金利が元の0.6%に戻っても、総返済額は144万円増える
残債3,000万円・残り35年・適用金利0.6%・元利均等返済・5年ルールと125%ルールありを前提に、 適用金利が2.1%まで上がったあと0.6%へ戻る山型のシナリオを走らせました。 山の形は計算エンジンが作った金利パスそのもので、2027年1月から階段状に上がり始め、 2028年7月に2.1%へ到達、1年6ヶ月そこに留まり、 2031年7月に0.6%へ戻ります。戻ったあとは完済まで0.6%のままです。
結論は、金利は元に戻っても総返済額は戻らないという形になります。 山の高さを変えて比べたのが次の表です。
| 山の高さ | ピーク金利 | 山の間の返済額 | 2031年10月改定後 | 総返済額 | 横ばいとの差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 横ばい(上がらない) | 0.6% | 79,208円 | 79,208円 | 3,327万円 | 基準 |
| +0.5% | 1.1% | 79,208円 | 80,516円 | 3,374万円 | 47万円 |
| +1% | 1.6% | 79,208円 | 81,844円 | 3,422万円 | 95万円 |
| +1.5% | 2.1% | 79,208円 | 83,191円 | 3,471万円 | 144万円 |
| +2% | 2.6% | 79,208円 | 84,559円 | 3,520万円 | 193万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。いずれも1年6ヶ月ピークに留まったあと0.6%へ戻る山で、戻った後は完済まで0.6%としています。
山の間の返済額は、どの高さでも79,208円のまま動きません。5年ルールにより、 適用金利が変わっても次の改定まで返済額が変わらないためです。 動くのは返済額ではなく内訳で、2028年7月の元金充当は28,387円、 横ばいなら64,854円でした。
返済額が上がるのは、金利が戻った後の2031年10月
基準ケース(+1.5%の山)で返済額が初めて改定されるのは2031年10月で、 79,208円から83,191円へ3,983円上がります。 ところが適用金利が0.6%に戻るのは、その前の2031年7月です。 つまり金利が元の水準に戻ってから返済額が上がるという順番になります。
返済額が上がる理由は、改定時の適用金利ではなく残債です。2031年7月時点の残債は 2,760万円、横ばいなら2,629万円で、差は131万円あります。 改定額はその時点の残債と残り期間で元利均等を組み直した額なので、同じ0.6%でも残債が多い分だけ返済額は高くなります。
そして83,191円は、以後の改定でもほぼ動かず完済まで30年続きます。 10年後(2036年10月)の残債は2,317万円で、横ばいの2,206万円より 111万円多く残ります。 一時的な上昇の代償は、上昇していた期間ではなく完済までの全期間に残ります。
ピークに留まる期間が総額を決める
山の高さを+1.5%に固定し、ピークに留まる期間だけを変えて比べます。 同じ高さでも、どれだけ長くそこに留まるかで差が変わります。
| ピークが続く期間 | 0.6%に戻る時期 | 2031年10月改定後 | 総返済額 | 横ばいとの差 |
|---|---|---|---|---|
| 6ヶ月 | 2030年7月 | 81,888円 | 3,423万円 | 97万円 |
| 1年6ヶ月 | 2031年7月 | 83,191円 | 3,471万円 | 144万円 |
| 3年6ヶ月 | 2033年7月 | 99,010円(上限) | 3,554万円 | 228万円 |
| 5年6ヶ月 | 2035年7月 | 99,010円(上限) | 3,642万円 | 315万円 |
| 10年6ヶ月 | 2040年7月 | 99,010円(上限) | 3,832万円 | 505万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。いずれもピーク2.1%の山で、高さと上下の速さは共通、滞留期間だけを変えています。
ピークが6ヶ月で終わる山なら差は97万円、 10年6ヶ月続く山なら505万円です。 高さが同じでも、滞留が長いほど元金が減らない月が積み上がるため、差は滞留期間にほぼ比例して増えます。
表の99,010円に「上限」と付いている行は、125%ルールが効いた改定です。 改定額は直前の返済額の125%を上限とするため、79,208円の125%を切り捨てた99,010円で止まります。 ただし上限は1回の改定幅を抑えるだけで、抑えた分が消えるわけではありません。 ピークが10年6ヶ月続く山では、次の2036年10月の改定で 99,010円から105,733円へさらに上がります。
据え置きルールが無い場合と比べる
5年ルール・125%ルールが無い商品もあります。その場合、適用金利が動いた時点で返済額も組み直されます。 同じ+1.5%の山で比べました。
| ルール | ピーク時(2028年7月)の返済額 | 金利が戻った後の返済額 | 10年後の残債 | 総返済額 | 横ばいとの差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 5年ルール・125%ルールあり | 79,208円 | 83,191円(2031年10月から) | 2,317万円 | 3,471万円 | 144万円 |
| どちらも無い | 100,359円 | 80,775円(2031年7月から) | 2,250万円 | 3,460万円 | 134万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。金利パス・残債・残り期間はすべて同じで、返済額の改定ルールだけを変えています。
据え置きルールがあると、ピーク時の返済額は79,208円に抑えられます。 ルールが無い場合は100,359円まで上がるので、 山の最中の負担は21,151円軽くなります。毎月の家計を守る働きは実際にあります。
一方で総返済額は、ルールがある方が102,834円多くなりました。 据え置き中は元金の減りが遅れ、その残債に利息が付き続けるためです。 据え置きは負担を軽くする仕組みではなく、負担の時期を後ろへずらし、 ずらした期間の利息分だけ総額が増える仕組みという結果です。 どちらが自分に合うかは、山の最中に21,151円を払えるかどうかで変わります。
表の3列目のとおり、ルールが無い場合でも返済額は元の79,208円には戻りません。 金利が0.6%に戻った2031年7月の時点で80,775円です。 返済額が金利に追随して下がっても元の額を上回るのは、山の最中に減らなかった元金が残っているからで、 これはルールの有無では消えません。
同じ山が遅く来るほど代償は小さい
同じ形の山が、何年後に来るかで差が変わります。残債が小さくなってから来る山の方が、影響は小さくなります。
| 上昇が始まる時期 | 最初の返済額改定 | 改定後の返済額 | 総返済額 | 横ばいとの差 |
|---|---|---|---|---|
| 2027年1月 | 2031年10月 | 83,191円 | 3,471万円 | 144万円 |
| 2032年1月 | 2036年10月 | 83,254円 | 3,449万円 | 122万円 |
| 2037年1月 | 2041年10月 | 83,347円 | 3,426万円 | 100万円 |
| 2042年1月 | 2046年10月 | 83,502円 | 3,404万円 | 78万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。山の高さ・滞留期間・上下の速さは共通で、山が始まる時期だけをずらしています。
2027年1月に始まる山では差が144万円、 2042年1月に始まる山では78万円です。 金利差が効くのは残債に対してなので、残債が減ってから来る山の方が代償は小さくなります。 言い換えると、返済の初期に来る山がいちばん高くつくということです。
改定後の返済額は、遅く来る山の方がむしろ大きくなっています。 残り期間が短くなってから残債のずれを組み直すため、1回分の増え方は大きくなるものの、 その返済額で払う回数が少ないため総額は小さくなります。月額と総額が逆方向に動く例です。
未払利息が出る水準とはどれだけ離れているか
利息が毎月の返済額を超えると、差額が未払利息として積み上がります。 2026年11月時点の残債3,000万円と返済額79,208円から逆算すると、 未払利息が出始めるのは適用金利が3.17%を超えたときです。
このページの山型シナリオで未払利息が出るのは、山の高さが +2.65%(ピーク3.25%)を超えたときでした。 基準ケースのピークは2.1%なので、表1で扱った+0.5%から +2%までの山では未払利息は発生していません。 総返済額が増えるのは、未払利息ではなく元金の減りが遅れたことによるものです。
2つの閾値が3.17%と3.25%でずれるのは、前提が違うためです。 前者は2026年11月の残債3,000万円で逆算した水準、後者は山が頂上に届く 2028年7月までに残債が2,901万円まで減っていることを織り込んだ水準です。 残債が減ると同じ返済額で払える利息の上限が上がるため、山型では閾値が少し高く出ます。
未払利息は、最終返済時まで残った分を一括で支払う扱いになります (三菱UFJ銀行の金利に関する説明では、 利息だけで返済額を超えた超過分を未払利息として翌月以降に繰り延べるとしています)。 つまり「返済額が据え置かれている」ことと「負担が出ていない」ことは別です。
5年ルールの前提をどこで確かめるか
この試算は、適用金利が半年ごとに階段状に動き、返済額の改定は5年ごと、改定幅の上限は直前の125%という前提で組んでいます。 三菱UFJ銀行は、基準金利を年2回(3月1日・9月1日を基準日)見直して4月1日・10月1日から適用し、 既存の借入では6月・12月の約定返済日の翌日から適用利率を変えると説明しています (変動金利の基準金利見直しについて)。
返済額の側については、同行の金利タイプの説明が 「返済額は5年ごとに見直しします」「適用金利が変わっても次回の見直しまで返済額は変わりません(元金と利息の内訳は変わります)」 「新返済額はそれまでの返済額の125%を超えることはありません」としています。 金利が下がった場合も同じで、次の見直しまで返済額は動きません。
ただし適用金利が変わる月、改定の起点、ルールの有無は金融機関と契約によって異なります。 元金均等返済にはこれらのルールがありません。 本ページの試算では適用金利が動く月を1月・7月、改定を5年ごととしていますので、 ご自身の契約では返済予定表と契約書で起点を確認してください。
どの数字を見て判断するか
一時的な上昇を見積もるとき、見る数字は3つです。1つ目は次の改定時期。 山が改定より前に終われば、山の最中の返済額は変わりません。基準ケースでは 2031年7月に金利が戻り、2031年10月に返済額が上がりました。
2つ目は改定後の返済額。83,191円が完済まで30年続く前提で、 家計が回るかを見ます。3つ目は改定時点の残債。 山の最中に残債が横ばい想定より131万円多く残ったことが、返済額の差3,983円の原因です。
この3つを見ると、選択肢の優先順位が変わります。改定までに余力があるなら、 据え置き期間中に毎月の上乗せ返済で元金を減らしておくと、 改定時の返済額の上がり幅を小さくできます。 逆に山が高く長く続く想定を重く見るなら、固定への変更を 同じ軸で比較する段階に入ります。
確認手順
最初に返済予定表で、現在の残債、残り返済回数、適用金利、直近の返済額改定時期を確認します。 改定時期が分かると、次の改定が何年何月かが決まります。ここがずれると全部ずれます。
次に、契約書か金融機関のサイトで5年ルール・125%ルールの有無、適用金利が変わる月を確認します。 ルールが無い商品では、金利が動いた時点で返済額も動きます。
そのうえで、上がる高さと戻るまでの期間を自分で決めて計算します。 予測ではなく仮定でよいので、高さを2〜3通り、滞留期間を2通りくらい作って、 改定後の返済額と総返済額の両方を見ます。最後に、その結果を金融機関に持ち込んで 自分の契約での改定時期と改定方法を確認してください。
一時的な金利上昇についてよくある質問
金利が元に戻れば返済額も元に戻りますか
基準ケースの計算では戻りませんでした。改定後の返済額83,191円は、 元の79,208円より3,983円高い水準です。 改定額はその時点の残債と残り期間で組み直すため、山の最中に減らなかった元金の分だけ返済額が高くなります。
上がっている期間が短ければ影響は無視できますか
ピークが6ヶ月で終わる山でも、総返済額の差は97万円でした。 小さいとは言えない額ですが、10年6ヶ月続く山の505万円とは差があります。 影響の大きさは滞留期間でほぼ決まるので、短いか長いかを分けて計算する価値があります。
5年ルールがある方が有利ですか
基準ケースでは、ピーク時の返済額は21,151円低く抑えられた一方、 総返済額は102,834円多くなりました。毎月の負担と総額で向きが逆なので、 どちらが有利かは一律には決まりません。山の最中に返済額が上がっても払えるかどうかで判断が変わります。
未払利息は心配しなくてよいのですか
このページの山型シナリオでは、ピークが3.25%を超えるまで未払利息は出ませんでした。 ただしこれは残債3,000万円・返済額79,208円という条件での算出値です。 残債が大きく返済額が小さい契約では閾値が下がるので、自分の数字で確認してください。
まとめ
- 2.1%まで上がって2031年7月に0.6%へ戻る山で、総返済額は144万円増える
- 返済額が上がるのは金利が戻った後の2031年10月。79,208円から83,191円になる
- その水準は完済まで30年続き、元の金額には戻らない
- 差を決めるのはピークに留まる期間。6ヶ月なら97万円、10年6ヶ月なら505万円
- 据え置きルールはピーク時の返済額を21,151円抑えるが、総返済額は102,834円増える