そもそも法律で決まっているルールではない
5年ルール(金利が上がっても5年間は返済額を据え置く)と125%ルール(改定後の返済額は直前の1.25倍まで)は、 金融機関ごとの取り扱いです。法律で義務づけられているものではありません。
ネット銀行を中心に、これらのルールを設けていないところがあります。 代表的なのはソニー銀行・PayPay銀行・SBI新生銀行です。
また、これらのルールは元利均等返済の場合の取り扱いです。 元金均等返済を選んでいる場合は、そもそも毎月の返済額が変動する方式なので適用されません。
ルールが無いと何が起きるか
金利が上がると、その都度(通常は半年ごとの見直しに合わせて)返済額が改定されます。 据え置き期間がないので、金利上昇がすぐ家計に反映されます。
その代わり、元金は予定どおり減り続けます。ここが重要です。
利息が返済額を超えるという状態が起きないため、未払利息は発生しません。 最終回に想定外の一括請求が来ることもありません。
実際に計算して比べます。3,000万円・35年・当初1.0%で、 5年かけて金利が3.0%まで上がった場合の推移です。
| 時点 | 適用金利 | 返済額 ルールあり | 残債 ルールあり | 返済額 ルールなし | 残債 ルールなし |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年4月 | 1% | 84,685円 | 2,994万円 | 84,685円 | 2,994万円 |
| 2027年4月 | 1.4% | 84,685円 | 2,926万円 | 90,276円 | 2,924万円 |
| 2031年2月 | 2.8% | 84,685円 | 2,764万円 | 110,224円 | 2,687万円 |
| 2031年3月 | 2.8% | 105,856円 | 2,760万円 | 110,224円 | 2,683万円 |
| 2036年4月 | 3% | 119,496円 | 2,514万円 | 113,097円 | 2,380万円 |
| 2046年4月 | 3% | 119,496円 | 1,723万円 | 113,097円 | 1,630万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。
ルールありは最初の5年間、返済額が動きません。その代わり残債の減りが遅れます。 ルールなしは金利が上がるたびに返済額が上がりますが、残債は着実に減っていきます。
ルールがある方が「損」になる理由
5年ルールは支払いを減らす制度ではありません。先送りする制度です。
据え置き期間中、金利が上がっても返済額は変わりません。しかし利息は残債に対して発生し続けるので、 増えた利息のぶん元金に回る額が減ります。元金の減りが遅れれば、その後の利息計算の基になる残債が大きいままです。
結果として、同じ金利の動き方をしてもルールがある方が総支払額は多くなります。 猶予を得る代わりに、利息を余分に払っているという構造です。
先ほどと同じ条件で、完済までの総額を比べます。
| 項目 | ルールあり | ルールなし |
|---|---|---|
| 総返済額 | 47,315,990円 | 46,558,369円 |
| 返済額の最大値 | 119,496円 | 113,097円 |
| 差額 | ルールありの方が 757,621円 多い | |
3,000万円・35年・当初1.0%、5年で3.0%まで上昇した場合。計算エンジンによる算出値です。
注目したいのは返済額の最大値です。 ルールありが119,496円、ルールなしが113,097円。 ルールがある方が、最終的にはむしろ高い返済額に到達します。
直感に反するかもしれませんが、理由は単純です。125%ルールが抑えるのは 1回の改定でどれだけ上がるかであって、最終的にいくらになるかではありません。 据え置いた5年間で元金が減っていない分、後になってより多くを返す必要が出ます。
総返済額も757,621円多くなります。ルールが与えるのは 「上昇のペースを緩やかにする」ことだけで、 水準そのものを下げてはいません。これが「猶予の対価」です。
それぞれの向き不向き
ルールがある方が向いている人
- 返済額が急に上がると家計が回らない。とにかく変動幅を抑えたい
- 数年内に収入が増える見込みがあり、それまでの時間を稼ぎたい
- 先送りのぶん総支払額が増えても、月々の予測可能性を優先したい
ルールが無い方が向いている人
- 返済額が上がっても対応できる家計の余裕がある
- 元金を予定どおり減らしたい。先送りしたくない
- 未払利息という不確定要素を持ちたくない
どちらが優れているという話ではありません。 「上がったときに払えるか」で決まります。
いちばん危ないのは「ルールがあると思い込んでいる」場合
ルールの有無そのものより問題なのは、自分の契約がどちらか把握していないことです。
ルールがあると思い込んでいる人がルール無しの契約を結んでいた場合、 金利上昇の翌々月あたりに返済額が上がって驚くことになります。 逆にルールがあると、返済額が変わらないので「自分には影響がなかった」と誤解し、 元金が減っていない事実に気づかないまま数年が過ぎます。
ご自身の契約がどちらかは、次のどれかで確認できます。
- 金銭消費貸借契約書
- 商品説明書・重要事項説明書
- 金融機関のマイページやFAQ
「返済額の見直し」「元利金の返済額の変更」といった見出しの項目に、 5年ごとの改定や125%の上限について書かれています。
これから借りる・借り換える場合の考え方
ルールの有無だけで金融機関を選ぶ必要はありません。優先順位としては、 金利・諸費用・団信の内容の方が金額へのインパクトが大きいのが普通です。
ただし、金利上昇局面ではルールの有無が体感に大きく効きます。 条件が拮抗しているなら、「返済額がすぐ上がる方が困るか、元金が減らない方が困るか」で 決めるのは合理的な選び方です。
まとめ
- 5年ルール・125%ルールは法律ではなく、金融機関ごとの取り扱い
- ソニー銀行・PayPay銀行・SBI新生銀行などは採用していない
- ルールが無いと返済額はすぐ上がるが、未払利息は発生しない
- ルールがあると変動は緩やかだが、先送りのぶん総支払額は増える
- 危険なのはルールの有無ではなく、自分の契約を把握していないこと
ルールの有無を切り替えた試算は試算ツールでできます。 仕組みそのものは5年ルール・125%ルールと未払利息で詳しく扱っています。