現金で払う場合と上乗せする場合の基準ケース

借り換え直前の残債2,800万円、借り換え後は金利0.9%・30年・元利均等とします。 諸費用は事務手数料が定率2.2%、抵当権設定の登録免許税、司法書士報酬、抵当権抹消費用、印紙税の積み上げです。 現金で払う場合と、借入額に上乗せする場合を並べます。

項目諸費用を現金で払う諸費用を借入に上乗せ
借入額28,000,000円28,870,048円
諸費用の総額848,000円870,048円
手元から出す現金848,000円0円
毎月返済88,778円91,537円
総利息396万円408万円
総返済額3,196万円3,295万円
控除対象になる残高の割合100%97%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。諸費用の内訳と上乗せ後の借入額は calcRefinanceCosts、返済額は buildSchedule で算出しています。

毎月返済の差は2,759円です。諸費用の総額も、現金払いの848,000円に対して上乗せでは870,048円と22,048円増えています。 定率の事務手数料は借入額に掛かるため、上乗せすると手数料の計算基礎そのものが大きくなるからです。

上乗せしても控除は増えない

借り換え後の借入額が借り換え直前の残高を上回る場合、控除の対象になる年末残高は 「年末残高×(借り換え直前の残高÷新しい借入金の当初金額)」で按分されます。 国税庁は、この計算式と、借り換え後のローンが控除の対象になるための要件を タックスアンサー No.1233(住宅ローン等の借換えをしたとき) で示しています。本ページの条件では、控除対象になる割合は97%です。

この按分があるため、上乗せして残高が増えても控除は増えません。控除の残存8年分を年ごとに並べます。 控除率0.7%、借入限度額3,000万円は data/loan-config.json の値です。

年末残高(上乗せ)按分後の対象額控除額(上乗せ)控除額(現金払い)按分しなかった場合
1年目 2,803万円 2,718万円 190,283円 190,283円 196,195円
2年目 2,718万円 2,636万円 184,514円 184,514円 190,247円
3年目 2,632万円 2,553万円 178,693円 178,693円 184,246円
4年目 2,546万円 2,469万円 172,820円 172,820円 178,190円
5年目 2,458万円 2,384万円 166,893円 166,893円 172,079円
6年目 2,370万円 2,299万円 160,913円 160,914円 165,913円
7年目 2,281万円 2,213万円 154,879円 154,879円 159,692円
8年目 2,192万円 2,126万円 148,791円 148,791円 153,414円
合計1,357,786円1,357,787円1,399,976円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。年末残高は buildSchedule の12ヶ月目ごとの残高、控除額は annualCredit に按分割合を渡して算出しています。

上乗せした場合の控除合計は1,357,786円、現金で払った場合は1,357,787円で、差は1円です。 残高は増えているのに控除は動きません。按分の割合が、増えた残高をちょうど打ち消すためです。 一方、按分がなければ1,399,976円になり、その差42,190円が「上乗せ分は控除の対象外」の実額にあたります。

実質差の内訳|どこで増えているのか

控除がほぼ動かない以上、差は利息と手数料に出ます。上乗せを選んだ場合に何がいくら増えるかを分解します。

項目金額内容
借入に上乗せした諸費用(元本)870,048円定率の事務手数料は借入額に掛かるため、上乗せすると手数料自体も増える
現金で払った場合の諸費用848,000円上乗せしない分、手数料の計算基礎は残債のまま
諸費用そのものの増加22,048円上乗せによって手数料の計算基礎が増えた分
上乗せ分に付く利息(30年)123,033円金利0.9%で30年かけて返すため
控除合計の差1円按分によって上乗せ分が対象外になるため、控除はほぼ変わらない
実質差(合計)145,082円現金848,000円を手元に残す代わりに増える負担

このサイトの計算エンジンによる算出値です。総返済額の差993,081円から、現金で払わずに済んだ848,000円を差し引いた額に、控除差を加えています。

つまり上乗せは、控除を減らす選択ではなく、控除が増えないまま利息と手数料だけが増える選択です。 手元に848,000円を残す代わりに、30年で145,082円多く払う取引だと読めます。 この145,082円を高いと見るか、手元資金を減らさない価値の方が大きいと見るかは、貯蓄の厚みによって変わります。

事務手数料が定率か定額かで差が変わる

上乗せする金額は諸費用の総額そのものなので、手数料の方式で結果が大きく変わります。同じ残債・同じ期間で比べます。

手数料の方式諸費用の総額上乗せ後の借入額控除対象の割合毎月返済の増加按分で受け取れない控除実質差
定率2.2% 870,048円 2,887万円 97% 2,759円 42,190円 145,082円
定額55,000円 288,148円 2,829万円 99% 914円 13,973円 41,888円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。手数料以外の項目(登録免許税、司法書士報酬、抵当権抹消費用、印紙税)は同じ条件で積み上げています。

定額の場合、上乗せ額が小さいため実質差も41,888円にとどまります。定率2.2%では145,082円です。 上乗せの是非を考える前に、諸費用の総額そのものを比べる方が効きます。内訳は 借り換えの諸費用の内訳で確認できます。

残債別|限度額に届いていると按分の影響は見えない

控除には借入限度額があり、本ページの条件では3,000万円です。年末残高がこれを超えている間は、 按分しても対象額が限度額を下回らないことがあります。残債を変えて確かめます。

残債上乗せする諸費用控除対象の割合控除合計の差按分で受け取れない控除実質差
2,000万円 656,640円 96.8% 0円 31,841円 109,521円
2,800万円 870,048円 97% 1円 42,190円 145,082円
3,500万円 1,056,780円 97.1% 0円 18,918円 176,254円
4,000万円 1,190,160円 97.1% 0円 0円 198,485円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。控除の残存年数8年、年収600万円、借入限度額3,000万円を共通の条件にしています。

残債4,000万円では、按分で受け取れない控除は0円です。 8年を通して年末残高が限度額3,000万円を超えており、按分しても対象額が限度額のままだからです。 残債3,500万円は途中で限度額を下回るため、18,918円と中間の値になります。 限度額の下で計算している残債2,800万円の42,190円より小さい点が、この表の読みどころです。 一方で実質差は198,485円と最も大きく、残債が大きいほど諸費用も利息も増えます。 控除の観点では影響が見えなくても、負担そのものは増えている点に注意が必要です。

残り期間別|毎月に出るか総額に出るか

同じ諸費用を上乗せしても、返済期間が違えば出方が変わります。期間が短いほど毎月の増加は大きく、総額の増加は小さくなります。

借り換え後の期間毎月返済の増加総利息の増加控除合計の差実質差
15年 5,169円 60,375円 ±0円 82,423円
20年 3,962円 80,987円 −3円 103,032円
25年 3,240円 101,871円 +1円 123,920円
30年 2,759円 123,033円 +1円 145,082円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。残債2,800万円・金利0.9%で、借り換え後の返済期間だけを変えています。

15年では毎月5,169円、30年では毎月2,759円の増加です。 逆に実質差は82,423円から145,082円へ広がります。控除合計の差はどの期間でも数円の範囲で、按分がある以上ここは動きません。 なお、借り換え後の返済期間が10年未満になると控除そのものが受けられなくなります。期間を短くする場合は 借り換えで期間を短くする場合も合わせて確認してください。

控除の残存年数が長くても結論は変わらない

控除が長く残っているほど上乗せが不利になる、という見立てが成り立つかを確かめます。残存年数だけを変えました。

控除の残存年数控除合計(現金払い)控除合計(上乗せ)按分しなかった場合按分で受け取れない控除実質差
3年 553,490円 553,490円 570,688円 17,198円 145,081円
5年 893,203円 893,203円 920,957円 27,754円 145,081円
8年 1,357,787円 1,357,786円 1,399,976円 42,190円 145,082円
10年 1,636,882円 1,636,881円 1,687,744円 50,863円 145,082円
13年 2,008,470円 2,008,467円 2,070,877円 62,410円 145,084円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。年収600万円・控除率0.7%・借入限度額3,000万円で、控除の残存年数だけを変えています。

按分で受け取れない控除は残存3年で17,198円、残存13年で62,410円と、年数に比例して増えます。 ただし実質差は145,081円から145,084円までほとんど変わりません。 現金払いと上乗せのどちらでも控除額がほぼ同じである以上、両者の差は利息と手数料だけで決まるからです。 「控除が長く残っているから上乗せは避ける」という判断は、この計算では支持されませんでした。

どちらを選ぶかの判断基準

判断の軸は控除ではなく、手元資金です。848,000円を現金で払うと預金がいくら残るか、そこが生活防衛資金を下回らないかを先に見ます。 下回るなら、145,082円は流動性を確保するための費用として説明がつきます。

逆に、払っても十分な預金が残るなら、現金で払う方が総額は小さくなります。 上乗せは借入額を増やすため、審査の対象になる金額も、団信の保障額も、抵当権の設定額も増えます。 また、上乗せ後に繰上げ返済で同額を返しても、すでに支払った事務手数料の増加分22,048円は戻りません。

中間の選び方として、諸費用の一部だけを現金で払う方法を認める金融機関もあります。 取り扱いは商品説明書に書かれているので、上乗せの可否と上限を先に確認してから金額を決めると、比較の手戻りが減ります。

確認する順番

最初に、借り換え候補の諸費用を実額で出します。事務手数料の方式、保証料の有無と旧ローンの戻り、抵当権関係の費用を項目ごとに並べます。 概算のままだと、上乗せ額も按分の割合も決まりません。

次に、控除の残存年数と年末残高を確認します。年末残高が借入限度額3,000万円を超えているなら、按分の影響は控除額に出にくくなります。 住宅ローン控除の計算は借り換えと住宅ローン控除で扱っています。

最後に、上乗せする場合としない場合で、毎月返済と総返済額、手元に残る現金を並べます。 新規借入で諸費用を上乗せした場合の比較は諸費用を借入に含めた場合にあります。 借り換え全体の損得は借り換えは何年目まで得かも合わせて見てください。

諸費用の上乗せについてよくある質問

諸費用を上乗せすると住宅ローン控除は減りますか

本ページの条件では減りませんでした。上乗せ分は按分で対象から外れるため、控除合計の差は1円です。 減るのではなく「増えない」という結果で、増えた残高に対して控除が付かない分が42,190円にあたります。 なお按分の計算式と適用要件は金融機関ではなく税制の話なので、個別の適用可否は税務署にご確認ください。

借り換えても控除の残り期間は延びますか

国税庁は、住宅借入金等特別控除を受けられる年数は居住の用に供した年から一定期間であり、 借換えによって延長されることはないとしています(No.1233)。 返済期間を延ばしても、控除の残存年数は変わらない前提で計算する必要があります。

上乗せした分だけ後で繰上げ返済すれば元に戻りますか

利息の増加は繰上げ返済で抑えられますが、定率手数料が増えた22,048円は戻りません。 また、繰上げ返済で残高が減れば控除額も減るため、控除期間中の繰上げ返済は別の判断が必要です。 考え方は控除期間中の繰上げ返済で扱っています。

まとめ

  • 諸費用870,048円を上乗せすると毎月返済は2,759円増える
  • 上乗せ分は按分で対象外になるため、控除合計の差は1円
  • 按分で受け取れない控除は8年で42,190円
  • 実質差145,082円は、控除ではなく利息と手数料から出ている
  • 判断の軸は控除の残存年数ではなく、手元にいくら現金を残すか