12月実行と翌1月実行、1ヶ月ずらすと何が変わるか

前提は、残債2,800万円・残り30年・金利0.6%・元利均等(毎月返済85,007円)です。 ここに300万円を期間短縮型で入れます。控除は2024年入居・省エネ基準適合住宅の区分で、 控除率0.7%・借入限度額3,000万円・残存10年、年収は500万円とします。 これらはすべて本ページの仮定で、平均値や実勢値ではありません。

実行時期2026年の年末残高2026年の控除額残存10年の控除合計完済までの総利息利息−控除
2026年12月に実行 2,492.9万円 174,502円 1,465,598円 2,049,171円 583,573円
2027年1月に実行 2,792.9万円 195,502円 1,486,695円 2,050,913円 564,218円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。12月実行は12月の返済後に繰上げ、翌1月実行は1月の返済後に繰上げたものとして計算しています。

2026年の控除額は、12月実行が174,502円、翌1月実行が195,502円です。 1月まで待つと控除は残存期間合計で21,097円多く残ります。一方で、繰上げ返済が1ヶ月遅れる分だけ利息は1,742円増えます。 差引きすると1月実行が19,355円有利という結果です。

控除率0.7%に対して金利は0.6%です。1ヶ月ぶんの利息は年率の12分の1しか付きませんが、 控除は1年分がまるごと動きます。この非対称が差の正体です。

繰上げ額別|1ヶ月ずらす価値はいくらか

繰上げ額を変えると、控除の減り方も利息の増え方も比例して大きくなります。どちらの伸びが速いかを見ます。

繰上げ額12月実行の控除(実行年)1月実行の控除(実行年)1月にして残る控除1月にして増える利息差引き
100万円 188,502円 195,502円 7,033円 602円 6,431円
300万円 174,502円 195,502円 21,097円 1,742円 19,355円
500万円 160,502円 195,502円 35,163円 2,894円 32,269円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。年収500万円・控除の残存10年・期間短縮型で、繰上げ額だけを変えています。

100万円でも500万円でも、1月に遅らせて残る控除が増える利息を上回っています。 繰上げ額が大きいほど差額も大きく、500万円では32,269円になります。 金利が控除率を大きく超えていない限り、この関係は変わりにくい構造です。

控除の残存年数では差はほとんど変わらない

「控除が長く残っているほど、12月に入れる損が大きいのではないか」と考えたくなります。残存年数だけを変えて計算すると、そうはなりませんでした。

控除の残存年数12月実行の控除合計1月実行の控除合計1月にして残る控除差引き
残り1年 174,502円 195,502円 21,000円 19,258円
残り3年 505,139円 526,161円 21,022円 19,280円
残り5年 811,039円 832,082円 21,043円 19,301円
残り10年 1,465,598円 1,486,695円 21,097円 19,355円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。繰上げ額300万円・年収500万円で、控除の残存年数だけを変えています。

残り1年でも残り10年でも、差引きは19,258円と19,355円でほぼ同じです。 理由は、翌年以降の年末残高はどちらの時期に入れても同じように下がるからです。 12月に入れるか1月に入れるかで違うのは実行年の1年分だけで、残存年数が長くても差は積み上がりません。

「控除期間中は繰上げ返済を待つべきか」という、より大きな論点は別の記事で扱っています。 控除中の繰上げ返済は損かを合わせてご覧ください。本ページは「入れると決めた後、どの月に入れるか」だけを見ています。

年収別|控除が頭打ちの人は結論が逆になる

控除額は「年末残高×控除率」で計算した額が上限ではありません。所得税額と住民税からの控除上限を足した額で頭打ちになります。 頭打ちに当たっている人は、年末残高が下がっても控除額が変わらないことがあります。

年収年末残高×控除率税額による上限12月実行の控除(実行年)1月実行の控除(実行年)差引き
400万円 195,502円 172,263円 172,263円 172,263円 -1,645円
500万円 195,502円 235,845円 174,502円 195,502円 19,355円
700万円 195,502円 410,436円 174,502円 195,502円 19,355円
1,000万円 195,502円 900,516円 174,502円 195,502円 19,355円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。所得税額・住民税の課税所得は年収からの概算で、社会保険料率15%、扶養等の控除なしとしています。

年収400万円では、年末残高×控除率が195,502円なのに対し、税額による上限が172,263円です。 300万円を12月に入れて年末残高を下げても、計算上の控除額は上限を上回ったままなので、実際に受けられる控除は 172,263円から動きません。この層では1月に遅らせても控除はほとんど増えず、利息が増える分だけ損になります。 差引きは-1,645円、つまり12月実行のほうが1,645円有利という逆の結果です。

年収500万円以上では税額の上限に余裕があるため、年末残高がそのまま控除に響きます。 ここでは1月実行が19,355円有利で、年収1,000万円でも同じ結論です。 つまり「年末をまたぐかどうか」の判断は、金利ではなく自分の控除が何で頭打ちになっているかで決まります。

頭打ちの層では、いくらから控除が減り始めるか

頭打ちに当たっている人でも、繰上げ額が大きくなれば年末残高×控除率が上限を下回り、そこから控除が減り始めます。 年収400万円のケースで、繰上げ額だけを変えて境目を探しました。

繰上げ額12月実行の控除(実行年)1月実行の控除(実行年)1月にして残る控除1月にして増える利息差引き
100万円 172,263円 172,263円 26円 602円 -576円
200万円 172,263円 172,263円 57円 1,171円 -1,114円
300万円 172,263円 172,263円 97円 1,742円 -1,645円
400万円 167,502円 172,263円 4,892円 2,334円 2,558円
500万円 160,502円 172,263円 11,924円 2,894円 9,030円
700万円 146,502円 172,263円 25,989円 3,988円 22,001円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。年収400万円・控除の残存10年・期間短縮型で、繰上げ額だけを変えています。

400万円の年収では、税額による上限172,263円に対応する年末残高は2,460.9万円です。 実行前の年末残高2,792.9万円との差は332.0万円です。 繰上げ額がこの幅に収まっている行(100万円〜300万円)では、 12月実行・1月実行のどちらも実行年の控除が172,263円のまま変わらず、差引きはマイナス、つまり12月実行が有利です。 表の「1月にして残る控除」がわずかに残っているのは、翌年以降の年末残高がこの水準を下回るためで、実行年の影響ではありません。 400万円になると実行年の控除自体が167,502円へ下がり、差引きが2,558円で1月実行が有利に転じます。

同じ年収でも、扶養家族の有無、他の所得控除、住民税の課税所得によって上限は変わります。 自分の上限は源泉徴収票の所得税額と住民税の課税所得から確認するのが確実です。

年末残高という基準が効く理由

国税庁は住宅借入金等特別控除の計算について、「住宅ローン等の年末残高の合計額」を基に控除額を計算すると説明しています (国税庁 タックスアンサー No.1211-1)。 基準が年末の一点であるため、12月31日までに残高が下がったかどうかで、その年の控除額が決まります。 月々の平均残高ではないので、1ヶ月の違いが1年分の控除に効きます。

もう一つ、期間短縮型で注意が必要な点があります。国税庁は、繰上げ返済後の償還期間が当初の初回返済月から短縮後の最終返済月まで 10年以上であれば控除を受けられるが、10年未満になると対象外になるとしています (国税庁 質疑応答事例)。 本ページの基準ケースは繰上げ後も26年7ヶ月残るため対象外にはなりませんが、 完済間近で大きく短縮する場合は、この10年の要件を先に確認してください。

どの数字を見て決めるか

見るべき数字は2つだけです。1つは繰上げ額×控除率、つまり年末残高を下げることで失う1年分の控除です。 基準ケースでは300万円×0.7%=21,000円にほぼ一致する21,097円が動きました。 もう1つは繰上げ額×金利÷12、1ヶ月待つことで余分に払う利息です。 基準ケースでは300万円×0.6%÷12=1,500円が目安で、 1ヶ月分の返済が先に進むぶんを含めて厳密に計算すると1,742円でした。

前者が後者より大きければ1月に回すほうが有利、小さければ12月に入れるほうが有利です。 ただし前者は、自分の控除が税額で頭打ちになっているとゼロに近づく点に注意が必要です。 年収400万円のケースがその例で、結論が反転しました。

金利が控除率より十分高い場合も同じ向きに働きます。適用金利が0.7%の12倍、 つまり年8.4%を超えるような水準であれば、1ヶ月分の利息が1年分の控除を上回る計算になります。 現実的な水準かどうかは別として、判断の構造としてはこの比較に集約されます。

実行前に確認する手順

1つめは、返済予定表で現在の残債・残り期間・適用金利を確認することです。12月の返済後の残高が、年末残高の出発点になります。

2つめは、住宅ローン控除の残存年数と自分の控除額の頭打ちを確認することです。 年末残高証明書に記載された残高に控除率を掛けた額と、源泉徴収票の所得税額を見比べます。 計算上の控除額が所得税額と住民税からの控除上限の合計を超えているなら、年末残高を下げても控除は減りにくい状態です。

3つめは、金融機関の繰上げ返済の受付期限と反映日を確認することです。 年末最終営業日の扱い、インターネット受付の締切、残高に反映される日付は金融機関により異なります。 12月中に手続きしたつもりでも反映が翌年になることがあり、逆に1月に入れるつもりが年内で処理されることもあります。 繰上げ返済の手数料は何円まで見合うかも合わせて確認しておくと、実行回数の設計がしやすくなります。

返済額軽減型を選んだ場合の違い

本ページは期間短縮型で計算しました。返済額軽減型でも、年末残高が下がるという点は同じなので、 控除への影響の向きは変わりません。違うのは削減できる利息の大きさで、こちらは期間短縮型より小さくなります。

つまり返済額軽減型では、1ヶ月待つことで増える利息のほうが小さくなり、1月に回す判断がより有利に出やすい構造です。 方式そのものの比較は期間短縮型と返済額軽減型どっち、 軽減額の実数は繰上げ返済で毎月いくら下がるかで扱っています。

なお、どの月に入れるかという判断は毎年やってくる話です。毎年一定額を入れている人は、 実行月を年明けに寄せるだけで控除の取りこぼしを避けられる場合があります。 毎年100万円の繰上げ返済を続けたらでは、繰り返した場合の効き方を計算しています。

よくある質問

12月30日に入れるのと1月4日に入れるのでは、本当に1年分の控除が変わるのですか

控除額の基準は年末残高です。12月31日時点の残高が下がっていれば、その年の控除はその残高で計算されます。 ただし実際にいつの残高として扱われるかは、金融機関の処理日によって決まります。手続日ではなく反映日で確認してください。

控除が減るなら、繰上げ返済そのものをやめたほうがよいのでしょうか

本ページは「入れると決めた後の実行月」を比べたもので、繰上げ返済をするかどうかは別の判断です。 控除率と適用金利の関係で結論が変わるため、控除中の繰上げ返済は損かで扱っています。 控除が税額で頭打ちになっている人には、一般論がそのまま当てはまらない場合があります。

変動金利の場合も同じ考え方でよいですか

年末残高が基準という点は同じです。ただし変動金利では、5年ルールがあると繰上げ返済後も返済額が据え置かれることがあり、 削減の効き方が内訳の変化として現れます。上昇局面では1ヶ月分の利息も大きくなるため、 繰上げ返済は金利上昇のヘッジになるかの観点も合わせて見ると判断しやすくなります。

まとめ

  • 基準ケースでは1月実行が19,355円有利(控除21,097円−利息1,742円)
  • 差が出るのは実行年の1年分だけ。控除の残存年数では変わらない
  • 控除が税額で頭打ちの層では逆転し、年収400万円では12月実行が1,645円有利
  • 繰上げ額×控除率と、繰上げ額×金利÷12を比べるだけで向きが決まる