固定金利の安心料は毎月いくらか
ここでいう安心料とは、金利が上がらなかった場合に、固定を選んだせいで余計に払うことになる金額です。 保険料と同じで、上がらなければ払い損に見え、大きく上がれば元が取れます。まず、その金額を実額で出します。
条件は借入3,000万円・35年・元利均等・ボーナス返済なし。金利だけを変えて比較します。
| 金利 | 毎月返済 | 総利息 | 総返済額 | 変動0.6%との差 |
|---|---|---|---|---|
| 0.6% | 79,208円 | 327万円 | 3,327万円 | 基準 |
| 1.5% | 91,855円 | 858万円 | 3,858万円 | 531万円 |
| 2% | 99,378円 | 1,174万円 | 4,174万円 | 847万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入額・期間・返済方式を固定し、金利だけを変えています。
変動0.6%の毎月返済は79,208円、固定2%は99,378円。 差は毎月20,170円、年間では242,040円です。これが35年続くと847万円になり、 借入額3,000万円に対して28.2%にあたります。
金額の大きさに驚くかもしれませんが、これは「固定が損」という意味ではありません。 金利が上がらなかったときに限って、この差が丸ごと余分な支払いになる、というだけです。 上がった場合にどうなるかは、このページの後半で計算します。
借入額別に見た安心料
安心料は金利差から生まれるので、借入額にほぼ比例します。同じ0.6%と2%の組み合わせで、 借入額だけを変えた結果です。
| 借入額 | 変動の毎月返済 | 固定の毎月返済 | 毎月の安心料 | 35年の安心料 |
|---|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 52,805円 | 66,252円 | 13,447円 | 565万円 |
| 3,000万円 | 79,208円 | 99,378円 | 20,170円 | 847万円 |
| 4,000万円 | 105,611円 | 132,505円 | 26,894円 | 1,130万円 |
| 5,000万円 | 132,014円 | 165,631円 | 33,617円 | 1,412万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。35年・元利均等・ボーナス返済なしで、借入額だけを変えています。
借入額が2,000万円なら毎月13,447円、5,000万円なら毎月33,617円です。 借入額が2.5倍になると安心料もほぼ2.5倍になります。 すでに返済中の方が固定への変更を検討する場合は、当初借入額ではなく現在の残債と残り期間で計算し直してください。 残債が減っていれば、同じ金利差でも安心料の総額は小さくなります。
返済期間別に見た安心料
期間が長いほど金利差にさらされる時間も長くなるため、安心料の総額は増えます。ただし1年あたりで見ると印象が変わります。
| 返済期間 | 変動の毎月返済 | 固定の毎月返済 | 毎月の安心料 | 期間全体の安心料 | 1年あたり |
|---|---|---|---|---|---|
| 25年 | 107,712円 | 127,156円 | 19,444円 | 583万円 | 233,326円 |
| 30年 | 91,078円 | 110,885円 | 19,807円 | 713万円 | 237,683円 |
| 35年 | 79,208円 | 99,378円 | 20,170円 | 847万円 | 242,044円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入3,000万円・元利均等で、返済期間だけを変えています。
25年なら583万円、35年なら847万円と総額では差がつきますが、 1年あたりでは233,326円と242,044円で、大きくは変わりません。 つまり安心料の総額の差は、主に何年払い続けるかから来ています。 期間そのものの損得は35年と30年の総返済額の比較で別に扱っています。
金利が上がったとき、安心料は回収されるのか
ここからが本題です。変動を選んで金利が上がった場合、総支払額はどこまで増えるのか。 固定2%の総支払額4,174万円を追い抜く水準を探します。
シナリオは、変動0.6%から5年かけて段階的に上がり、その後は横ばいという形にしています。 5年ルール・125%ルールがある前提です。金利の予測ではなく、「もしこの水準まで上がったら」という仮定として読んでください。
| 5年後の金利 | 上昇幅 | 変動の総支払額 | 固定2%との差 | 安心料の回収率 |
|---|---|---|---|---|
| 0.6% | 上昇なし | 3,327万円 | 変動が847万円少ない | 0% |
| 1.1% | +0.5% | 3,578万円 | 変動が596万円少ない | 30% |
| 1.6% | +1% | 3,844万円 | 変動が330万円少ない | 61% |
| 2.1% | +1.5% | 4,131万円 | 変動が43万円少ない | 95% |
| 2.6% | +2% | 4,453万円 | 変動が279万円多い | 133% |
| 3.1% | +2.5% | 4,805万円 | 変動が631万円多い | 175% |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。回収率は、上昇なしの変動と比べて増えた支払額が、安心料847万円の何割にあたるかを示しています。
注目したいのは、固定と同じ2%まで上がっても、変動の方が安いままだという点です。 2.1%まで上がるシナリオでも、変動の総支払額は固定より43万円少なくなります。 逆転するのは2.6%まで上がるシナリオで、そこで初めて固定より279万円多くなります。
理由は単純で、変動は上がるまでの期間を低い金利で返しているからです。 残高が最も大きい最初の5年間を0.6%前後で通過した分の貯金があるため、 同じ金利に到達しただけでは追いつきません。上昇が遅いほど、この貯金は大きくなります。
なお、これは「どの上昇幅で固定が有利に転じるか」を一点で示したものではありません。 固定金利の水準を変えれば逆転点も動きます。金利差を変えた分岐点の逆算は 変動0.6%と固定1.8%の分岐点で扱っています。
5年ルールがあると、返済額はどこまで上がるか
総支払額だけでは分からないことがあります。毎月いくら払うことになるのか、その最大値です。 固定なら99,378円のまま動きません。変動は改定のたびに動きます。
| 5年後の金利 | 最初の改定 | 改定後の返済額 | 上限の影響 | 返済額の最大値 | 未払利息 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.1% | 2031年8月 | 86,156円 | 上限に当たらず | 86,156円 | 発生なし |
| 1.6% | 2031年8月 | 93,534円 | 上限に当たらず | 93,534円 | 発生なし |
| 2.1% | 2031年8月 | 99,010円 | 101,351円が上限で圧縮 | 101,984円 | 発生なし |
| 2.6% | 2031年8月 | 99,010円 | 109,616円が上限で圧縮 | 112,689円 | 発生なし |
| 3.1% | 2031年8月 | 99,010円 | 118,335円が上限で圧縮 | 124,531円 | 発生なし |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。5年ルール・125%ルールがある前提で、2026年9月を返済開始月として計算しています。
2.1%まで上がるシナリオから、改定額が125%の上限に当たります。 上限に当たると、上昇幅が違っても最初の改定額は同じ99,010円になります。 これは固定の99,378円とほぼ同額ですが、抑えられているのは1回の改定幅だけで、 5年後の次の改定でさらに上がります。表の「返済額の最大値」を見ると、 2.1%のシナリオで101,984円となり、固定を2,606円上回ります。
つまり安心料で買っているのは「総支払額が増えないこと」だけではなく、 毎月の返済額が動かないことでもあります。総支払額では変動が有利に出るシナリオでも、 毎月の返済額の最大値では固定を超えることがあります。この2つは別の話として分けて見る必要があります。
表のシナリオでは未払利息は発生していません。借入直後の残債と返済額から逆算すると、その時点の危険水位は3.17%で、上の表でいちばん高いシナリオでも3.1%までしか上がらないためです。危険水位は残債が減り返済額が改定されるほど上がっていくので、返済が進んだ後はさらに余裕が出ます。逆に、5年より短い期間で急に上がる想定にすると結果は変わります。 上限の効き方そのものは125%ルールが抑えるもので詳しく扱っています。
同じ額を繰上げ返済に回した場合
安心料は「払わなければ手元に残る現金」でもあります。変動を選び、固定との差額20,170円を 毎月別に取り分けておいたら何が起きるか、という比較です。
ここでは、金利が上がらなかった前提で10年間積み立て(利息は付かないものとする)、 10年目に2,420,400円をまとめて繰上げ返済したケースを計算します。
| 項目 | 算出値 |
|---|---|
| 10年間の積立額(=繰上げ返済額) | 2,420,400円 |
| 10年後の残債 | 2,206万円 |
| 期間短縮型で縮む期間 | 2年11ヶ月 |
| 返済額軽減型で下がる毎月返済 | 8,690円(79,208円→70,518円) |
| 期間短縮型を選んだ場合の総支払額 | 3,290万円 |
| 繰上げ返済しない変動との差 | 37万円少ない |
| 固定2%との差 | 884万円少ない |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。総支払額には繰上げ返済に充てた2,420,400円を含めて集計しています。
2,420,400円を投じて減る利息は37万円です。金利0.6%では投じた額に対する利息削減が小さく、 繰上げ返済そのものの効果は控えめに出ます。それでも、金利が上がらなかった場合の差は固定と比べて884万円になります。
重要なのは金額よりも性質の違いです。積み立てた現金は、金利が上がったときに繰上げ返済へ回すことも、 教育費や修繕費に使うこともできます。固定に払った安心料は戻ってきません。 逆に言えば、差額を取り分けずに生活費として使ってしまうなら、この比較は成立しません。 繰上げ返済の2方式の違いは期間短縮型と返済額軽減型の比較にまとめています。
固定と変動で「確定しているもの」が違う
住宅金融支援機構(【フラット35】)は金利タイプの違いについて、全期間固定金利型を 「借り入れたときの金利が全借入期間を通じて変わらないタイプ」とし、 メリットとして「借入時に返済期間全体の返済計画が確定」することを挙げています。 一方、変動金利型のデメリットには「借入時に将来の返済額が確定しないので、返済計画が立てにくい」 「借入後に市場金利が急上昇した場合、未払利息が発生する場合がある」ことを挙げています (【フラット35】金利のタイプとは?)。
同じ資料では、変動金利型について「毎月の返済額の見直しは5年ごとに行われ、見直し後の返済額は、 変更前の返済額の1.25倍が限度とされているケース」が一般的だとしています。 ただしこの取り扱いは金融機関や商品によって異なるため、契約書や商品説明書での確認が必要です。
安心料という言い方をすると金額の話に見えますが、買っているのは確定性です。 総支払額が読めること、毎月の返済額が動かないこと、家計の他の支出と衝突しないこと。 この価値をいくらと見るかは家計ごとに違い、計算では決められません。 計算で決められるのは、その価格がいくらかまでです。
どちらを選ぶかの判断基準
このページの計算からは、次の3つが判断材料になります。
1つ目は毎月20,170円を払い続けられるかです。安心料は将来の話ではなく、初回の返済から発生します。 固定にした結果、毎月の黒字がほとんど残らないなら、金利上昇に備えるつもりが手元資金を先に細らせることになります。
2つ目は返済額が上がったときに耐えられるかです。5年ルールがあると最初の改定までは返済額が動きませんが、 表のとおり2.1%のシナリオでは最大101,984円まで上がります。 この金額を払えないなら、総支払額の比較で変動が有利に出ても、変動を選ぶ根拠にはなりません。
3つ目は差額を実際に取り分けられるかです。変動が有利になるのは、 差額を貯めるか繰上げ返済に回した場合です。使ってしまうなら、上昇時に手元に何も残りません。 自動積立などで仕組み化できないなら、固定で強制的に払う形の方が結果的に安全に働くこともあります。
残り期間が短い場合は、そもそも安心料の総額が小さくなります。 返済期間別の表のとおり、期間が短いほど総額は下がるため、 残り10年程度なら固定に変えるコストは相対的に軽くなります。
確認手順
最初に返済予定表を開き、現在の残債・適用金利・残り返済回数の3つを控えます。 当初借入額ではなく現在の残債で計算しないと、安心料を実際より大きく見積もることになります。 どこに書かれているかは返済予定表の見方にまとめています。
次に、検討している固定金利の実際の適用金利を確認します。店頭表示金利ではなく、 自分の条件で適用される金利です。同じ金融機関内で変動から固定へ切り替える場合と、 他行へ借り換える場合では手続きも費用も違います。借り換えなら諸費用が別に発生するため、 借り換えの諸費用を合わせて見てください。
そのうえで、このページと同じ形で3つ計算します。金利が上がらなかった場合の差額、 自分が耐えられる返済額の上限、その上限に達する金利水準です。 3つ目が分かると、「何%までなら変動で耐えられるか」という自分の警戒ラインが決まります。
最後に、団信の保障内容と手数料を確認します。金利が同じでも団信の条件が違えば実質的な負担は変わります。 金利だけで比べると、この差が見えません。
固定金利の安心料についてよくある質問
安心料を払う価値があるのはどんな人ですか
計算では決められませんが、判断材料は示せます。返済額が上がると家計が回らない場合、 差額を取り分けて運用や繰上げ返済に回す習慣がない場合、返済期間が長く残っている場合は、 確定性の価値が相対的に大きくなります。逆に、返済額の変動を吸収できる余力があり、 残り期間が短いなら、安心料の総額に見合わない可能性があります。
途中で変動から固定に変えることはできますか
金融機関によって、同じ契約内で金利タイプを変更できる場合と、借り換えが必要な場合があります。 手数料や条件も金融機関ごとに異なるため、契約先への確認が必要です。 変更のタイミングによる損得は変動から固定への切り替えで扱っています。
固定なら未払利息の心配はありませんか
全期間固定金利型は借入時に金利が確定するため、金利上昇による未払利息という論点は生じません。 ただし固定期間選択型は、固定期間が終わった後の扱いが商品によって異なります。 固定期間終了後については固定期間が明けたらどうなるかを参照してください。
今後の金利がどうなるか予測して選ぶべきですか
このサイトでは金利の予測はしません。表のように複数の水準を仮定して、 どのシナリオまでなら家計が耐えられるかを確認する方が実用的です。 予測が外れても耐えられる選択かどうかが、判断の基準になります。
まとめ
- 変動0.6%と固定2%の毎月返済差は20,170円、35年の総額では847万円
- 5年かけて2.1%まで上がっても、変動の総支払額は固定より43万円少ない
- 逆転は2.6%まで上がるシナリオ。そこで固定より279万円多くなる
- 総支払額で変動が有利でも、返済額の最大値は2.1%のシナリオで101,984円まで上がる
- 差額20,170円を10年積み立てて繰上げ返済すると、利息は37万円減る