同じ金利シナリオで両方を走らせた結果
比較の条件は残債3,000万円・残り35年・元利均等・2026年10月返済開始です。市場金利は10年かけて+1.5ポイント上がり、その後は横ばいという仮定を置きました。変動は0.6%、3年固定はそれに0.3ポイント上乗せした0.9%から始めます。この金利水準と上乗せ幅はこのページの仮定で、実勢値ではありません。
「変動のまま」は半年ごとに金利が動き、返済額は5年ごとにしか改定されず、改定幅は直前の1.25倍までとしています。「3年固定を繰り返す」は3年ごとにその時点の市場金利で組み直し、そのたびに残債と残り期間から返済額を洗い替える前提です。
| 形 | 適用金利 | 初回返済 | 返済額のピーク | 額が動いた回数 | 10年後の残債 | 総返済額 | 未払利息 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 変動のまま | 0.6%(半年ごとに見直し) | 79,208円 | 100,073円 | 4回 | 2,334万円 | 4,019万円 | 0円 |
| 3年固定を繰り返す | 0.9%(3年ごとに組み直し) | 83,294円 | 101,479円 | 4回 | 2,290万円 | 4,122万円 | 0円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。両方の形に同じ市場金利の推移を与え、返済額の決まり方だけを変えています。
総返済額は3年固定を繰り返す形が103万円多く、初回返済額も4,086円高くなりました。上乗せ幅0.3ポイントを35年間払い続けるためです。一方で10年後の残債は2,290万円と、変動のままの2,334万円より44万円少なくなっています。返済額が早く上がる分、元金も早く減ります。
返済額が動く時期と、1回の増え方
同じ金利の動きでも、返済額が変わる時期は一致しません。基準ケースで返済額が動いた回を、両方の形について時系列に並べます。
| 時期 | 形 | その時の適用金利 | 改定前 | 改定後 | 増加額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2029年10月 | 3年固定 | 1.35% | 83,294円 | 89,139円 | +5,845円 |
| 2031年9月 | 変動のまま | 1.35% | 79,208円 | 89,912円 | +10,704円 |
| 2032年10月 | 3年固定 | 1.8% | 89,139円 | 94,690円 | +5,551円 |
| 2035年10月 | 3年固定 | 2.25% | 94,690円 | 99,893円 | +5,203円 |
| 2036年9月 | 変動のまま | 2.1% | 89,912円 | 100,070円 | +10,158円 |
| 2038年10月 | 3年固定 | 2.4% | 99,893円 | 101,479円 | +1,586円 |
| 2056年9月 | 変動のまま | 2.1% | 100,070円 | 100,069円 | −1円 |
| 2061年9月 | 変動のまま | 2.1% | 100,069円 | 100,073円 | +4円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。返済額が変わらなかった改定時期は表に出ません。最後の2行は端数調整による数円の動きです。
3年固定を繰り返す形では2029年10月に5,845円増えます。変動のままで最初に返済額が動くのは2031年9月で、増加額は10,704円です。先に動くのは固定を組み直す側ですが、1回の段差は変動のままの方が大きくなります。5年分の金利上昇がまとめて返済額に乗るためです。
返済額が動きうる回数は固定を繰り返す方が多い
「固定」という言葉からは返済額が動かない印象を受けますが、組み直すたびに返済額は洗い替わります。35年の間に返済額が変わりうる回数は、変動のままが5年ごとの7回、3年固定を繰り返す形が3年ごとの11回です。固定期間を短くするほど、返済計画を組み直す機会は増えます。
基準ケースで額が動いたのは、どちらも4回でした。ただし内訳は違います。変動のまま4回のうち2回(2056年9月と2061年9月)は端数調整による数円の動きで、金利が上がっている間に大きく動いたのは2回です。3年固定の4回はすべて金利が上がっている間に起きています。市場金利が止まった後の組み直しでは、残債と残り期間から計算し直しても額がほぼ動かないためです。
住宅金融支援機構【フラット35】は固定金利期間選択型のデメリットとして「借入時に固定金利期間終了後の返済額が確定しないので、返済計画が立てにくい」を挙げています(住宅ローンの基礎知識)。固定期間が短いほど、この「確定しない区間」が早く来ます。
どこまで上がると順位が入れ替わるか
上の結果は「10年で+1.5ポイント」という1つの仮定での話です。上昇幅を変えると差はどう動くかを見ます。到達後は横ばいとし、上がりきるまでの年数は10年で揃えています。
| 上昇幅 | 到達金利(変動) | 変動のまま | 3年固定を繰り返す | 差 | 総額が少ない方 |
|---|---|---|---|---|---|
| +0ポイント | 0.6% | 3,327万円 | 3,498万円 | +172万円 | 変動のまま |
| +0.5ポイント | 1.1% | 3,544万円 | 3,698万円 | +153万円 | 変動のまま |
| +1ポイント | 1.6% | 3,775万円 | 3,906万円 | +131万円 | 変動のまま |
| +1.5ポイント | 2.1% | 4,019万円 | 4,122万円 | +103万円 | 変動のまま |
| +2ポイント | 2.6% | 4,276万円 | 4,347万円 | +70万円 | 変動のまま |
| +3ポイント | 3.6% | 4,850万円 | 4,821万円 | −29万円 | 3年固定 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。差は「3年固定を繰り返す形 − 変動のまま」で、プラスは固定側が多いことを意味します。
上昇幅が小さいうちは変動のままの総額が少なく、上がるほど差は縮みます。二分探索で求めた分岐点は+2.82ポイント(到達金利3.42%)で、これを超えると3年固定を繰り返す形の方が総額が少なくなります。上乗せ幅0.3ポイントを払い続ける代償を、金利上昇への先回りが上回る水準です。
+3.0ポイントの行では、変動のままの返済額のピークが126,396円、3年固定が121,978円と逆転しています。この水準では変動のままの改定が1.25倍の上限に2回当たり、上限を超えた分が後ろへ送られます。送られた分は消えず、元金の減りが遅れる形で利息として戻ってくるため、総額では変動のままが多くなります。
固定期間を何年にすると見合うか
上乗せ幅をいくらまで払えるかは、固定期間の長さで変わります。基準ケース(10年で+1.5ポイント)で、変動のままの総返済額4,019万円に並ぶ上乗せ幅を固定期間別に逆算しました。
| 固定期間 | 組み直しの回数 | 見合う上乗せ幅の上限 | その時の固定金利 | 上乗せ0.3ptのときの総額 | 同じ条件のピーク月額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2年 | 17回 | +0.09ポイント | 0.69% | 4,148万円 | 101,867円 |
| 3年 | 11回 | +0.13ポイント | 0.73% | 4,122万円 | 101,479円 |
| 5年 | 6回 | +0.20ポイント | 0.8% | 4,082万円 | 100,885円 |
| 10年 | 3回 | +0.36ポイント | 0.96% | 3,976万円 | 99,229円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。各固定期間で上乗せ幅だけを二分探索し、総返済額が変動のままと並ぶ水準を求めています。
固定期間が長いほど、見合う上乗せ幅は大きくなります。3年なら+0.13ポイントまで、10年なら+0.36ポイントまでが、この仮定での分岐点です。実際の店頭では固定期間が長いほど金利も高いのが通常で、ここで求めた上限は「その期間を固定するために払ってよい上乗せ幅」の目安にあたります。契約先の金利表と並べて、上乗せ幅が上限の内側かどうかを見てください。
なお、この表は上乗せ幅を期間によらず同じ値で比較しています。固定期間ごとの実際の金利差は金融機関により異なり、このページでは確認していません。固定10年と20年の比較では、期間別の金利を仮定として明示したうえで順位が入れ替わる上昇幅を出しています。
未払利息の危険水位はどちらが高いか
未払利息は、月々の利息が返済額を超えたときに発生します。基準ケースの開始時点では、変動のままの危険水位が3.17%、3年固定を繰り返す形が3.33%です。固定側は返済額が高い分、同じ残債でも水位が0.16ポイント高くなります。
上昇幅を変えて逆算すると、変動のままで未払利息が発生するのは+3.94ポイント(到達金利4.54%)以上の上昇です。3年固定を繰り返す形では、計算した+10ポイントまでの範囲で未払利息は発生しませんでした。組み直しのたびに上限なしで返済額を洗い替える前提では、利息が返済額を超える状態が続かないためです。
ここは前提の置き方で結果が変わる箇所です。固定期間の終了後に変動へ移り、5年ルールと1.25倍の上限がかかる形であれば、未払利息が出る余地は残ります。フラット35の解説ページが挙げている未払利息の具体例も、当初3年間固定のあと変動金利を選んだ場合として示されています。固定を選び直せるかどうかは金融機関により異なるため、契約先の商品説明書で確認してください。
何を優先すると選択が変わるか
総返済額だけを見るなら、この仮定では変動のままが103万円少なく、上昇幅が+2.82ポイントを超えたところで順位が入れ替わります。上昇幅の見方で結論が変わるため、自分がどのあたりを警戒しているかを先に決めると判断しやすくなります。
1回の段差の大きさを抑えたい場合は、組み直しの回数が多い形の方が有利になることがあります。基準ケースでは変動のままの最初の段差が10,704円、3年固定が5,845円でした。教育費や車の買い替えと重なる時期に大きな段差を置きたくないなら、小刻みに上がる形の方が家計に乗せやすい場合があります。
逆に、数年先の返済額を確定させておきたい場合は、固定期間中は額が動かないことが利点になります。ただし固定期間が明けた後の返済額は、その時点の金利で決まります。確定しているのは期間中だけだという点を踏まえて比べてください。
自分の条件で確かめる手順
最初に、返済予定表から現在の残債、残り期間、適用金利、次回の返済額改定時期を書き出します。ここが実額でないと、どちらの形も比較になりません。
次に、契約先の金利表で短期固定と変動の差が何ポイントかを確認します。上の表で求めた見合う上乗せ幅の上限と並べると、固定を選ぶ余地があるかどうかが見えます。固定期間が終わった後に固定を選び直せるか、その時の優遇幅がどうなるかも同時に聞いてください。固定期間が明けた後の危険水位も合わせて見ると、明け後の負担感を掴みやすくなります。
最後に、上昇幅を複数置いて試算します。1つの数字で当てにいくより、どの水準までなら家計が持つかを確かめる方が実用的です。上がるペースによる総額の差も、同じ到達金利で結論が変わる例です。
このページで置いた前提
金利水準(変動0.6%、3年固定0.9%)、上乗せ幅0.3ポイント、上昇幅と到達年数は、いずれもこのページの仮定です。実勢値や平均値ではなく、将来の金利の予測でもありません。「もしこの水準になったら」という条件での比較として読んでください。
3年固定を繰り返す形は、固定期間が明けるたびに同じ条件で固定を選び直せるものとして計算しています。実際には、固定期間の終了後に自動的に変動へ移る金融機関と、固定か変動を選び直せる金融機関があり、取り扱いは一律ではありません。当初期間だけ優遇幅が大きい型では、期間終了後に優遇幅が縮小して実質金利が上がる場合もあります。
利息は「残高×年利÷12」の月割り、円未満切り捨てで計算しています。実際の金融機関は日数割のため、数百円から数千円の差が出ます。手数料や団信の条件は含めていません。
短期固定の繰り返しについてよくある質問
3年固定を繰り返せば、金利上昇の影響を避けられますか
避けられるのは固定期間中の3年だけです。組み直す時点の金利が上がっていれば、その時点で返済額に反映されます。基準ケースでは2029年10月から89,139円へ、以後も3年ごとに上がりました。先に延ばしているのは返済額が動く時期であって、上昇そのものではありません。
固定なら5年ルールや1.25倍の上限は関係ありませんか
このページでは、固定を組み直すたびに上限なしで返済額を洗い替える前提で計算しています。固定期間の終了後に変動へ移る場合は、5年ごとの見直しと1.25倍の上限がかかる扱いが一般的です。どちらの扱いになるかは金融機関や契約内容により異なるため、商品説明書で確認してください。
総返済額が少ない方を選べばよいのでしょうか
総返済額は仮定した上昇幅によって順位が入れ替わります。このページの試算では+2.82ポイントが分岐点でした。総額に加えて、返済額のピーク、1回の段差の大きさ、いつ返済額が動くかも並べて見ると、家計に合う方を選びやすくなります。
まとめ
- 同じ上昇シナリオでは、3年固定を繰り返す形の総返済額は変動のままより103万円多い
- 返済額が初めて動くのは3年固定が2029年10月、変動のままが2031年9月
- 1回の段差は変動のままが10,704円、3年固定が5,845円
- 上昇幅が+2.82ポイントを超えると順位が入れ替わる
- 見合う上乗せ幅の上限は固定3年で+0.13ポイント、10年で+0.36ポイント