毎月の支出を揃えると、完済時期も総額も一致する
比較の条件をそろえます。借入3,000万円・金利0.6%・元利均等・ボーナス返済なし、初回返済は2026年10月です。 25年で借りる場合と、35年で借りたうえで毎月28,504円(=両者の返済額の差)を元金に上乗せする場合を並べます。 上乗せは期間短縮型の繰上げ返済と同じ効き方、つまり約定返済額は79,208円のまま、余剰分が元金に充当される形で計算しています。
| 方法 | 約定返済額 | 毎月の上乗せ | 毎月の支出 | 完済までの回数 | 総返済額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 25年で借りる | 107,712円 | — | 107,712円 | 300回(25年) | 3,231万円 |
| 35年で借りて毎月上乗せ | 79,208円 | 28,504円 | 107,712円 | 300回(25年) | 3,231万円 |
| 35年で借りて上乗せなし | 79,208円 | 0円 | 79,208円 | 420回(35年) | 3,327万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。利息は残高×年利÷12の月割り、円未満切り捨てで計算しています。
上2行の差は、完済回数で0回、総返済額で0円です。 毎月同じ金額が元金に向かうなら、契約上の返済期間が25年でも35年でも、残高の減り方は同じ軌道をたどります。 「長く借りると利息が増える」のは、長く借りた分だけ実際に長く返す場合の話であって、期間そのものが利息を決めているわけではありません。
一方、上乗せをしない35年契約との差は95万円です。 この記事で比べているのは「期間の長短」ではなく、「同じ支出を続けられるかどうか」だということになります。
差が出るのは金額ではなく、入れるタイミング
実際には、毎月の返済額に自由に上乗せできる契約ばかりではありません。多くの場合は繰上げ返済として、まとまった金額を任意のタイミングで入れることになります。 同じ年342,048円を、どの頻度で入れるかだけを変えた結果が次の表です。
| 上乗せの入れ方 | 1回あたりの金額 | 完済までの回数 | 総返済額 | 25年契約との差 |
|---|---|---|---|---|
| 毎月そのつど上乗せ | 28,504円 | 300回 | 3,231万円 | ±0円 |
| 半年に1回まとめて | 171,024円 | 301回 | 3,233万円 | +11,532円 |
| 1年に1回まとめて | 342,048円 | 301回 | 3,234万円 | +25,348円 |
| 2年に1回まとめて | 684,096円 | 305回 | 3,237万円 | +52,473円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。約定返済額を79,208円に固定し、貯めた分を指定の周期で元金に充当しています。繰上げ返済手数料は含めていません。
1年に1回にすると25,348円、2年に1回にすると52,473円だけ総額が増えます。 貯めている間の資金は元金を減らしていないため、その分の利息が余計にかかるという単純な理由です。 月あたりに直すと小さな金額ですが、繰上げ返済に手数料がかかる契約では、回数を増やすほど手数料も積み上がります。 手数料が1回いくらまでなら見合うかは繰上げ返済の手数料は何円まで見合うかで計算しています。
期間の組み合わせを変えても結論は変わらない
25年と35年に限った話かを確かめます。組み合わせを変えて、短い契約の返済額に支出をそろえた場合の結果です。
| 組み合わせ | 長期側の約定 | 必要な上乗せ | 完済までの回数 | 短期契約との総額差 |
|---|---|---|---|---|
| 20年 vs 35年+上乗せ | 79,208円 | 53,473円 | 240回 | ±0円 |
| 25年 vs 35年+上乗せ | 79,208円 | 28,504円 | 300回 | ±0円 |
| 30年 vs 35年+上乗せ | 79,208円 | 11,870円 | 361回 | ±0円 |
| 25年 vs 40年+上乗せ | 70,315円 | 37,397円 | 300回 | ±0円 |
| 30年 vs 40年+上乗せ | 70,315円 | 20,763円 | 361回 | ±0円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入3,000万円・金利0.6%で、長期側の毎月支出が短期側の返済額と同額になるよう上乗せしています。回数が短期側より1回多い組み合わせは、最終回が少額の端数になるためで、総返済額は一致します。
どの組み合わせでも総額差は出ません。ただし必要な上乗せ額は大きく変わります。 20年に並べるには毎月53,473円、30年なら11,870円です。 上乗せ額が大きいほど、途中で止まったときの影響も大きくなります。
金利が高いほど「まとめて入れる」の差が広がる
金利水準を変えると、毎月上乗せする場合とまとめて入れる場合の差がどう動くかを見ます。
| 金利 | 25年の返済額 | 35年の約定 | 必要な上乗せ | 毎月上乗せの差 | 年1回まとめた差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.6% | 107,712円 | 79,208円 | 28,504円 | ±0円 | +25,348円 |
| 1% | 113,061円 | 84,685円 | 28,376円 | ±0円 | +44,258円 |
| 1.5% | 119,980円 | 91,855円 | 28,125円 | ±0円 | +70,214円 |
| 2% | 127,156円 | 99,378円 | 27,778円 | ±0円 | +98,816円 |
| 2.5% | 134,585円 | 107,248円 | 27,337円 | ±0円 | +130,081円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入3,000万円を固定し、金利だけを変えています。いずれも25年契約の総返済額との差です。
毎月上乗せする場合は、どの金利でも差が出ません。まとめて入れる場合の差は、0.6%で25,348円、2%で98,816円と、金利に比例して広がります。 金利が高い局面ほど「貯めてから入れる」の待ち時間が高くつく、という関係です。
上乗せをやめた場合に何が起きるか
長く借りる側の実際の姿は「上乗せを続けられないかもしれない」です。 毎月28,504円の上乗せを一定期間だけ続け、そこから先は約定の79,208円だけを払った場合を計算します。
| 上乗せをやめる時期 | その時点の残債 | 完済までの回数 | 総返済額 | 25年契約との差 | 上乗せなしとの差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 5年後 | 2,435万円 | 394回(32年10ヶ月) | 3,291万円 | +599,196円 | −354,666円 |
| 10年後 | 1,854万円 | 369回(30年9ヶ月) | 3,264万円 | +330,932円 | −622,930円 |
| 15年後 | 1,254万円 | 346回(28年10ヶ月) | 3,246万円 | +144,456円 | −809,406円 |
| 20年後 | 637万円 | 323回(26年11ヶ月) | 3,235万円 | +35,476円 | −918,386円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。上乗せをやめた後は約定返済額79,208円を払い続け、残債がなくなった時点で完済としています。
5年でやめると、25年契約より599,196円多く払うことになります。 それでも、最初から上乗せをしなかった場合と比べれば354,666円少ない金額です。 15年続けた場合は25年契約との差が144,456円まで縮みます。 やめた時点までの上乗せは無駄にならず、差は「やめた後の期間」の分だけ生じるという形になります。
金利が上がったとき、約定返済額の低さが効く
変動金利で借りている場合、上乗せの有無にかかわらず約定返済額は5年ごとに改定されます。 金利が3年かけて上がる形で、1回目の改定(2031年9月)の額を上昇幅別に出したものが次の表です。 ここは上乗せをしない前提の約定ベースの計算で、契約期間の違いだけを見ています。
| 上昇幅 | 35年契約の改定後 | 支出107,712円を保つ場合の上乗せ余力 | 35年契約の未払利息 | 25年契約の改定後 | 25年契約の増加額 | 25年契約の未払利息 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| +0.5% | 86,701円 | 21,011円 | 発生しない | 115,257円 | +7,545円 | 発生しない |
| +1% | 94,721円 | 12,991円 | 発生しない | 123,222円 | +15,510円 | 発生しない |
| +1.5% | 99,010円(上限) | 8,702円 | 発生しない | 131,621円 | +23,909円 | 発生しない |
| +2% | 99,010円(上限) | 8,702円 | 発生しない | 134,640円(上限) | +26,928円 | 発生しない |
| +3% | 99,010円(上限) | 8,702円 | 発生する | 134,640円(上限) | +26,928円 | 発生しない |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。5年ルール・125%ルールがある前提で、金利が3年かけて上昇する形で計算しています。「(上限)」は1.25倍の上限に当たった行です。未払利息の欄は、完済までのどこかで発生するかどうかを示しています。
+1%の場合、35年契約の約定は79,208円から94,721円へ上がります。 毎月の支出を107,712円に保つなら、上乗せ余力が28,504円から12,991円に減るだけで、家計から出ていく金額は変わりません。 同じ上昇を25年契約で受けると、約定そのものが107,712円から123,222円へ、15,510円増えます。こちらは削れない支出です。
これが「長く借りる」側の数字に表れる利点です。ただし逆向きの事実もあります。 1.25倍の上限は約定返済額に掛かるため、35年契約の上限は99,010円、25年契約の上限は134,640円です。 表のとおり、35年契約は+2%より手前で上限に当たり、25年契約より早く「本来の額との差が後ろに回る」状態に入ります。
未払利息の閾値は、長く借りる側が低い
未払利息は、その月の利息が約定返済額を超えたときに発生します。判定に使われるのは約定返済額であって、上乗せを含めた支出額ではありません。 そのため、約定が低い長期契約のほうが閾値は低くなります。毎月上乗せを続けて残債が減っていく前提で、両者の閾値を並べます。
| 経過年数 | その時点の残債 | 25年契約の閾値 | 35年契約の閾値 |
|---|---|---|---|
| 開始時点 | 3,000万円 | 4.31% | 3.17% |
| 5年後 | 2,435万円 | 5.31% | 3.9% |
| 10年後 | 1,854万円 | 6.97% | 5.13% |
| 15年後 | 1,254万円 | 10.31% | 7.58% |
| 20年後 | 637万円 | 20.31% | 14.93% |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。残債は毎月28,504円を上乗せした場合の推移で、閾値は「残債×年利÷12=約定返済額」となる金利を逆算したものです。
開始時点では25年契約が4.31%、35年契約が3.17%です。 10年後でも6.97%と5.13%で、差は縮みません。 前の表で+3%のときに35年契約だけ未払利息が出て25年契約では出なかったのは、この閾値の差によるものです。 ただし前の表は上乗せをしない前提の残債で走らせているので、実際に上乗せを続けていれば残債はこの表のペースで減り、未払利息に届く金利も上がります。 上乗せを続けられるかどうかが、ここでも結果を分けます。
変動金利の返済額見直しと未払利息の仕組みについては、住宅金融支援機構【フラット35】の 金利タイプの説明ページ に記載があります。5年ルール・125%ルールの有無や適用条件は金融機関・契約により異なるため、契約書と返済予定表での確認が必要です。
どちらを選ぶかの判断基準
総額が同じなら、判断は金額以外の軸で決まります。見るべきは次の3点です。
1つめは、上乗せを何年続けられるかの見通しです。教育費のピークや収入の変動が読める範囲にあるなら、その期間だけ上乗せを止める前提で計算しておけます。 5年でやめた場合の599,196円という差を、毎月28,504円を止められる自由と釣り合うかで比べます。
2つめは、繰上げ返済の実務条件です。最低金額、手数料、窓口かインターネットか、回数の制限は契約により異なります。 まとめて入れる前提なら、表の25,348円という待ち時間のコストに手数料が上乗せされます。
3つめは、約定返済額そのものの水準です。審査でも家計でも、判定に使われるのは約定返済額です。 35年契約の79,208円と25年契約の107,712円では、返済負担率の見え方も、金利上昇時に増える金額も変わります。
自分の条件で確かめる手順
まず返済予定表から、残債・適用金利・残り期間・約定返済額の4つを写します。すでに返済中なら、当初借入額ではなく現在の残債で計算しないと差を大きく見積もります。 読み取る場所は返済予定表の見方にまとめています。
次に、目標の完済時期から逆算した返済額を出し、いまの約定との差額を上乗せ額とします。 その金額を毎月出し続けられるか、ボーナスや年1回のまとめ払いにするかを決めます。まとめる場合は、この記事の表で待ち時間のコストを確認します。
最後に、金利が上がった場合の約定返済額を計算し、上乗せ余力がどこまで残るかを見ます。 余力がゼロになる水準を超えると、支出そのものを増やすか完済時期を諦めるかの選択になります。その手前で気づけるように、年に一度は条件を入れ直しておきます。
よくある質問
本当に総返済額は1円も変わらないのですか
この試算の条件では、35年契約で毎月28,504円を上乗せした場合と25年契約の総返済額の差は0円でした。 ただし、利息を残高×年利÷12の月割り・円未満切り捨てで計算した場合の結果です。実際の金融機関は日数割で計算するため、数百円から数千円の差が出ることがあります。 また、繰上げ返済手数料はこの計算に含めていません。手数料がかかる契約では、その分だけ長期契約+繰上げ返済の側が増えます。
上乗せで期間が短くなると住宅ローン控除は受けられなくなりますか
国税庁は、繰上げ返済により償還期間に関する法定要件(最後の償還期限までの期間が10年以上であること)に適合しないこととなる場合には、その要件を満たさなくなった年分について住宅借入金等特別控除を受けることはできないとしています (国税庁・繰上返済をした場合の償還期間)。 この試算のように35年契約を25年まで詰める形であれば10年以上が保たれますが、極端に短く詰める場合は要件を先に確認してください。 控除と繰上げ返済の関係は控除中の繰上げ返済は損かでも計算しています。
期間短縮型ではなく返済額軽減型で上乗せした場合はどうなりますか
返済額軽減型は約定返済額そのものを下げる方式なので、この記事の「支出を揃える」比較とは前提が変わります。 約定が下がった分だけ上乗せ額を増やさなければ、完済時期は早まりません。 2つの方式の違いは期間短縮型と返済額軽減型どっちと繰上げ返済で月額を下げるで比較しています。
まとめ
- 毎月の支出を揃えると、完済は25年、総返済額の差は0円
- 1年に1回まとめて入れると25,348円、2年に1回なら52,473円多くなる
- 5年で上乗せをやめると25年契約より599,196円多いが、上乗せなしよりは354,666円少ない
- 未払利息の閾値は約定で決まるため、35年契約は開始時点で3.17%と25年契約の4.31%より低い