残債と物件価値の差が、選択肢を決める
住宅ローンの残債が、物件を売った場合に想定される価格を下回っている状態であれば、 売却して残債を完済しても手元に資金を残せる可能性があります(仲介手数料等の諸費用は別途かかります)。
逆に残債が価値を上回っている間は、通常の売却では不足分を現金で用意する必要があり、 担保評価が残債に届かないため借り換えの審査も通りにくくなります。
つまり「残債が物件価値を下回るのはいつか」は、売却や借り換えという選択肢が 現実的になるタイミングを表しています。
試算の前提
借入額3,000万円・返済期間30年・当初金利0.6%、元利均等返済で試算します。 物件の想定価値は、諸費用込みで借りた分だけ最初から目減りしていると考え、 借入額の9割(2,700万円)を出発点とし、その後は年率で一定割合ずつ下がると仮定します。
下落率は0%(横ばい)・1%・2%の3パターンで比較します。 これは価格の予測ではなく、感応度を見るための仮定です。
金利が上がると、その時点はどれだけ遅れるか
金利が横ばいのケースと、5年かけて0.6%から+1.5%(2.1%)まで上がるケースを比較しました。
| 物件価値の下落率 | 金利横ばい | 金利+1.5%上昇 | 遅れ |
|---|---|---|---|
| 年率0% | 4年目 | 4年目 | なし |
| 年率1% | 5年目 | 7年目 | +2年 |
| 年率2% | 7年目 | 11年目 | +4年 |
残債3,000万円・30年・当初0.6%、想定物件価値2,700万円起点で試算。このサイトの計算エンジンによる算出値です。
下落率0%では、金利が上がっても遅れは出ていません。すでに元金の減りだけで 4年目に到達しているため、金利上昇が効いてくる前に差が縮まっているからです。
一方で下落率2%のケースでは、横ばいなら7年目のところが、 金利上昇シナリオでは11年目まで4年遅れます。 物件価値の下落が速いほど、残債の減り方の差が結果に効いてくるということです。
具体的に7年目(横ばいケースで残債が価値を下回る時点)を見ると、 横ばいケースの残債は23,474,945円、想定価値は23,478,884円で、ほぼ交差しています。 同じ時点の金利上昇ケースの残債は24,693,453円で、まだ想定価値を上回ったままです。
遅れの理由は5年ルールにある
金利が上がっても、5年ルールがあれば返済額はすぐには変わりません。 今回の試算でも、返済額が実際に改定されるのは2031年3月(1.95%時点)で、 91,078円から110,747円への改定でした(125%の上限には達していません)。
据置期間中は、上がった金利分がまず利息に充てられ、元金に回る割合が減ります。 返済額が変わっていなくても、残債の減り方は横ばいケースより遅くなっているということです。 この仕組みは返済額が変わらないのに元金が減らない理由で詳しく扱っています。
物件価値の下落が緩やかなら、この遅れが交差する時点まで響く時間が短く、影響も小さく見えます。 逆に下落が速いケースほど、交差する時点そのものが先に延びるため、その間ずっと元金の減りの差が積み重なります。
まとめ
- 残債が物件の想定価値を下回る時点は、売却・借り換えという選択肢が現実的になる目安になる
- 借入額の9割を出発点とした試算では、その時点は物件価値の下落率ごとに4〜7年目
- 金利が5年で+1.5%上がるシナリオでは、下落率が高いケースほど遅れが大きく、最大で4年遅れる
- 遅れの主因は返済額ではなく、5年ルールによる元金充当の鈍りにある