毎月1万円の上乗せで完済は4年3ヶ月早まる

条件は借入3,000万円・35年(420回)・元利均等・適用金利0.6%、 初回返済を2026年10月としました。この条件の毎月返済額は79,208円、 完済までの総利息は327万円です。 ここに毎月一定額を上乗せし、その分をすべて元金に充てた場合(期間短縮型・手数料0円)を計算します。

毎月の上乗せ毎月の支払額完済までの回数短縮総利息利息の削減額上乗せの投入額投入額に対する削減率
なし79,208円420回(35年)327万円
10,000円 89,208円 369回(30年9ヶ月) 4年3ヶ月 285万円 413,259円 369万円 11.2%
20,000円 99,208円 328回(27年4ヶ月) 7年8ヶ月 253万円 733,391円 656万円 11.18%
30,000円 109,208円 296回(24年8ヶ月) 10年4ヶ月 228万円 988,723円 888万円 11.13%
50,000円 129,208円 247回(20年7ヶ月) 14年5ヶ月 190万円 1,370,500円 1,235万円 11.1%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。上乗せ分は毎月そのまま元金に充当し、手数料は0円として計算しています。

毎月10,000円の上乗せなら、完済は369回目(30年9ヶ月)で、当初より4年3ヶ月早まります。 減る利息は413,259円です。ここで見落としやすいのは、その413,259円を得るために 369万円を先に払っているという点です。投入額に対する削減率は11.2%にとどまります。

上乗せ額を増やしても「1円あたりの効き」は変わらない

表の右端の列に注目すると、上乗せ10,000円で11.2%、50,000円で11.1%と、 投入額に対する削減率はほとんど動いていません。上乗せ額を5倍にすると削減額は413,259円から1,370,500円へ 3.3倍になりますが、投入額も369万円から1,235万円へ 3.3倍になるためです。

上乗せ額を増やして大きく変わるのは効率ではなく完済の時期です。 10,000円なら短縮は4年3ヶ月ですが、50,000円なら14年5ヶ月になります。 「利息をいくら減らせるか」で上乗せ額を決めるより、「何歳で完済したいか」から逆算する方が、 この計算結果とは噛み合います。完済年齢そのものについては完済年齢と定年後の残債で扱っています。

なお、削減率が金利0.6%より大きく見えるのは、これが年あたりの利回りではなく 「投入総額に対する削減総額」だからです。同じ金額を何十年も預け続けた結果の比率なので、 年利と直接比べられる数字ではありません。

毎月に分けるか、年1回まとめるか

同じ年12万円を用意できるとき、毎月10,000円ずつ入れるのと、年1回12万円をまとめて入れるのでは 元金に入る時期が違います。ここでは完済までに払う総額(元金+利息)で比べました。

上乗せ額毎月:完済毎月:総利息毎月:総支払額年1回:完済年1回:総利息年1回:総支払額総額の差
毎月10,000円(年12万円) 369回 285万円 3,285万円 370回 287万円 3,287万円 11,084円
毎月20,000円(年24万円) 328回 253万円 3,253万円 330回 255万円 3,255万円 19,466円
毎月30,000円(年36万円) 296回 228万円 3,228万円 299回 230万円 3,230万円 26,258円
毎月50,000円(年60万円) 247回 190万円 3,190万円 252回 193万円 3,193万円 36,185円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。年1回のケースは12回目の返済直後に元金へ充当し、毎月返済額は据え置いています。総支払額は元金3,000万円と総利息の合計で、手数料は0円として計算しています。

毎月10,000円のケースでは、毎月に分けた方が総支払額は11,084円少なくなります。 上乗せ額を50,000円まで増やしても差は36,185円です。 35年で1万円台から3万円台という幅で、どちらを選ぶかで結果が大きく変わる論点ではありません。

差がこの程度に収まるのは、充当が早まる期間が平均6ヶ月分にすぎないためです。 ただし毎月入れる方は、同じ時期で見ると手元から出ていく現金が先行します。 1回ごとに手数料がかかる契約なら、回数の少ない年1回の方が実額で有利になることもあり得ます。 手数料の有無と金額は金融機関により異なるため、契約先で確認してください。 年1回まとまった金額を入れる形は毎年100万円の繰上げ返済を続けたらで詳しく扱っています。

適用金利が高いほど、同じ上乗せの効きは大きい

毎月10,000円の上乗せを、適用金利だけ変えて計算しました。上乗せ額も返済期間も同じです。

適用金利上乗せなしの返済額完済までの回数短縮利息の削減額上乗せの投入額投入額に対する削減率
0.6% 79,208円 369回 4年3ヶ月 413,259円 369万円 11.2%
1% 84,685円 369回 4年3ヶ月 720,352円 369万円 19.52%
1.5% 91,855円 368回 4年4ヶ月 1,143,642円 368万円 31.08%
2% 99,378円 367回 4年5ヶ月 1,615,314円 367万円 44.01%
2.5% 107,248円 366回 4年6ヶ月 2,140,503円 366万円 58.48%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入額3,000万円・35年・元利均等を固定し、適用金利だけを変えています。

短縮月数は0.6%で4年3ヶ月、2.5%で4年6ヶ月と ほとんど変わりません。一方で削減額は413,259円から2,140,503円へ 5.2倍になります。 上乗せが削っているのは「残高に付くはずだった利息」なので、金利が高いほど1円あたりの効きが大きくなります。

変動金利で借りている場合、この表は「いま効きが小さくても、金利が上がれば同じ上乗せの価値が上がる」と読めます。 逆にいえば、低金利のうちは上乗せを急がず手元に置いておく判断も、この数字の範囲では成り立ちます。

10年上乗せしてやめたあと、金利が上がったら

上乗せは途中でやめられます。10年(120回)続けたあと上乗せをやめ、 そこから金利が上がっていく仮定を当てました。10年時点(2036年10月)の残債は、 上乗せなしが2,206万円、上乗せありが2,082万円で、差は1,236,413円です。 上乗せをやめて元の79,208円に戻すと、残りは23年6ヶ月(上乗せなしなら25年)になります。

10年で到達する上昇幅続けなかった場合:改定後の返済額10年でやめた場合:改定後の返済額毎月の差続けなかった場合:以後の支払総額10年でやめた場合:以後の支払総額総額の差
据え置き 79,208円 79,189円 19円 2,376万円 2,233万円 1,430,075円
+1.0ポイント 84,283円 83,972円 311円 2,577万円 2,405万円 1,715,466円
+2.0ポイント 89,606円 88,977円 629円 2,795万円 2,592万円 2,034,364円
+3.0ポイント 95,182円 94,210円 972円 3,033万円 2,794万円 2,388,909円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。2036年10月を起点に、10年かけて一定ペースで上がる仮定を当てています。金利の予測ではありません。返済額の改定は2041年9月です。

改定後の毎月返済額の差は、いちばん大きい3.0ポイントのケースでも972円しかありません。 上乗せをやめた時点で毎月の支払額は元に戻るので当然ですが、 10年分の上乗せは「毎月の改定額を抑える」形ではほとんど効いていないということです。 効いているのは総額の方で、差は据え置きの1,430,075円から 3.0ポイント上昇時の2,388,909円へ広がります。

この8ケースでは、改定後の返済額はいずれも直前の1.25倍の上限に当たっていません。 未払利息もどのケースでも発生していません。 未払利息が出始める金利(危険水位)は、続けなかった場合が4.31%、 10年上乗せしてやめた場合が4.56%で、 上乗せをやめたあとでも残債が少ない分だけ水位は高い位置にあります。 未払利息そのものの説明は住宅金融支援機構【フラット35】の金利タイプの解説にあります。

上乗せしすぎると住宅ローン控除の要件に当たる

国税庁は、住宅借入金等特別控除の対象となる借入金の要件を 「償還期間が10年以上の割賦償還の方法により返済されるものまたは割賦払の期間が10年以上の割賦払の方法により支払われるものであること」とし、 この期間は「借入金等の債務を負っている期間をいうのではなく、最初の返済等の時から返済等が終了する時までの期間をいいます」としています (国税庁タックスアンサー No.1225)。 繰上返済についても、 「繰り上げて支払ったことにより償還期間が短くなったとしても、当初の契約により定められていた最初に償還した月から、その短くなった償還期間の最終の償還月までの期間が10年以上であれば、本年以後も住宅借入金等特別控除を受けることができます」 とされています(国税庁 質疑応答事例「繰上返済等をした場合の償還期間」)。

毎月の上乗せ毎月の支払額完済までの回数最初の返済から完済までの期間10年以上か
10,000円 89,208円 369回 30年9ヶ月 10年以上
30,000円 109,208円 296回 24年8ヶ月 10年以上
50,000円 129,208円 247回 20年7ヶ月 10年以上
100,000円 179,208円 175回 14年7ヶ月 10年以上
150,000円 229,208円 136回 11年4ヶ月 10年以上
180,000円 259,208円 120回 10年 10年以上
181,000円 260,208円 119回 9年11ヶ月 10年未満
200,000円 279,208円 111回 9年3ヶ月 10年未満

このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入初月から上乗せを続けた場合の完済回数で、10年(120回)以上かどうかを判定しています。

毎月180,000円の上乗せを借入初月から続けると完済は120回目、 つまりちょうど10年です。181,000円にすると119回目となり、10年を切ります。 月1,000円の差でこの境目をまたぐ計算です。 現実には控除期間中にここまでの上乗せを続ける人は多くありませんが、 退職金などでまとまった額を入れる場面と合わせると届くことがあります。

判定は上乗せを始めた時期にもよります。ここでは借入初月から続けた場合を計算しており、 途中から始めれば同じ上乗せ額でも完済までの期間は長く残ります。 控除と繰上げ返済の順番については控除中の繰上げ返済は損かも合わせて確認してください。

上乗せ額をどう決めるか

ここまでの計算からいえるのは3つです。第一に、投入額に対する削減率は上乗せ額でほとんど動かないので、 「いくら入れると効率がいいか」という問いにはあまり意味がありません。動くのは完済の時期です。 第二に、適用金利が高いほど同じ上乗せの効きは大きくなります。 第三に、上乗せをやめても効果は残債として残りますが、毎月の改定額を抑える効果はほとんどありません。

そのうえで、上乗せに回す前に手元資金を確認します。上乗せた分は原則として戻ってきません。 毎月10,000円でも1年で12万円、10年で120万円が家計から出ていきます。 急な支出や収入の減少に備える現金を削ってまで上乗せすると、後で高い金利で借り直すことになりかねません。 必要な現金の目安は生活防衛資金はいくら残すかで計算しています。

変動金利で借りている場合は、金利が上がったときに返済額そのものが増えます。 上乗せは自分の意思で止められますが、改定による増加は止められません。 上乗せ額を決めるときは、改定で返済額が増えた状態でも払える金額かどうかを先に見ておくと、 途中でやめる前提の計画になりにくくなります。

実行する前に確認すること

まず返済予定表で、現在の残債・適用金利・残りの回数を確認します。 この3つがないと、上乗せの効果は計算できません。見る場所は返済予定表の見方にまとめています。

次に、契約先で毎月の繰上げ返済ができるか、手数料と最低金額はいくらかを確認します。 ここでは手数料0円として計算していますが、1回ごとに手数料がかかる契約では、 毎月入れるより回数を減らした方が実額で有利になることがあります。取り扱いは金融機関により異なります。

毎月の返済額そのものを増やす方法を選ぶ場合は、条件変更の手続きや審査が必要になる場合があります。 こちらも取り扱いは金融機関により異なるため、契約先に確認してください。 最後に、住宅ローン控除を受けている間は、上乗せを続けたときに完済までの期間が10年を切らないかを確認します。

よくある質問

毎月1万円の上乗せと、毎月の返済額を1万円増やすのは同じですか

家計から出ていく金額と元金の減り方は同じになります。違うのは手続きと契約上の扱いです。 繰上げ返済として毎月入れる場合は契約上の返済額は変わりませんが、 返済額そのものを増やす場合は条件変更の手続きが必要になることがあります。 どちらが選べるか、手数料がいくらかは金融機関により異なるため、契約先にご確認ください。

上乗せを途中でやめたら、それまでの効果は消えますか

消えません。上乗せた分はすでに元金に充当されているため、残債が少ない状態が残ります。 10年続けてやめた場合の計算では、2036年10月時点の残債が1,236,413円少なく、 以後の支払総額の差は金利が据え置きでも1,430,075円残りました。 ただし毎月の支払額は上乗せをやめた時点で元に戻ります。

上乗せと、金利の低いローンへの借り換えはどちらを先に考えるべきですか

目的が違うため、同じ軸では比べにくい選択肢です。上乗せは手元資金を使って元金を減らす行為で、 借り換えは諸費用を払って適用金利を下げる行為です。 金利差が小さければ諸費用を回収できないこともあるため、 まず借り換えの金利差は何%から得かで回収できる水準かを確認し、 そのうえで手元資金の余裕と合わせて判断する順序が計算しやすくなります。

まとめ

  • 毎月10,000円の上乗せで完済は4年3ヶ月早まり、利息は413,259円減る
  • 投入額に対する削減率は上乗せ10,000円で11.2%、50,000円で11.1%とほぼ動かない
  • 適用金利が2.5%なら同じ上乗せの削減額は2,140,503円で、0.6%の5.2倍になる
  • 10年でやめても総額の差は1,430,075円以上残るが、改定後の毎月の差は972円以下にとどまる
  • 完済までが10年を切ると住宅ローン控除の償還期間の要件から外れる