上昇が早いか遅いかで総返済額はいくら違うか
条件は借入3,000万円・35年・元利均等・当初金利0.6%、初回返済は2026年11月。 5年ルールと125%ルールのある契約とし、金利は3年かけて+1.5%まで上がる仮定です。 変えるのは上昇が始まる年だけで、最終的に到達する金利2.1%はどのケースも同じです。
金利が動かなければ毎月返済は79,208円、35年の総返済額は3,327万円です。これを基準に、 上昇開始が3年目・8年目・15年目・20年目の4通りを比べます。
| 上昇開始 | 最初に返済額が変わる改定 | 改定後の返済額 | 改定後の最高返済額 | 総返済額 | 金利据え置きとの差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3年目 | 2031年10月 | 99,010円(上限) | 100,739円 | 4,094万円 | 767万円 |
| 8年目 | 2036年10月 | 97,144円 | 97,144円 | 3,867万円 | 540万円 |
| 15年目 | 2041年10月 | 83,466円 | 94,183円 | 3,623万円 | 297万円 |
| 20年目 | 2046年10月 | 82,483円 | 91,198円 | 3,491万円 | 165万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。到達する金利幅・上昇にかける年数・借入条件は共通で、上昇が始まる月だけを変えています。
3年目に上がり始めた場合の総返済額は4,094万円、20年目なら3,491万円で、 差は602万円です。15年目開始との比較でも470万円の差があります。 同じ到達金利でも、残債が大きい期間にその金利が当たるかどうかで結果が分かれます。
上昇幅別|早い上昇と遅い上昇の総額差
上昇幅が変わると、時期による差も変わります。3年目開始と15年目開始で、 到達する上昇幅を+1.0%から+2.5%まで変えた結果です。
| 上昇幅 | 到達金利 | 3年目開始の総返済額 | 15年目開始の総返済額 | 時期による差 |
|---|---|---|---|---|
| +1.0% | 1.6% | 3,822万円 | 3,520万円 | 302万円 |
| +1.5% | 2.1% | 4,094万円 | 3,623万円 | 470万円 |
| +2.0% | 2.6% | 4,398万円 | 3,732万円 | 667万円 |
| +2.5% | 3.1% | 4,729万円 | 3,845万円 | 884万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。いずれも3年かけて到達する前提で、上昇が始まる月だけが異なります。
上昇幅が大きくなるほど、時期による差も広がります。+1.0%なら302万円、 +2.5%なら884万円です。「どのくらい上がるか」と「いつ上がるか」は別の軸で、 どちらか一方だけを見ると影響を取り違えます。
残債の減り方はどれだけ遅れるか
5年ルールのある契約では、金利が上がっても返済額はすぐ変わりません。増えた利息は返済額の内訳を変え、 元金に回る分を減らします。その結果が残債の遅れとして出ます。
| 上昇開始 | 10年後の残債 | 20年後の残債 | 据え置き時の20年後残債に追いつくまで |
|---|---|---|---|
| 金利据え置き | 2,206万円 | 1,363万円 | — |
| 3年目 | 2,350万円 | 1,554万円 | 2年2ヶ月の遅れ |
| 8年目 | 2,266万円 | 1,499万円 | 1年7ヶ月の遅れ |
| 15年目 | 2,206万円 | 1,453万円 | 1年1ヶ月の遅れ |
| 20年目 | 2,206万円 | 1,368万円 | 1ヶ月の遅れ |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。「追いつくまで」は、金利が動かない場合の20年後残債1,363万円に各ケースの残債が到達する月を数えたものです。
3年目に上がり始めた場合、10年後の残債は2,350万円で、据え置き時の2,206万円より多く残ります。 一方15年目・20年目開始では、10年後の時点ではまだ上昇が始まっていないため残債は据え置きと同じです。 差が出るのは上昇のあとで、20年後の残債では1,453万円、1,368万円と開きます。
遅れは上昇が早いほど大きくなります。3年目開始では2年2ヶ月、 20年目開始では1ヶ月です。完済時期そのものは元利均等では変わりませんが、 途中で売却や借り換えを考える場合、残債の水準は選択肢を左右します(残債と家の価値の関係)。
未払利息が出る到達金利も時期で変わる
返済額の見直しに上限があるため、金利が大きく上がると利息が返済額を超え、超えた分が繰り延べられます。 住宅金融支援機構【フラット35】は、変動金利型では半年ごとに借入金利の見直しが行われる一方、 毎月の返済額の見直しは5年ごとで、見直し後の返済額は変更前の1.25倍が限度とされているケースが一般的だとし、 利息の支払額が返済額を超えた分を「未払利息」と説明しています (住宅金融支援機構【フラット35】金利タイプの選び方)。 ルールの有無や内容は金融機関により異なるため、契約内容での確認が前提になります。
この未払利息が発生する到達金利を、上昇開始時期ごとに逆算しました。
| 上昇開始 | 未払利息が出る上昇幅 | そのときの到達金利 | +1.5%での未払利息 |
|---|---|---|---|
| 3年目 | +2.87% | 3.47% | 発生なし |
| 8年目 | +3.45% | 4.05% | 発生なし |
| 15年目 | +6.02% | 6.62% | 発生なし |
| 20年目 | +8.23% | 8.83% | 発生なし |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。3年かけて上がる前提で上昇幅を動かし、未払利息が初めて発生する水準を探索しています。
3年目に上がり始める場合は到達金利3.47%で未払利息の領域に入りますが、 20年目開始では8.83%まで必要です。返済が進んで元金が減っていると、 同じ返済額で払える利息の幅が広がるためです。今回の+1.5%という仮定では、どのケースでも未払利息は発生しませんでした。 未払利息そのものの発生時期と金額は未払利息はいつ発生していくらかで扱っています。
なぜ早い上昇の方が高くつくのか
利息は「その月の残債×金利」で決まります。つまり負担は、金利の高さと残債の大きさの掛け算で、 さらにそれが何ヶ月続くかで積み上がります。借入直後は残債が最大で、残り期間も最長です。 この時期に金利が乗ると、掛け算の両方が大きい状態が長く続きます。
返済が進んだあとは逆です。20年目に入る時点では残債は1,450万円まで減っており、 残り期間は16年です。同じ+1.5%が乗っても、掛け算の結果は小さくなります。 上昇幅が同じでも総額が602万円違うのは、この面積の差です。
同じ理屈は上昇ペースにも当てはまります。到達点が同じでも一度に上がるか時間をかけるかで総額は変わります (上昇ペースが変わると総額はいくら違うか)。 時期とペースは別の要素なので、分けて見た方が影響を見落としにくくなります。
初回改定の増加額が小さいことは安心材料にならない
表で目を引くのは、上昇開始が遅いケースほど初回改定の増加額が小さいことです。 3年目開始では2031年10月の改定で99,010円まで上がり、 これは1.25倍の上限に当たって1,359円が後ろに回った結果です。 一方15年目開始の初回改定は83,466円にとどまります。
ただしこれは、上昇が終わる前に改定日が来たためです。改定時点の適用金利は、 3年目開始では2.1%まで上がりきっていますが、 15年目開始では1.1%です。残りの上昇は次の改定に反映されます。 15年目開始でも最終的な最高返済額は94,183円で、初回改定額より10,717円高くなります。
つまり初回改定額は到達点ではありません。1.25倍の上限が抑えるのは1回の改定幅で、 到達する水準そのものには上限がありません(変動金利に上限はない)。 改定の案内が届いたときに見るのは、改定後の金額だけでなく適用金利と残債です。
判断基準|どの数字を見るか
上昇が始まる時期は選べません。それでも、この計算は「いま自分がどの位置にいるか」の判断に使えます。 借入から数年以内で残債が当初に近い人は、同じ上昇幅でも総額への影響が大きい側にいます。 返済が進んで残り期間が短い人は、影響が小さい側です。
見る順番は、まず改定後の最高返済額です。3年目開始では100,739円、 20年目開始では91,198円で、いずれも据え置き時の79,208円より高い水準です。 これが家計で払える範囲かどうかが、最初の線になります。
次に未払利息の到達金利です。この水準に余裕があるかで、備えの優先度が変わります。 残債が大きいうちは水位が低く、返済が進むほど上がります。最後に総返済額の差を見て、 繰上げ返済や固定への変更を検討する価値があるかを、費用と並べて比べます。 残り期間が短い段階での上昇については残り15年の金利1%上昇の影響も合わせて確認できます。
確認手順
最初に返済予定表で、現在の残債・適用金利・残り期間・次回の返済額改定時期を確認します。 この4つが揃えば、自分の位置がこの記事のどのケースに近いか判断できます。 項目の場所は返済予定表の見方で確認できます。
次に、契約で5年ルールと125%ルールがあるかを金融機関に確認します。 ルールがない契約では金利が動いた月に返済額が洗い替えられるため、改定の出方が変わります。 そのうえで、下のツールに残債・残り期間・金利を入れて、上昇幅を数通り変えて計算します。
改定時期が近いか遠いかでも結果が動きます。次の改定までの残り月数による違いは 同じ上昇でも改定時期で総額が変わるで扱っています。
上昇の時期についてよくある質問
金利が上がる時期は選べないのに、この比較に意味はありますか
時期を選ぶための計算ではなく、自分がどちら側にいるかを知るための計算です。 借入から数年以内なら、同じ上昇幅でも総額への影響が大きい側にいます。 その位置が分かれば、備えの金額や優先順位を決めやすくなります。
上昇が遅ければ影響は小さいと考えてよいですか
総返済額への影響は小さくなります。今回の試算では20年目開始の増加は165万円で、 3年目開始の767万円より小さい結果でした。 ただし毎月の返済額は91,198円まで上がり、その時期は収入が変わっている可能性もあります。 総額と月額は別に見る必要があります。
繰上げ返済をすれば早い上昇の影響を打ち消せますか
残債を減らせば利息の計算の土台が小さくなるため、影響は軽くなります。 ただし効き方は方式によって変わり、期間短縮型では改定後の返済額そのものはあまり下がりません。 方式別の違いは金利上昇への備えに繰上げ返済は効くかで数値を出しています。
まとめ
- 到達金利が同じ+1.5%でも、上昇開始が3年目か20年目かで総返済額は602万円違う
- 改定後の最高返済額は100,739円と91,198円で、差は9,541円
- 未払利息が出る到達金利は3.47%から8.83%まで、時期で大きく動く
- 初回改定額が小さいのは上昇の途中で改定が来たためで、到達点ではない