金利だけを見ても家計の耐久力は分からない

返済額が月1万円増えても、生活費が変わらなければ吸収できる家計があります。逆に返済額がまだ据え置かれていても、生活費が月3万円増えれば余力は先に減ります。

住宅金融支援機構の住宅ローン利用者の実態調査では、変動金利利用者の今後の返済への不安として「物価の上昇」と「借入金利の上昇」が上位でした。本ページではその2つを同時に置きます。

基準ケースの家計余力

残債30,000,000円、残り35年、年0.6%の元利均等返済は月79,208円です。手取り500,000円から生活費300,000円と返済を引くと、現在の余力は月120,792円です。

ここでいう余力は貯蓄、教育費、車、臨時支出などへ回せる金額です。管理費や固定資産税を生活費に含めていない人は、別途足す必要があります。平均値ではなく、自分の直近12か月の実額を使うのが前提です。

生活費上昇率と金利上昇幅を掛け合わせる

表の金額は、手取りから上昇後の生活費と返済額を引いた月間余力です。マイナスは毎月の赤字を示します。

生活費の上昇上昇後生活費金利+0%金利+0.5%金利+1%金利+1.5%金利+2%
0%300,000円120,792円113,909円106,669円99,075円91,137円
5%315,000円105,792円98,909円91,669円84,075円76,137円
10%330,000円90,792円83,909円76,669円69,075円61,137円
15%345,000円75,792円68,909円61,669円54,075円46,137円

生活費は月30万円を一律に0〜15%増やし、返済額は残債3,000万円・残り35年の全期間が上昇後金利になった元利均等額です。5年ルールによる改定の遅れは入れず、改定後に必要となる返済能力を比較しています。

生活費+10%と金利+1.5ポイントでは、余力は69,075円です。現在との差は51,717円で、その内訳は生活費が30,000円、ローン返済が21,717円です。この条件では物価側の影響の方が大きくなりました。

手取り額が違うと赤字になる位置が変わる

生活費が10%上がり、金利が1.5ポイント上がったケースを、手取り別に並べます。生活費は家族構成で変わりますが、ここでは比較のため同じ330,000円に固定します。

手取り月収生活費ローン返済残る余力支出合計の割合
400,000円330,000円100,925円-30,925円107.7%
450,000円330,000円100,925円19,075円95.8%
500,000円330,000円100,925円69,075円86.2%
550,000円330,000円100,925円119,075円78.3%
600,000円330,000円100,925円169,075円71.8%

手取り月収だけを変え、生活費とローン条件は固定しました。「支出合計の割合」はローン審査の返済負担率ではなく、手取りに対する生活費と返済の合計です。

額面年収を12で割った数字を使うと、税金と社会保険料の分だけ余力を大きく見せます。家計の耐久力を見るときは給与明細の手取り、賞与を当てにしない通常月の金額で確認します。

圧迫は同時ではなく二段階で来る

5年ルールがある元利均等返済では、適用金利が上がっても毎月返済額がすぐ変わらない場合があります。一方、食品や光熱費は購入時から家計に反映されます。そのため、最初は生活費だけで余力が減り、返済額改定時にもう一段減る形になります。

返済額が据え置かれている期間を「影響がない期間」と考えず、改定後の差額を先に積み立てる猶予と考えます。契約によって5年ルールがない場合もあるので、改定時期は返済予定表と商品説明書で確認してください。

どの支出から見直すか

まず固定費と変動費を分けます。通信、保険、定額サービスのように一度の変更が毎月続く支出は、返済額改定前に見直す効果があります。食費などを無理に削り続ける前に、年間支出を月割りし、見落としている住居費を加えます。

それでも改定後に赤字になるなら、繰上げ返済を急ぐより手元資金を残し、金融機関への相談時期を早めます。家計余力の上限から金利を逆算する場合は何%まで耐えられるかも確認してください。

自分の数字へ置き換える手順

  1. 給与明細から賞与を除く通常月の手取りを出す
  2. 家計簿12か月分からローン以外の平均支出を出す
  3. 年払いの税金・保険・修繕費を12で割って足す
  4. 金利+0.5、+1.0、+1.5ポイントの返済額を計算する
  5. 手取りから生活費と返済額を引き、赤字になる組み合わせを確認する

生活費の上昇を一つの数字に決められない場合は、5%、10%、15%の3本で十分です。大切なのは予測を当てることではなく、余力が消える境界を知ることです。

物価と金利の同時上昇についてよくある質問

生活費の上昇率は何%で置けばよいですか

全国平均ではなく、自分の家計簿で前年同月や直近12か月平均と比べます。分からなければ5%、10%、15%の複数ケースで余力を確認します。

返済額が5年間変わらないなら今は心配不要ですか

返済額が同じでも生活費は先に増え、元金の減りも鈍くなる場合があります。改定後の返済額を先に計算し、その差額を積み立てる期間として使います。

返済負担率が低ければ大丈夫ですか

返済負担率は生活費を含みません。同じ負担率でも家族人数や教育費で余力は違うため、手取りから全支出を引いた残額を併用してください。

まとめ

  • 金利上昇と生活費上昇は別々にせず同じ家計表で見る
  • 基準ケースの余力120,792円は、生活費+10%・金利+1.5%で69,075円になる
  • この仮定では生活費上昇の影響がローン返済増より大きい
  • 額面年収ではなく通常月の手取りと家計簿の実額へ置き換える