毎月1万円の上乗せで、改定後の返済額はいくら下がるか
条件は残債3,000万円・残り30年・適用金利0.6%・元利均等・次回の返済額改定まで5年。 金利は半年後から3年かけて+1%まで上がると仮定します(予測ではなく仮定です)。 上乗せは毎月1万円ぶんを1年ためて、年1回の一部繰上返済(期間短縮型)に回す形で計算しました。
| 項目 | 上乗せなし | 毎月1万円を上乗せ | 差 |
|---|---|---|---|
| 現在の約定返済額 | 91,078円 | 91,078円 | — |
| 2031年9月の改定後 | 106,339円 | 104,331円 | -2,008円 |
| 改定後の実際の月支出 | 106,339円 | 114,331円 | 7,992円 |
| 5年後の残債 | 2,628万円 | 2,578万円 | -50万円 |
| 完済 | 2056年9月 | 2054年3月 | 2年6ヶ月早い |
| 総支出(返済+上乗せ) | 3,738万円 | 3,663万円 | -75万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。上乗せ分は手元から出ていく現金なので、総支出に含めて同じ軸で並べています。
改定後の約定返済額は106,339円から104,331円へ、2,008円下がりました。 一方で上がり幅そのものは15,261円です。つまり上乗せが打ち消したのは13.2%で、 残りは返済額の増加として受け止めることになります。
打ち消せる額が小さくなる理由
5年ごとの改定では、その時点の残債・残り期間・適用金利から元利均等返済の額を計算し直します。 上乗せを続けた人は残債が50万円少ない状態で改定を迎えますが、 期間短縮型の繰上返済では残り期間も同時に短くなっているため、 短くなった期間で割り直すぶん、返済額は押し戻されます。
残債が減る効果と、残り期間が縮む効果が逆向きに働くので、改定後の月額は大きくは下がりません。 その代わり、短くなった期間と減った利息は総支出に出ます。表の総支出は75万円少なく、 完済は2年6ヶ月早まりました。
毎月の返済額そのものを下げたい場合は、繰上返済の方式の選択が関わります。 三菱UFJ銀行は一部繰上返済について、返済期間を短くする「最終返済期限繰上方式」と、 毎月の返済額を減らす「返済額再計算方式」の2つを案内しています(三菱UFJ銀行「一部繰上返済」)。 ローンの種類によってあらかじめ方式が定められている場合があるとも記載されているため、 自分の契約でどちらを選べるかは借入先に確認してください。
上昇幅別|打ち消せる割合はどう変わるか
同じ毎月1万円の上乗せで、金利の上がり幅だけを変えた結果です。 上がり幅が大きいほど上乗せが効いてほしいところですが、算出値は逆の向きに動きました。
| 上昇幅 | 上乗せなしの改定後 | 上乗せありの改定後 | 差 | 上がり幅のうち | 1.25倍の上限 | 総支出の差 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 上昇なし | 91,079円 | 91,019円 | -60円 | — | — | -29万円 |
| +0.5% | 98,480円 | 96,607円 | -1,873円 | 25.3% | — | -49万円 |
| +1.0% | 106,339円 | 104,331円 | -2,008円 | 13.2% | — | -75万円 |
| +1.5% | 113,847円 | 112,520円 | -1,327円 | 5.8% | 上乗せなし側に適用 | -103万円 |
| +2.0% | 113,847円 | 113,847円 | 0円 | 0.0% | 両方に適用 | -118万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。上昇の仕方(半年後から3年かけて上がる)は固定し、上昇幅だけを変えています。
+0.5%では上がり幅7,402円のうち25.3%を打ち消しましたが、 +1.0%では13.2%、+2.0%では0.0%です。 上がり幅が大きい局面ほど、月額に出る効果は小さくなります。 一方で総支出の差は逆に広がり、+2.0%では118万円になりました。
上昇なしの行では、改定後の額がほとんど動いていません。 金利が変わらなければ改定しても元の返済額とほぼ同じ額が再計算されるためで、 この場合に上乗せの効果が出るのは完済時期と総支出だけです。
125%の上限に当たる局面では、月額は下がらない
変動金利型の元利均等返済では、返済額は5年ごとに見直し、見直し後の額はそれまでの返済額の125%を超えません (三菱UFJ銀行「金利タイプの選び方」)。 上の表の+2.0%の行では、上乗せあり・なしのどちらも上限に当たり、 改定後の約定返済額は113,847円で一致しました。差は0円です。
上限が効いている間は、残債がいくら少なくても改定額は上限で止まります。 そのため「上乗せしておけば改定の跳ね上がりを抑えられる」という置き方は、この水準では当てはまりません。 ただし、上限で抑えられた額は消えるわけではなく、元金の減りが遅れる形で後ろに残ります。 同じ上限の効き方は125%ルールの上限の記事でも扱っています。
なお+1.5%の行は、上乗せなし側だけが上限に当たっています。 この行の差1,327円は、上限で抑えられた額との比較になっているため、 上限がない場合の差とは意味が違います。行ごとに上限の適用が違う点は、表の右から2列目で確認してください。
上乗せ額別|1万円を2万円・3万円にしたら
+1.0%のシナリオを固定して、毎月の上乗せ額だけを変えた結果です。
| 毎月の上乗せ | 改定後の約定返済額 | 改定後の実際の月支出 | 5年後の残債 | 完済 | 総支出 |
|---|---|---|---|---|---|
| なし | 106,339円 | 106,339円 | 2,628万円 | 2056年9月 | 3,738万円 |
| 5,000円 | 105,335円 | 110,335円 | 2,603万円 | 2055年6月 | 3,699万円 |
| 10,000円 | 104,331円 | 114,331円 | 2,578万円 | 2054年3月 | 3,663万円 |
| 20,000円 | 102,322円 | 122,322円 | 2,529万円 | 2051年11月 | 3,600万円 |
| 30,000円 | 100,313円 | 130,313円 | 2,479万円 | 2049年11月 | 3,547万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。総支出には上乗せとして投じた現金も含めています。
上乗せを10,000円から30,000円へ3倍にしても、改定後の約定返済額は 104,331円から100,313円へ4,018円下がるだけです。 対して完済は2054年3月から2049年11月へ、 総支出は116万円少なくなりました。
実際の月支出の列を見ると、上乗せを増やすほど毎月の支出は増えます。 上乗せは「返済額を軽くする手段」ではなく「期間と利息を前倒しで削る手段」として効いている、 という読み方になります。金利が動かない場合の短縮効果と比べると、 上昇シナリオでも短縮の効率そのものは大きく崩れていません。
5年ごとの改定で、効果は後から出てくる
改定は1回で終わりません。+1.0%のシナリオで、5年ごとの改定時点の約定返済額を並べます。
| 改定時点 | 経過 | 上乗せなし | 毎月1万円を上乗せ | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 2031年9月 | 5年目 | 106,339円 | 104,331円 | -2,008円 |
| 2036年9月 | 10年目 | 106,339円 | 104,228円 | -2,111円 |
| 2041年9月 | 15年目 | 106,339円 | 103,911円 | -2,428円 |
| 2046年9月 | 20年目 | 106,340円 | 102,996円 | -3,344円 |
| 2051年9月 | 25年目 | 106,339円 | 101,763円 | -4,576円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。各改定時点の約定返済額を、同じ金利シナリオのもとで並べています。
上乗せなしの側は、金利が上がりきった後は改定しても額がほとんど動きません。 上乗せを続けた側は改定のたびに少しずつ下がり、2051年9月時点の差は4,576円へ広がりました。 最初の改定での差2,008円より広がっています。
つまり毎月の上乗せは、最初の改定に間に合わせる備えというより、 改定を何回か通過するうちに効いてくる性質のものです。 次の改定だけを見て効果を測ると、小さく見積もることになります。
未払利息が出る金利(危険水位)は上乗せで動くか
利息が返済額を超えると、超えた分は未払利息として翌月以降に繰り延べられます (前掲の三菱UFJ銀行「金利タイプの選び方」)。その境目になる金利が危険水位です。 改定直後の時点で計算すると、次のようになりました。
| 上昇幅 | 上乗せなしの水位 | 毎月1万円を上乗せ | 差 |
|---|---|---|---|
| 上昇なし | 4.3% | 4.38% | 0.08ポイント |
| +0.5% | 4.56% | 4.56% | 0.00ポイント |
| +1.0% | 4.84% | 4.84% | 0.00ポイント |
| +1.5% | 5.09% | 5.13% | 0.04ポイント |
| +2.0% | 5.01% | 5.1% | 0.10ポイント |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。危険水位は「残債 × 金利 ÷ 12 が約定返済額を超える金利」として逆算しています。
計算開始時点(残債3,000万円・残り30年・約定返済額91,078円)の水位は3.64%です。 表の数値は改定直後(5年後)のもので、元金が減っているぶん水位は上がっています。 注目したいのは上乗せあり・なしの差で、+1.0%の行では0.00ポイントでした。 改定が入ると残債と約定返済額が同じ方向に動くため、毎月の上乗せは危険水位を押し上げる手段としては効き方が小さいという結果です。
危険水位そのものを動かしたい場合は、まとまった額を期間短縮型で入れた場合の記事を、 改定後の月額を下げたい場合は金利上昇への備えとしての繰上げ返済を併せて見てください。
続けるかどうかの判断基準
見る順番は、まず改定後の約定返済額を払えるかです。 上乗せは約定額をほとんど下げないので、改定で払えない額になるなら、上乗せは解決策になりません。 その場合に検討の対象になるのは、固定への変更、借り換え、返済期間の見直しといった条件そのものの変更です。
次に上乗せ分を止められるかを見ます。毎月の上乗せは一部繰上返済なので、 家計が厳しくなった月は入れない選択ができます。約定返済額と違い、後から減らせる支出です。 逆に言えば、上乗せを前提にした家計は、約定額が上がったときに上乗せを止めることで調整できます。
最後に手元資金を残せているかを見ます。表の総支出では上乗せを続けた側が少なくなりますが、 その分の現金は手元から出ています。繰上返済に回した資金は、原則として後から引き出せません。 生活防衛資金を削って上乗せすると、金利が上がった局面で選択肢が狭くなります。
確認手順
1つ目は返済予定表の確認です。現在の残債、残り期間、適用金利、そして次回の返済額改定の時期を見ます。 改定の起点が分からないと、上の計算をそのまま自分に当てはめられません。
2つ目は繰上返済の条件の確認です。方式(期間短縮型か返済額軽減型か)、手数料、受付の単位と期限を調べます。 三菱UFJ銀行の場合、一部繰上返済の手数料はインターネットが無料、店頭窓口が16,500円(消費税込)と案内されており、 繰上返済日は前回の毎月返済日から次回の前日までの期間内で1回だけ指定できるとされています(前掲ページ)。 毎月入れるか年1回まとめるかは、この条件次第で変わります。
3つ目は、上の条件を自分の数字に差し替えた再計算です。 残債と残り期間を入れ替えるだけで、打ち消せる額も総支出の差も変わります。
よくある質問
毎月1万円の上乗せは、金利上昇への備えになりますか
算出値では、改定後の約定返済額に出る効果は上がり幅の13.2%でした。 月額の上がり方を抑える手段としては効き方が小さく、効果が出るのは総支出(75万円少ない)と 完済時期(2年6ヶ月早い)です。目的が「改定後に払える額にする」なのか 「総額と期間を削る」なのかで、評価が変わります。
上乗せは毎月入れた方がよいですか、年1回まとめた方がよいですか
本ページは年1回まとめて入れる形で計算しています。入金が早いほど利息の計算対象になる残債が早く減るため、 同じ金額なら毎月入れる方が有利に働きます。ただし受付の単位や回数、手数料は金融機関ごとに違うため、 契約先の条件を確認してから決めてください。
金利が上がった後に上乗せを始めるのでは遅いですか
上の表のとおり、効果は改定を重ねるにつれて広がります。2051年9月時点の差は 4,576円で、最初の改定時点の2,008円より大きくなりました。 開始が遅ければ効果は小さくなりますが、残り期間が長いうちは差が出る余地があります。 なお、本ページは金利の予測はしておらず、「もしこの水準まで上がったら」という仮定で計算しています。
まとめ
- +1.0%のシナリオで、改定後の約定返済額は106,339円。毎月1万円の上乗せを続けても104,331円で、打ち消せるのは上がり幅の13.2%
- 上乗せ分を含めた実際の月支出は114,331円で、上乗せなしより7,992円多い
- 効果は総支出(75万円少ない)と完済時期(2年6ヶ月早い)に出る
- 1.25倍の上限に当たる水準では、上乗せあり・なしとも改定後は113,847円で差は0円