控除が終わった翌年に出る段差はいくらか
住宅ローン控除は、年末残高に控除率を掛けた額が所得税・住民税から差し引かれる仕組みです。 控除期間が終わると、この戻り分がゼロになります。返済額は変わらないのに、 手取りから出ていく実質の負担だけが増えます。これがここで言う「段差」です。
基準ケースは借入3,000万円・35年・金利0.6%・元利均等・年収500万円、 控除率0.7%・控除期間13年・借入限度額3,000万円です。 毎月返済は79,208円、年間950,496円です。
| 返済年 | 年末残高 | 控除額(年) | 月あたり | 実質の年負担 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 2,923万円 | 204,591円 | 17,049円 | 745,905円 |
| 3年目 | 2,767万円 | 193,677円 | 16,140円 | 756,819円 |
| 5年目 | 2,609万円 | 182,630円 | 15,219円 | 767,866円 |
| 7年目 | 2,449万円 | 171,451円 | 14,288円 | 779,045円 |
| 9年目 | 2,288万円 | 160,136円 | 13,345円 | 790,360円 |
| 11年目 | 2,124万円 | 148,685円 | 12,390円 | 801,811円 |
| 12年目 | 2,042万円 | 142,908円 | 11,909円 | 807,588円 |
| 13年目 | 1,959万円 | 137,096円 | 11,425円 | 813,400円 |
| 14年目 | 1,875万円 | 0円 | 0円 | 950,496円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。返済開始を1月とし、n年目の年末残高を12n回返済後の残高としています。納税額による頭打ちは年収からの概算で反映しています。
13年目の控除額は137,096円、14年目は0円です。 差の137,096円が段差で、月あたりに直すと11,425円になります。 年間返済額950,496円に対して14.4%です。 控除期間の合計では2,225,789円を受け取っていますが、 毎年少しずつ減っていくため、最後に消える額は初年度の204,591円より小さくなります。
段差が「じわじわ」ではなく一度に来る理由
控除額は年末残高に比例するため、返済が進むにつれて毎年少しずつ減ります。 基準ケースでは初年度204,591円から13年目の137,096円まで、 13年かけて67,495円減りました。1年あたりでは 5,625円前後の減りなので、家計ではほとんど気づきません。
ところが控除期間が終わる年だけは、残っていた137,096円が一度に消えます。 毎年の減り方のおよそ24倍の変化が1回で来る計算です。 「じわじわ減ってきたから最後も大したことはない」という感覚と、実際の段差はここでずれます。
しかも控除は年末調整や確定申告を通じて戻る形が一般的なので、 段差が家計に見えるのは控除終了の翌年ではなく、その還付がなくなった時点です。 毎月の返済額は変わらないため、通帳を見ていても気づく手がかりがありません。
年収別|段差の大きさは変わるのか
控除額は「年末残高×控除率」で計算した額と、納税額による上限の小さい方になります。 年収が低いと上限に当たり、計算上の額を受け取りきれないことがあります。 では段差の大きさも年収で変わるのかを、13年目の控除額で見ます。
| 年収 | 控除の上限(概算) | 1年目の控除額 | 13年目=段差 | 月あたり |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 112,644円 | 112,644円(頭打ち) | 112,644円(頭打ち) | 9,387円 |
| 350万円 | 140,433円 | 140,433円(頭打ち) | 137,096円 | 11,425円 |
| 400万円 | 172,263円 | 172,263円(頭打ち) | 137,096円 | 11,425円 |
| 500万円 | 235,845円 | 204,591円 | 137,096円 | 11,425円 |
| 600万円 | 302,210円 | 204,591円 | 137,096円 | 11,425円 |
| 800万円 | 563,586円 | 204,591円 | 137,096円 | 11,425円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。控除の上限は年収から所得税額と住民税からの控除分を概算したもので、本ページの試算上の前提です。実額は源泉徴収票の所得税額や他の所得控除で変わります。
年収350万円以上では、13年目の控除額はいずれも137,096円で同じでした。 年末残高がすでに1,959万円まで減っており、 計算上の控除額が納税額の上限を下回るためです。 年収300万円のケースだけは最終年も上限側に当たり、段差は112,644円にとどまりました。
つまり年収で大きく変わるのは控除期間の前半で、終了時の段差はほぼ同じになります。 年収400万円のケースでは1年目が上限に当たって172,263円でしたが、 最終年は137,096円と、年収800万円のケースと同額です。 控除額が納税額でどう頭打ちになるかは住宅ローン控除はいくら戻るのかで詳しく扱っています。
借入額別|段差はどこまで大きくなるか
段差は最終年の年末残高で決まるので、借入額が大きいほど大きくなります。 ただし借入限度額3,000万円を超える残高は控除の対象外なので、 一定以上では頭打ちになります。
| 借入額 | 毎月返済 | 13年目の年末残高 | 段差(年) | 月あたり |
|---|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 52,805円 | 1,306万円 | 91,397円 | 7,616円 |
| 3,000万円 | 79,208円 | 1,959万円 | 137,096円 | 11,425円 |
| 4,000万円 | 105,611円 | 2,611万円 | 182,794円 | 15,233円 |
| 5,000万円 | 132,014円 | 3,264万円 | 210,000円(限度額で頭打ち) | 17,500円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。期間35年・金利0.6%・元利均等・年収500万円で、借入額だけを変えています。借入限度額は data/loan-config.json の値です。
借入2,000万円なら段差は91,397円、 4,000万円なら182,794円と、残高にほぼ比例します。 ただし借入5,000万円のケースでは13年目の年末残高が3,264万円あり、 借入限度額3,000万円を超えた分は対象外になるため、段差は210,000円で止まります。 限度額に当たるところまで来ると、年間返済額に対する段差の比率は 2,000万円のケースの14.4%に対して 13.3%となり、逆に小さくなります。
控除終了と、金利の改定はどちらの段差が大きいか
変動金利で借りている場合、家計に段差が出る要因は控除終了だけではありません。 5年ルールがある契約では、返済額の改定が5年ごとに来ます。 どちらの段差が大きいのかを、同じ条件で比べます。借入直後に金利が上がり、 その水準が続いたと仮定した場合の、控除期間中に来る1回目の改定額です。
| 上昇幅 | 1回目の改定後の返済額 | 改定による増加(月) | 控除終了の段差(月) | 大きいのは |
|---|---|---|---|---|
| 据え置き | 改定なし | 0円 | 11,425円 | 控除の終了 |
| +0.5% | 87,448円 | 8,240円 | 11,957円 | 控除の終了 |
| +1% | 96,357円 | 17,149円 | 12,502円 | 金利の改定 |
| +1.5% | 99,010円(125%上限) | 19,802円 | 13,291円 | 金利の改定 |
| +2% | 99,010円(125%上限) | 19,802円 | 14,217円 | 金利の改定 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。5年ルール・125%ルールがある前提で、借入直後に金利が上がりその水準が続くと仮定しています。控除終了の段差は各シナリオでの13年目の控除額から算出しました。
金利が据え置きなら、この期間に改定は起きないので段差は控除終了の11,425円だけです。 +0.5%の上昇でも、1回目の改定による増加8,240円は 控除終了の段差11,957円より小さく収まりました。 両者が並ぶのは+0.73%あたりで、 このとき改定による増加は12,203円、控除終了の段差は12,203円です。
金利上昇の話題に比べて控除終了はほとんど語られませんが、 上昇幅が小さいうちは控除終了の方が大きい段差になり得ます。 しかも改定は5年に一度しか来ないのに対し、控除終了は必ず一度は来ます。 金利改定の額そのものは変動金利に上限はないで扱っています。
金利が上がっていた場合、段差はどう変わるか
金利が上がると、5年ルールの下では返済額が据え置かれる代わりに元金の減りが遅くなります。 年末残高が大きいまま残るので、控除額はむしろ増えます。 控除終了の段差と、そのときの実質年負担を上昇幅別に出します。
| 上昇幅 | 13年目の年末残高 | 13年目の控除額 | 13年目の実質年負担 | 14年目の年負担 | 段差(年) |
|---|---|---|---|---|---|
| 据え置き | 1,959万円 | 137,096円 | 813,400円 | 950,496円 | 137,096円 |
| +0.5% | 2,050万円 | 143,478円 | 905,898円 | 1,049,376円 | 143,478円 |
| +1% | 2,143万円 | 150,019円 | 1,006,253円 | 1,156,272円 | 150,019円 |
| +1.5% | 2,279万円 | 159,495円 | 1,134,669円 | 1,294,164円 | 159,495円 |
| +2% | 2,437万円 | 170,608円 | 1,285,280円 | 1,455,888円 | 170,608円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。5年ルール・125%ルールがある前提で、借入直後に金利が上がりその水準が続くと仮定しています。金利の予測ではありません。
上昇幅が大きいほど13年目の年末残高は大きく、控除額も 据え置きの137,096円から+2%の170,608円まで増えました。 段差も同じだけ大きくなります。ただし控除が増える幅 (33,512円)に対して、 13年目の年間返済額は950,496円から1,455,888円へ 505,392円増えています。 控除が増える分は、返済が増える分の6.6%にしかなりません。
「金利が上がっても控除が増えるから相殺される」とはならない、ということです。 控除でどこまで金利上昇を埋められるかは 控除で金利上昇はどこまで相殺できるかで数値を出しています。
控除終了は繰上げ返済を始める起点になるか
控除期間中は、残高を減らすと控除額も減るため、繰上げ返済を待つ判断があり得ます。 控除が終われば、その理由はなくなります。基準ケースで控除終了時点の残債は 19,585,177円、残り期間は22年です。 ここから期間短縮型で繰上げ返済した場合の効果を出します。
| 繰上げ返済額 | 短縮できる期間 | 減る利息 | 返済額1円あたりの利息削減 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 1年2ヶ月 | 137,249円 | 13.7% |
| 200万円 | 2年4ヶ月 | 266,399円 | 13.3% |
| 300万円 | 3年6ヶ月 | 387,569円 | 12.9% |
| 500万円 | 5年10ヶ月 | 606,372円 | 12.1% |
| 控除の累計 223万円 | 2年7ヶ月 | 294,453円 | 13.2% |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。控除終了時点(13年目末)の残債19,585,177円・残り22年・金利0.6%・期間短縮型で計算し、手数料は含めていません。
控除期間中に受け取った2,225,789円をそのまま残しておき、 控除終了と同時に投じた場合、短縮できるのは2年7ヶ月、 減る利息は294,453円でした。 投じた額に対する利息削減は13.2%で、 残り22年を通した数字です。年あたりに直すと 0.6%相当にとどまります。 金利0.6%という水準では、繰上げ返済で得られる利回りもこの程度だということです。
段差そのものを消したい場合は、繰上げ返済で毎月の返済額を下げる方法もあります。 期間短縮型と返済額軽減型の違いは期間短縮型と返済額軽減型どっちで比較しています。
どの数字を見て判断するか
判断の軸は3つです。1つ目は段差の絶対額。基準ケースでは月11,425円で、 これを毎月の黒字で吸収できるかを見ます。2つ目は段差が来る時期。 控除終了は入居年から数えて決まっているので、返済予定表を見なくても年が分かります。 3つ目は他の段差と重なるか。教育費や車の買い替え、金利改定と同じ年に来ると、 1つずつなら吸収できる額でも合計では厳しくなります。
控除が残っている間に借り換えや繰上げ返済を検討する場合は、控除の減少分も損得に入れます。 借り換えで返済期間が10年未満になると控除の対象外になるため、 残り期間が短い段階での借り換えは、金利差だけで判断すると結果が変わります。 この点は借り換えで住宅ローン控除は減るのかで扱っています。
控除が終わる前に確認する手順
まず、自分の控除期間が何年で、あと何年残っているかを確認します。 入居年によって控除率・控除期間・借入限度額が異なるため、 国税庁のタックスアンサーで 自分の入居年の区分を確認するのが確実です。
次に、直近の年末調整または確定申告で実際にいくら戻ったかを見ます。 計算上の額と実際の還付額がずれている場合は、納税額の上限に当たっている可能性があります。 その場合、終了時の段差は計算上の額より小さくなります。
最後に、控除終了年の年末残高を返済予定表で確認し、そこに控除率を掛けます。 それが翌年から消える金額です。月あたりに直して、いまの家計の黒字と並べて見ておくと、 段差が来たときに慌てずに済みます。返済予定表のどこを見るかは 返済予定表の見方にまとめています。
控除終了についてよくある質問
控除が終わると毎月の返済額も上がりますか
いいえ、返済額そのものは変わりません。変わるのは年末調整や確定申告で戻ってくる分です。 基準ケースでは毎月返済79,208円のままで、手取りベースの負担が年137,096円増えます。 変動金利で返済額が上がるのは、あくまで金利の改定によるものです。
段差は控除の初年度の額と同じですか
同じではありません。控除額は年末残高に比例して毎年減るため、 最後に消えるのは最終年の額です。基準ケースでは初年度204,591円に対し、 13年目は137,096円で、67,495円小さくなっています。
控除が終わってから借り換えを考えても間に合いますか
控除の残存を気にせず比較できるという意味では、判断はむしろ単純になります。 ただし残り期間が短いほど金利差で取り返せる総額は小さくなり、諸費用を回収しにくくなります。 何年目までなら諸費用を回収できるかは借り換えは何年目まで得かで 年目別に算出しています。
まとめ
- 控除終了の翌年、手取りベースの負担が年137,096円(月11,425円)増える
- これは年間返済額950,496円の14.4%にあたる
- 段差は最終年の控除額で決まるため、初年度の204,591円より小さい
- 年収350万円以上では段差は同額。差が出るのは控除期間の前半
- 金利が+2%上がっていると控除額は170,608円に増えるが、返済の増加分の6.6%にしかならない