金を「生活費の何ヶ月分」で考えると、住宅ローンのある家計では不足します。 収入が止まっても返済は止まらないため、毎月の返済額を生活費に足した金額が、 実際に出ていく額だからです。残債3,000万円・残り35年・金利0.6%・元利均等の返済額は 79,208円なので、ローン以外の生活費が月30万円なら、毎月379,208円が出ていきます。

ローン以外の生活費毎月の支出合計3ヶ月分6ヶ月分12ヶ月分
25万円 329,208円 987,624円 1,975,248円 3,950,496円
30万円 379,208円 1,137,624円 2,275,248円 4,550,496円
35万円 429,208円 1,287,624円 2,575,248円 5,150,496円
40万円 479,208円 1,437,624円 2,875,248円 5,750,496円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。返済額は残債3,000万円・残り35年・金利0.6%・元利均等・ボーナス返済なしで算出し、生活費は仮定として置いています。

生活費30万円の行で見ると、6ヶ月分で2,275,248円、12ヶ月分で4,550,496円です。 生活費が5万円違うと、12ヶ月分の必要額は600,000円動きます。ここは平均値ではなく、 自分の家計の実額を入れないと意味のある数字になりません。

いまの手元資金で何ヶ月持ちこたえられるか

必要額から考えるのと逆に、手元資金から「何ヶ月分あるか」を見る方法もあります。 生活費30万円のケースで、手元資金別に賄える月数を計算しました。 右の列は、金利が+1.5%上がって返済額が99,010円に改定された後の月数です。

手元資金毎月379,208円なら改定後(毎月399,010円)なら
300万円 7ヶ月分 7ヶ月分 0ヶ月
500万円 13ヶ月分 12ヶ月分 1ヶ月
800万円 21ヶ月分 20ヶ月分 1ヶ月
1,000万円 26ヶ月分 25ヶ月分 1ヶ月

このサイトの計算エンジンによる算出値です。手元資金を毎月の支出合計で割った月数で、利息や運用益は考慮していません。

手元300万円は、この条件では7ヶ月分です。12ヶ月分には届きません。 一方で1,000万円あれば26ヶ月分あり、改定後でも25ヶ月分が残ります。 金利上昇は必要額を押し上げると同時に、いま持っている現金の「月数」を短くする方向にも効きます。 ただしこの表の減り方は、500万円以上の行で1ヶ月です。 300万円の行は端数の切り捨てにより表示上は同じ月数になっています。 月数だけを見ると変化は小さく見えるので、金額の増え方は次の表で確認します。

金利が上がると必要額も増える

変動金利では、金利が上がると返済額が改定され、防衛資金の必要額も一緒に増えます。 0.6%から5年かけて上がるシナリオで、6ヶ月ごとの金利見直しと5年ごとの返済額改定、 125%上限がある前提で計算した結果です。

上昇幅改定時の金利上限なしの返済額改定後の返済額125%上限12ヶ月分の必要額
+0.5% 1.1% 86,156円 86,156円 当たらない 463万円
+1% 1.6% 93,534円 93,534円 当たらない 472万円
+1.5% 2.1% 101,351円 99,010円 当たる 479万円
+2% 2.6% 109,616円 99,010円 当たる 479万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。5年ルール・125%ルールがある前提で、5年後の初回改定額を出しています。生活費は月30万円としています。

+1.5%と+2%で改定後の返済額が同じ99,010円になっているのは、 どちらも125%上限に当たっているためです。上限がなければ+2%では109,616円になるはずで、 差額の10,606円は返済額に反映されません。 反映されない分は元金の減りが遅くなる形で残り、次の改定以降に持ち越されます。 必要額の増え方だけを見て「上限があるから安心」とはなりません。

12ヶ月分を残した上で繰上げ返済に回せる額

生活防衛資金を12ヶ月分(4,550,496円)確保し、余った分だけを期間短縮型の繰上げ返済に回した場合の効果です。 手元資金の全額を返済に充てる想定にはしていません。

手元資金12ヶ月分を残した余剰短縮できる期間減る利息
300万円 0円(不足)
500万円 449,504円 6ヶ月 96,377円
800万円 3,449,504円 4年5ヶ月 750,542円
1,000万円 5,449,504円 6年11ヶ月 1,135,046円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。期間短縮型・手数料なし・金利0.6%が続く前提で、繰上げ返済後の総利息との差額を出しています。

手元300万円は12ヶ月分に達していないため、この基準では繰上げ返済に回せる余剰がありません。 500万円でも余剰は449,504円にとどまり、短縮できるのは6ヶ月、 減る利息は96,377円です。 800万円あれば3,449,504円を回せて4年5ヶ月短縮、 減る利息は750,542円という計算です。 金利0.6%では、繰上げ返済で減る利息は投入額に対して大きくありません。 手元資金を減らしてまで急ぐ効果がどれだけあるかは、この金額を見て判断できます。 方式ごとの違いは期間短縮型と返済額軽減型の比較、 時期による差は繰上げ返済は早いほど得かで扱っています。

何ヶ月分にするかの判断基準

月数の決め方に唯一の正解はありません。ただ、判断の材料は数値化できます。 まず、収入が途切れてから次の収入が入るまでの想定期間です。転職に3ヶ月かかると見るなら、 3ヶ月分では同時に生活費の再構築ができません。次に、収入が複数あるかどうかです。 世帯収入の一方が止まっても他方で返済額を賄えるなら、必要な月数は下がります。

もう一つは、返済額そのものが変わる可能性です。全期間固定なら返済額は動きませんが、 変動金利では上の表のとおり、改定で必要額が押し上げられます。 本ページの計算では、+1.5%のシナリオで12ヶ月分の必要額が455万円から479万円へ増えました。 変動で借りているなら、この増加分を織り込んだ月数にしておくと、改定のたびに積み直す必要が減ります。

逆に、月数を増やすほど現金は寝ます。金利0.6%のローンを抱えたまま現金を持つのは、 年0.6%の利息を払って流動性を確保している状態です。上の表で言えば、 800万円のうち3,449,504円を返済に回せば750,542円の利息が減ります。 この金額を「流動性の値段」として見て、自分にとって高いか安いかを決める形になります。

変動金利では防衛資金に二つ目の役割がある

変動金利の場合、手元資金は収入が途切れたときの備えであると同時に、 返済額が改定されたときの緩衝材にもなります。5年ルールがあると返済額の改定は5年に一度ですが、 改定は一度に来ます。上の表では、+1.5%のシナリオで返済額が79,208円から99,010円へ、 月19,802円増えました。年間では237,624円です。 改定の月から家計を作り直せない場合、その差額を手元資金で埋める期間が生まれます。

もう一つ見ておくのが未払利息です。利息が返済額を超えると、超えた分は未払利息として積み上がります。 本ページの基準ケース(残債3,000万円・返済額79,208円)から逆算すると、 その分岐点は3.17%です。 本ページで置いた上昇シナリオの上限は2.6%なので、この範囲では未払利息は発生していません。 残債が大きいほど、また返済額が小さいほど、この分岐点は低くなります。 金利がどこまで上がると何が起きるかは金利2%上昇の記事でも扱っています。

自分の条件で確認する手順

最初に返済予定表を開き、残債・適用金利・残り期間・毎月の返済額を確認します。 書かれている場所は返済予定表の見方にまとめてあります。 次に、家計簿からローン返済を除いた毎月の生活費を出します。 固定資産税や保険料など年払いの支出は、12で割って毎月に均してから足します。

その二つを足した金額が、1ヶ月あたりの必要額です。これに残したい月数を掛ければ目標額が出ます。 目標額と現在の預貯金を比べ、不足しているなら繰上げ返済より先に現金を積みます。 足りているなら、超過分の範囲で繰上げ返済や運用を検討する順序になります。

変動金利の場合は、ここに金利上昇の一段を足します。 上昇後の返済額でもう一度必要額を計算し、その水準まで積んでおくかを決めます。 収入が下がった場合の負担率は年収減少時の返済負担率、 返済が厳しくなったときに取れる手は返済がきつい時の選択肢で扱っています。 なお全国銀行協会は、返済が遅れざるを得ない事情が生じた場合、実際に遅れる前にできるだけ早く相談するよう案内しています(全国銀行協会)。 手元資金が尽きてから動くより、月数が減り始めた時点で相談先を持っておく方が選択肢は多く残ります。

生活防衛資金についてよくある質問

生活費だけで計算した月数ではだめですか

住宅ローンの返済は生活費とは別に出ていくため、返済額を含めないと必要額を小さく見積もることになります。 本ページの基準ケースでは、生活費30万円に返済額79,208円を足すと毎月379,208円です。 返済額を含めない場合の12ヶ月分は3,600,000円ですが、含めると4,550,496円になります。

繰上げ返済と現金の確保は、どちらを先にすべきですか

どちらが有利かは金利と家計の状況で変わるため、一般解はありません。数値としては、 金利0.6%の場合、手元800万円のうち3,449,504円を繰上げ返済に回して減る利息は750,542円です。 この金額と、現金を持っておくことで避けられるリスクを並べて比較する形になります。 なお繰上げ返済は住宅ローン控除の残高にも影響するため、控除期間が残っている場合は 控除中の繰上げ返済も合わせて確認してください。

金利が上がったら、その時点で積み増せばよいのでは

5年ルールがある場合、金利の見直しと返済額の改定には時間差があります。 改定は5年に一度まとめて来るため、直前に気づいてから積むには期間が足りないことがあります。 本ページの+1.5%シナリオでは、改定で毎月19,802円、 年間237,624円増える計算です。 改定の時期と金額は返済予定表と金利変更のお知らせで確認できます。

まとめ

  • 返済額79,208円と生活費30万円なら、12ヶ月分は4,550,496円
  • 手元500万円は13ヶ月分。12ヶ月分を残すと繰上げ返済に回せるのは449,504円
  • 金利+1.5%の改定で返済額は99,010円、必要額は479万円に増える
  • 未払利息が出る金利は3.17%。本ページのシナリオ(最大2.6%)では発生しない