毎月10,000円下げる2つの方法と、その代償

物件が決まってから「毎月の返済が予算を10,000円超えている」と分かったとき、打ち手は大きく2つです。借入額そのものを減らすか、返済期間を延ばして1回あたりを薄くするか。どちらでも毎月の数字は同じところに着地しますが、払うものが違います。

4,000万円・30年・0.6%・元利均等・ボーナス返済なしを基準に置くと、毎月返済は121,438円です。ここから10,000円下げるのに必要な量を逆算すると、借入額を減らす案は330万円の減額、期間を延ばす案は3年の延長になります。

案借入額返済期間毎月返済総利息総返済額完済年齢危険水位
現状(予算オーバーのまま) 4,000万円 30年 121,438円 3,717,750円 4,372万円 65歳 3.64%
借入額を減らす 3,670万円 30年 111,419円 3,411,018円 4,011万円 65歳 3.64%
返済期間を延ばす 4,000万円 33年 111,365円 4,100,331円 4,410万円 68歳 3.34%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。完済年齢は35歳で借入、2026年10月に返済開始とした場合。危険水位は借入直後の残債と毎月返済額から逆算した、利息が返済額を超える金利です。

借入額を減らす案の総返済額が小さいのは、当然ながら借りる額そのものが330万円少ないからです。金額の大小だけを並べても比較になりません。この表で見るべきは、330万円の自己資金(または物件価格の見直し)を用意できるかと、期間を3年延ばして増える利息382,581円を受け入れるかという、性質の違う2つの負担です。

下げ幅別|必要な借入減額と必要な期間延長

下げたい額が変わると必要量も変わります。5,000円・10,000円・15,000円の3通りで逆算しました。

下げ幅必要な借入減額減額案の総利息必要な期間延長延長後の期間延長案の総利息延長案の危険水位
5,000円 165万円 3,564,367円 1年6ヶ月 31年6ヶ月 3,908,773円 3.48%
10,000円 330万円 3,411,018円 3年 33年 4,100,331円 3.34%
15,000円 495万円 3,257,649円 4年9ヶ月 34年9ヶ月 4,324,558円 3.19%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入減額は1万円単位に切り下げ、期間延長は目標額を下回る最小の回数を1ヶ月単位で求めています。

必要な借入減額は下げ幅にほぼ比例します。5,000円ごとに165万円ずつという一定のペースです。一方、必要な期間延長は18ヶ月、36ヶ月、57ヶ月でした。最初の5,000円と次の5,000円はどちらも18ヶ月ですが、3回目だけは21ヶ月必要です。期間を延ばすほど返済額に占める元金部分が薄くなり、追加の1年で下がる金額が小さくなっていきます。

総利息は基準ケース(3,717,750円)に対して、191,023円増、382,581円増、606,808円増となります。増加分そのものが191,558円、224,227円と大きくなるため、下げ幅が大きいほど期間延長の代償は加速します。

危険水位は借入減額では動かず、期間延長では下がる

未払利息は、毎月の利息額が毎月返済額を超えたときに発生します。したがって危険水位(=利息が返済額に届く金利)は、残債と返済額の比で決まります。

借入額を減らす案では、残債も返済額も同じ割合で小さくなるため、比が変わりません。表のとおり危険水位は3.64%から3.64%へ、実質的に動きません。対して期間を延ばす案は、残債は4,000万円のままで返済額だけが下がるため、比が悪化します。危険水位は3.34%まで、0.30ポイント下がります。

下げ幅を15,000円にすると、延長案の危険水位は3.19%です。毎月の軽さを期間で買うと、未払利息までの距離がそのぶん縮むという関係になります。

金利が+2ポイント上がったらどちらが重いか

変動金利で、5年かけて一定ペースで+2ポイント上がる(0.6%→2.6%)と仮定します。予測ではなく、耐性を測るための仮定です。5年ルール・125%ルールはありとしました。

案当初返済額初回改定(2031年9月)上限がなければ後ろに回る額最大月額10年後残債総返済額未払利息
現状(予算オーバーのまま) 121,438円 151,797円 161,116円 9,319円 164,304円 3,072万円 5,587万円 発生なし
借入額を減らす 111,419円 139,273円 147,824円 8,551円 150,742円 2,819万円 5,126万円 発生なし
返済期間を延ばす 111,365円 139,206円 151,559円 12,353円 155,371円 3,225万円 5,796万円 発生なし

このサイトの計算エンジンによる算出値です。金利は半年ごとに見直し、返済額は5年ごとに改定、改定後は直前の1.25倍を上限としています。

初回改定は3案とも2031年9月で、いずれも125%上限に当たります。改定後の返済額は借入減額案が139,273円、期間延長案が139,206円で、差は67円しかありません。当初返済額をそろえた結果なので、改定直後の数字では両案の違いはほとんど見えません。

違いが出るのは上限に当たった度合いです。上限がなければ払うべき額は借入減額案が147,824円、期間延長案が151,559円で、後ろに回る額は8,551円に対して12,353円。残債が4,000万円のまま残っている期間延長案の方が、上限で止められた分が大きくなります。結果として最大月額は155,371円と150,742円で4,629円の差、10年後残債は406万円の差がつきます。

なお、この仮定では3案とも未払利息は発生していません。前の節の危険水位(期間延長案で3.34%)は借入直後の残債と返済額に対する値であり、実際には上がりきるまでの5年で元金が減り、2031年9月の改定で返済額も上がるためです。同じ上昇ペースのまま上昇幅だけを探すと、未払利息が出始めるのは期間延長案が+3.32ポイント(金利3.92%)、借入減額案が+3.71ポイント(金利4.31%)でした。順序は危険水位と同じで、期間延長案の方が早く届きます。

「総返済額が少ない方」では決められない理由

基準ケースの表では、借入減額案の総返済額が4,011万円、期間延長案が4,410万円です。差は399万円にもなりますが、この差の大部分は借入額そのものの差330万円です。総返済額の絶対値で比べると、単に「借りない方が払わない」という当たり前の結論にしかなりません。

意味のある比べ方は、利息だけを取り出すことです。借入を330万円減らすと総利息は306,732円減り、期間を3年延ばすと総利息は382,581円増えます。つまり同じ毎月10,000円の軽さに対して、前者は330万円の手元資金または物件価格の見直しを、後者は382,581円の追加利息と完済3年の遅れを支払っています。

どちらが自分に合うかは、330万円を用意できるかどうかで大きく変わります。用意できる場合、この試算では総利息も危険水位も借入減額案の方が良い数字に出ています。用意できない場合は、期間延長が382,581円という値段のついた選択肢として残ります。

期間を延ばせる上限は商品側で決まっている

期間延長は無制限ではありません。【フラット35】の場合、借入期間は「15年(申込みご本人または連帯債務者が満60歳以上の場合は10年)以上で、かつ、次の(1)または(2)のいずれか短い年数(1年単位)が上限」とされ、(1)は「80歳」-「申込時の年齢」、(2)は35年と公表されています(住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件)。

この基準では、35歳で申し込む場合の上限は35年です。本ページの延長案は33年なので範囲内ですが、下げ幅をさらに大きくしたい場合や、申込時の年齢が高い場合は上限に先に当たります。民間金融機関の上限年数や年齢要件は商品ごとに異なるため、期間を前提にした試算をする前に契約先の条件を確認してください。年齢と期間上限の関係は何歳まで組めるか。年齢で決まる期間の上限で別に計算しています。

どちらを選ぶかの判断軸

第一の軸は、330万円の減額が現実的かどうかです。頭金を積む、物件のグレードや広さを見直す、諸費用の一部を現金で払う、といった手段で借入額が下がるなら、毎月の軽さを利息で買う必要はありません。

第二の軸は完済年齢です。35歳借入なら期間延長案の完済は68歳です。定年後に残る返済が何年分になるか、退職金や年金を当てにしなくても回るかを先に見ます。60歳時点の残債を確認したい場合は完済は何歳か。定年後に残る返済額も合わせて見てください。

第三の軸は金利上昇への耐性です。危険水位が0.30ポイント下がることと、上限で後ろに回る額が3,802円大きくなることは、変動金利を選ぶ場合に効いてきます。全期間固定なら適用金利は変わらないため、この2つは問題になりません。ただし当初金利は変動より高いため、必要な期間延長そのものが変わります。

なお、この2択以外に「期間は延ばさず、借入額も減らさず、毎月の予算側を見直す」という選択もあります。管理費や修繕積立金、保険料を含めた住居費全体で予算を組み直すと、10,000円の圧縮先が別に見つかることもあります。

自分の条件で確かめる手順

まず、金融機関から出ている返済予定表または事前審査の結果で、借入額・期間・適用金利・毎月返済額を確認します。ここが1円単位で分かれば、以降の逆算はすべてこの4つから出せます。

次に、下げたい金額を決めます。家計の月次収支から、住居費に回せる上限を先に決めるのが順序です。上限を決めずに「安くなる方」を探すと、期間だけが延びていきます。

そのうえで、借入額を減らす案と期間を延ばす案の両方を計算します。総利息、完済年齢、危険水位の3つを並べ、どれが自分にとって許容できないかを見ます。最後に、期間の上限と条件変更の可否を契約先(または申込先)に確認します。

よくある質問

借入額を減らすのと期間を延ばすのでは、毎月返済額は同じになりますか

同じ金額になるように逆算しています。基準ケースでは借入減額案が111,419円、期間延長案が111,365円で、差は54円です。ただし借入減額は1万円単位、期間延長は1ヶ月単位でしか動かせないため、完全に一致させることはできません。

あとから期間を延ばすことはできますか

借入後に返済期間を変更できるかは、金融機関の条件変更の取り扱いによります。可否、必要書類、手数料、審査の有無は商品ごとに異なるため、契約先への確認が必要です。本ページは借入時点で期間を選ぶ前提の試算です。すでに返済中で毎月返済を据え置きたい場合の必要年数は返済額を据え置くには何年延ばすかで計算しています。

期間を延ばして浮いた分を繰上げ返済に回せば同じになりますか

同じにはなりません。浮いた10,000円を毎月そのまま繰上げ返済に回せるなら、期間を延ばした意味が薄れます。そもそも10,000円を家計から出せないために期間を延ばしているので、その資金が毎月あるかどうかが分かれ目です。繰上げ返済に回せる余裕が実際にあるかは、長く借りて繰上げ返済は損かで別に計算しています。

まとめ

  • 4,000万円・30年・0.6%で毎月10,000円下げるには、借入を330万円減らすか期間を3年延ばす
  • 期間延長案は総利息が382,581円増え、完済は68歳(35歳借入)になる
  • 危険水位は借入減額では3.64%のまま動かず、期間延長では3.34%へ下がる
  • +2ポイント上昇の仮定では改定直後の返済額はほぼ同じで、差は後ろに回る額(8,551円対12,353円)と最大月額に出る
  • 総返済額の絶対値では比べられない。利息382,581円と自己資金330万円のどちらを出せるかで決まる