300万円を先に入れると改定後の返済額はいくらになるか
当初3,000万円・35年・0.6%で借り、5年返済した時点を起点にします。残債は26,090,114円、 残り期間は30年、毎月返済は79,208円です。ここで金利が3年かけて1%上がると仮定し、 繰上げ返済をしない場合・期間短縮型で300万円入れた場合・返済額軽減型で300万円入れた場合を並べます。 5年ルールと125%ルールはある前提です。
| 方式 | 投入直後の毎月返済 | 2031年9月の改定後 | なしとの差 | 繰上げ額を含む総支出 |
|---|---|---|---|---|
| 繰上げ返済なし | 79,208円 | 92,480円 | 基準 | 3,251万円 |
| 期間短縮型 300万円 | 79,208円 | 90,698円 | −1,782円 | 3,098万円 |
| 返済額軽減型 300万円 | 70,100円 | 81,846円 | −10,634円 | 3,177万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。総支出は完済までに払う額に繰上げ返済額300万円を足したものです。
目を引くのは期間短縮型です。300万円を入れているのに、2031年9月の改定後の返済額は 90,698円で、何もしない場合の92,480円より1,782円しか低くなっていません。 一方、返済額軽減型は81,846円で、10,634円低い。差は8,852円です。
ただし総支出で見ると順序が入れ替わります。期間短縮型は3,098万円、返済額軽減型は 3,177万円で、期間短縮型の方が79万円少ない。 「改定後の返済額を下げたい」のか「総額を減らしたい」のかで、選ぶ方式が変わります。
なぜ期間短縮型では改定後の返済額が下がらないのか
期間短縮型は、毎月の返済額を79,208円のまま据え置き、残り期間を3年8ヶ月縮める方式です。 返済額が変わらないので、金利が上がったときの改定も「79,208円の何倍になるか」という形で計算されます。 残債は300万円減っていますが、それを返しきる期間も同時に短くなっているため、 1回あたりの返済額はほとんど軽くなりません。
返済額軽減型は逆です。期間は30年のまま据え置き、毎月返済を79,208円から70,100円へ 9,108円下げます。改定はこの下がった額を起点に行われるので、改定後の金額も低い位置から始まります。 つまり返済額軽減型は「毎月いくら払うか」を、期間短縮型は「いつまで払うか」と「総額」を動かしています。 金利上昇による毎月の負担増をやわらげたいなら、前者が効きます。
繰上げ返済額を変えるとどう変わるか
同じ条件で、投入額だけを100万円から500万円まで変えた場合の2031年9月の改定後返済額です。
| 繰上げ額 | 期間短縮型の短縮 | 期間短縮型の改定後 | 軽減型の投入直後 | 軽減型の改定後 |
|---|---|---|---|---|
| なし | — | 92,480円 | 79,208円 | 92,480円 |
| 100万円 | 1年3ヶ月 | 91,948円 | 76,172円 | 88,935円 |
| 200万円 | 2年6ヶ月 | 91,452円 | 73,136円 | 85,391円 |
| 300万円 | 3年8ヶ月 | 90,698円 | 70,100円 | 81,846円 |
| 500万円 | 6年2ヶ月 | 89,891円 | 64,028円 | 74,757円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。金利は3年かけて1%上がる仮定で統一しています。
期間短縮型は、500万円を投じても改定後は89,891円で、 何もしない場合より2,589円低いだけです。 同じ500万円を返済額軽減型に回すと改定後は74,757円まで下がります。 毎月の負担増への備えという目的に限れば、投入額を増やすより方式を選ぶ方が効いています。
上昇幅別|125%上限に当たるかどうかも変わる
上昇幅を0.5%から3%まで変えて、2031年9月の改定額を比べます。 括弧内は125%上限がなかった場合の金額で、上限に当たった行だけ表示しています。
| 上昇幅 | 繰上げなし | 期間短縮型300万円 | 返済額軽減型300万円 |
|---|---|---|---|
| +0.5% | 85,645円 | 84,670円 | 75,797円 |
| +1% | 92,480円 | 90,698円 | 81,846円 |
| +1.5% | 99,010円(上限なしなら99,727円) | 97,060円 | 87,625円(上限なしなら88,259円) |
| +2% | 99,010円(上限なしなら107,398円) | 99,010円(上限なしなら103,765円) | 87,625円(上限なしなら95,048円) |
| +3% | 99,010円(上限なしなら124,065円) | 99,010円(上限なしなら118,249円) | 87,625円(上限なしなら109,799円) |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。いずれも3年かけて上がる形で、5年ルール・125%ルールがある前提です。
繰上げ返済をしない場合は+1.5%で125%上限に当たり、改定額が99,010円で止まります。 同じ+1.5%でも期間短縮型は97,060円で、上限には当たっていません。 期間短縮型は据え置き期間中の元金の減りが速く、改定時点の残債が小さいため、 本来計算される改定額そのものが上限を下回るからです。期間短縮型が上限に当たるのは+2%からです。
上限に当たること自体は「毎月の返済額が抑えられた」という意味ですが、 住宅金融支援機構【フラット35】の解説が 述べるとおり、上限を超えた分の利息の支払いが免除されるわけではありません。 上限に当たっている行は、払う額が減ったのではなく、後ろに回っていると読みます。
いつ入れるかで結果は変わるか
今度は返済額軽減型に固定して、投入する時期だけを変えます。金利は3年かけて+1.5%上がる仮定です。 繰上げ返済をしない場合、改定後の返済額は99,010円になります。
| 投入時期 | 投入直後の毎月返済 | 次の改定後 | 繰上げ額を含む総支出 |
|---|---|---|---|
| 今すぐ | 70,100円 | 87,625円(上限適用) | 3,371万円 |
| 1年後 | 74,995円 | 86,839円 | 3,361万円 |
| 3年後 | 85,718円 | 85,717円 | 3,362万円 |
| 改定の直前(4年11ヶ月後) | 86,897円 | 86,896円 | 3,383万円 |
| 改定の直後(5年後) | 86,867円 | 86,868円 | 3,383万円 |
| 10年後 | 84,638円 | 84,646円 | 3,403万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。総支出は完済までに払う額に繰上げ返済額300万円を足したもので、どの時期でも同じ残り期間で完済しています。
表の「投入直後の毎月返済」が時期によって上がっているのは、 返済額軽減型では投入時点の適用金利で返済額を計算し直すためです。 据え置き期間中は上がった金利が返済額に出ていないので、途中で返済額軽減型を実行すると、 据え置かれていた分が先に反映されます。これは本ページの計算上の扱いで、 実際の再計算のタイミングは金融機関により異なります。
総支出がいちばん少ないのは「1年後」の3,361万円でした。 今すぐ入れる場合の3,371万円とは99,185円の差です。 返済額軽減型は毎月の返済額そのものを下げるため、下げた分だけ元金の減りも遅くなります。 「早いほど利息が減る」という一般則は期間短縮型では素直に働きますが、返済額軽減型ではこの打ち消しが入ります。
一方、改定を待ってから入れると総支出は増えます。改定の直後(5年後)に入れた場合は3,383万円で、 今すぐ入れる場合より119,434円多くなりました。 据え置き期間の5年間、上がった金利で計算された利息を払い続けるためです。 繰上げ返済は早いほど得かもあわせて確認してください。
未払利息が出る水準は方式で変わる
返済額を利息が上回ると、差額は未払利息として繰り延べられます。 繰上げ返済がこの水準をどれだけ押し上げるかを、2つの見方で出しました。 1つは「今この瞬間の残債と返済額だけで決まる金利」、 もう1つは「3年かけて上がる形を保ったまま、実際に未払利息が出はじめる上昇幅」です。
| 方式 | 起点の残債 | 毎月返済 | 起点の水準 | 3年で上がる場合に出はじめる上昇幅 | そのときの金利 |
|---|---|---|---|---|---|
| 繰上げ返済なし | 2,609万円 | 79,208円 | 3.64% | +3.25% | 3.85% |
| 期間短縮型 300万円 | 2,309万円 | 79,208円 | 4.12% | +3.78% | 4.38% |
| 返済額軽減型 300万円 | 2,309万円 | 70,100円 | 3.64% | +3.25% | 3.85% |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。上昇幅は二分探索で求めています。
2つの数字がずれるのは前提が違うからです。起点の水準は「明日いきなりその金利になったら」という計算で、 繰上げ返済なしなら3.64%です。 実際には3年かけて上がる間に元金が減っていくため、未払利息が出はじめるのは +3.25%(金利3.85%)まで上がった場合でした。 このページの試算では上昇幅を+3%(金利3.6%)まで広げても未払利息は発生していませんが、 それは3.6%がこの3.85%に届いていないからです。
方式の違いははっきり出ます。期間短縮型は返済額を79,208円に保ったまま残債だけ減らすので、 出はじめる金利は3.85%から4.38%へ上がります。 返済額軽減型は残債と返済額が同じ割合で下がるため、3.85%とほとんど動きません。 未払利息がいつ発生するかを気にする場合は、期間短縮型の方が距離を稼げます。
2つの方式は別のものをヘッジしている
ここまでの算出値を並べると、同じ300万円でも守れるものが違うことが分かります。 返済額軽減型が下げるのは改定後の毎月返済額で、その効果は10,634円でした。 期間短縮型が下げるのは総支出(79万円少ない)と、 未払利息が出はじめる水準(3.85%から4.38%へ)です。
したがって、何が不安なのかで選ぶ方式が決まります。 改定で毎月の家計が回らなくなることが不安なら返済額軽減型、 総額を減らしたい・未払利息の発生を遠ざけたいなら期間短縮型、という対応になります。 どちらも同時に最大化することはできないので、「繰上げ返済しておけば安心」という一言では判断できません。
なお、繰上げ返済に回した現金は手元から出ていきます。改定が来るのは5年後で、その間に 収入の変動や大きな支出が来る可能性もあります。 生活防衛資金をいくら残すかを先に決めてから、 残った余剰で方式を選ぶ順序が現実的です。
確認手順
まず返済予定表から、現在の残債・適用金利・残り回数・毎月返済額の4つを書き出します。 このページの起点にした26,090,114円・0.6%・30年・79,208円はモデルケースなので、 自分の数字に置き換えないと結論が変わります。
次に、契約先で5年ルールと125%ルールがあるかを契約書または商品説明書で確認します。 ルールがない契約では改定が金利見直しに直結するため、このページの改定時期の議論はそのまま当てはまりません。 あわせて、繰上げ返済の手数料・最低金額・受付方法(窓口/インターネット)も確認します。 取り扱いは金融機関により異なります。
最後に、返済額軽減型と期間短縮型のどちらを選ぶかを、 「改定後の毎月返済額」と「総支出」のどちらを優先するかで決めます。 金融機関によっては方式の選択が申込時に固定される場合があるため、 実行前に変更可否も確認しておくと、後から別の方式に切り替えられるかが分かります。
繰上げ返済と金利上昇についてよくある質問
金利が上がってから繰上げ返済しても間に合いますか
効果自体はあります。ただしこのページの試算では、改定の直後(5年後)に300万円を入れた場合の総支出は 3,383万円で、今すぐ入れる場合の3,371万円より 119,434円多くなりました。据え置き期間の5年間も、 上がった金利で計算された利息を払い続けるためです。
期間短縮型を選ぶと改定後の返済額は下がらないのですか
下がりますが、幅は小さいという結果でした。この条件では300万円で1,782円、 500万円でも2,589円です。 期間短縮型は返済額を据え置いて期間を縮める方式なので、改定の起点になる金額が変わらないためです。
繰上げ返済しておけば未払利息は発生しなくなりますか
発生しにくくはなりますが、なくなるわけではありません。この条件では、期間短縮型で 300万円を入れると出はじめる金利が3.85%から4.38%へ上がりました。 返済額軽減型では3.85%で、ほとんど変わりません。
まとめ
- 300万円の繰上げ返済で改定後の返済額が下がる幅は、期間短縮型で1,782円、返済額軽減型で10,634円
- 総支出では期間短縮型が79万円少なく、順序が入れ替わる
- 未払利息が出はじめる金利は期間短縮型で4.38%、返済額軽減型で3.85%
- 何を抑えたいのか(毎月の返済額か、総額か、未払利息か)を先に決めてから方式を選ぶ