控除で相殺できるのは、上昇幅いくつまでか

借入3,000万円・35年・元利均等・適用金利0.6%、2025年9月返済開始、年収600万円、 2025年入居の省エネ基準適合住宅という条件で計算します。この区分の控除率は0.7%、 借入限度額は3,000万円、控除期間は13年です (国税庁タックスアンサー No.1211-1)。 金利は2026年1月から10年かけて一定ペースで上がる仮定を置き、上昇幅だけを変えます。

上昇幅到達金利控除13年の合計完済までの総返済額の増加控除で相殺できる割合
+0.5% 1.1% 229万円 216万円 106.0%
+1% 1.6% 232万円 446万円 52.0%
+1.5% 2.1% 234万円 688万円 34.0%
+2% 2.6% 236万円 943万円 25.0%
+3% 3.6% 241万円 1,510万円 15.9%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。控除額は各年の年末残高から算出し、上昇幅以外の条件は固定しています。

金利が動かない場合の控除13年分は227万円です。上昇幅が0.5%なら 総返済額の増加216万円に対して106.0%を賄えますが、 +1.0ポイントでは52.0%、+2.0ポイントでは25.0%、 +3.0ポイントでは15.9%まで下がります。控除の総額は上限が決まっている一方で、 金利上昇による増加額には上限がないためです。

賄いきれる上昇幅を逆算する

控除13年分と、完済までの総返済額の増加がちょうど並ぶ上昇幅を二分探索で求めると +0.53%でした。到達金利にすると1.13%です。 このとき総返済額の増加は230万円、控除の合計は230万円で、 ほぼ同額になります。

つまりこの条件では、金利が1.13%あたりを超えて上がると、 控除で戻る額をすべて返済に充てても増加分に届かなくなります。 逆に言えば、上昇がそれ以下にとどまるなら、控除の範囲で吸収できる計算になります。 ここで比べているのは「控除で戻る総額」と「金利上昇で増える総額」であって、 控除がもともと家計の別の用途に使われている場合は、相殺に回せる額はこれより小さくなります。

金利が上がると控除額も増える。ただし桁が違う

変動金利で5年ルールがあると、金利が上がっても返済額は据え置かれ、元金の減りが遅くなります。 控除額は年末残高で決まるため、元金の減りが遅いほど控除額は増えます。 金利上昇が控除にとって有利に働く、という方向の効果です。実額を見ます。

上昇幅控除13年の合計据え置きより増える控除13年間の返済額の増加増えた控除が占める割合
+0.5% 229万円 +20,416円 394,985円 5.2%
+1% 232万円 +40,971円 808,052円 5.1%
+1.5% 234万円 +61,672円 1,239,576円 5.0%
+2% 236万円 +82,509円 1,690,056円 4.9%
+3% 241万円 +131,034円 2,480,186円 5.3%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。控除期間13年(2025〜2037年)の範囲で集計しています。

+2.0ポイントの場合、控除は据え置きより82,509円増えますが、同じ13年間に増える返済額は 1,690,056円です。増えた控除が支払増に占める割合は4.9%にとどまります。 「元金が減らない分だけ控除が増える」のは事実ですが、それは残高に控除率0.7%を掛けた額であり、 残高に金利差を掛けた利息の増加とは桁が違います。5年ルールで元金の減りが遅れることは、 控除がわずかに増えることで埋め合わせられる性質のものではありません。

控除期間だけで切ると、相殺できているように見える

同じ計算を控除期間の13年で区切ると、印象が変わります。13年間に増える返済額と、 その13年で受け取る控除を比べた場合です。

上昇幅13年間の返済額の増加控除13年の合計13年で見た相殺の割合完済までで見た割合
+0.5% 394,985円 229万円 581.0% 106.0%
+1% 808,052円 232万円 286.5% 52.0%
+1.5% 1,239,576円 234万円 188.5% 34.0%
+2% 1,690,056円 236万円 139.5% 25.0%
+3% 2,480,186円 241万円 97.0% 15.9%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。左側は控除期間13年で区切った集計、右側は完済までの集計です。

13年で切ると、+2.0ポイントでも139.5%、+3.0ポイントでも97.0%と、 ほぼ相殺できているように見えます。この見え方には理由が2つあります。 1つは5年ルールで返済額の改定が遅れ、上昇の影響が13年の中にはまだ一部しか出ていないこと。 もう1つは、控除が切れた後に残る負担を数えていないことです。

年ごとに並べると、時間差が見える

+2.0ポイントのケースについて、年間の返済額と控除額を並べます。2025年は9月からの4ヶ月分です。

適用金利年間返済額(据え置き)年間返済額(+2.0)増加額控除額差引
2025年 0.6% 316,832円 316,832円 208,200円 +208,200円
2026年 0.8% 950,496円 950,496円 203,090円 +203,090円
2027年 1% 950,496円 950,496円 198,344円 +198,344円
2028年 1.2% 950,496円 950,496円 193,948円 +193,948円
2029年 1.4% 950,496円 950,496円 189,887円 +189,887円
2030年 1.6% 950,496円 1,022,546円 72,050円 185,643円 +113,593円
2031年 1.8% 950,496円 1,123,416円 172,920円 180,990円 +8,070円
2032年 2% 950,496円 1,123,416円 172,920円 176,615円 +3,695円
2033年 2.2% 950,496円 1,123,416円 172,920円 172,507円 −413円
2034年 2.4% 950,496円 1,123,416円 172,920円 168,655円 −4,265円
2035年 2.6% 950,496円 1,193,686円 243,190円 164,555円 −78,635円
2036年 2.6% 950,496円 1,292,064円 341,568円 159,732円 −181,836円
2037年 2.6% 950,496円 1,292,064円 341,568円 154,781円 −186,787円
2038年 2.6% 950,496円 1,292,064円 341,568円 −341,568円
2039年 2.6% 950,496円 1,292,064円 341,568円 −341,568円
2040年 2.6% 950,496円 1,292,064円 341,568円 −341,568円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。控除額は+2.0ポイントのケースの年末残高から算出しています。

最初の5年は返済額が変わらないため、控除だけが手元に入ります。 2030年8月の改定で返済額が上がり、 2033年に初めて年間の増加額が控除額を上回ります。 そして2037年で控除が終わり、2038年以降は 年341,568円の増加だけが残ります。控除が終わってから完済までは約23年あります。

この形が、控除と金利上昇の関係のいちばん重要な点です。控除は前半に集中し、 金利上昇の負担は後半ほど大きくなります。両者は同じ時期に効いていません。

借入額が大きいほど相殺の割合は下がる

控除の対象になる年末残高には借入限度額(この区分では3,000万円)があります。 借入がそれを超えると控除は頭打ちになる一方、金利上昇の影響は残高に比例して増えます。 +1.0ポイントの上昇で比べます。

借入額毎月返済額初年度の控除額控除13年の合計+1.0での総額増相殺の割合
2,000万円 52,805円 138,800円 152万円 297万円 51.1%
3,000万円 79,208円 208,200円 227万円 446万円 51.1%
4,000万円 105,611円 210,000円 269万円 594万円 45.2%
5,000万円 132,014円 210,000円 273万円 743万円 36.8%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入限度額3,000万円を超える残高は控除の対象外として計算しています。

借入2,000万円と3,000万円は、控除も総額増も残高に比例して増えるため、相殺の割合が 51.1%で並びます。ところが限度額を超える4,000万円では45.2%、 5,000万円では36.8%まで下がります。初年度の控除額が 210,000円で頭打ちになり、そこから先は借入を増やしても控除が増えないためです。 控除額そのものの決まり方は住宅ローン控除はいくら戻るのかで扱っています。

上がり始める時期で結果が変わる

同じ+1.0ポイントでも、上がり始める時期を変えると相殺の割合は変わります。 控除期間中に上がるか、控除が終わってから上がるかの違いです。

上がり始める年控除期間中か控除13年の合計完済までの総額増相殺の割合
2025年 控除期間中 232万円 446万円 52.0%
2030年 控除期間中 228万円 310万円 73.8%
2038年 控除終了後 227万円 144万円 157.7%
2045年 控除終了後 227万円 52万円 435.5%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。上昇幅+1.0ポイント・10年かけて上がる形は固定し、開始時期だけを変えています。

遅く上がるほど相殺の割合は高くなりますが、これは控除が増えたからではありません。 残債が減った後に上がるので、増える利息そのものが小さいためです。 2025年開始では総額増が446万円、 2045年開始では52万円です。 返済後半の金利上昇の効き方は残り15年の金利1%上昇の影響で詳しく見ています。

上昇のペースでも変わる

同じ+1.0ポイントを、何年かけて上がるかを変えた場合です。

上がりきるまで5年後の改定額控除13年の合計完済までの総額増相殺の割合
1年 95,704円 238万円 596万円 39.9%
3年 94,633円 235万円 557万円 42.3%
5年 93,618円 234万円 520万円 44.9%
10年 86,195円 232万円 446万円 52.0%
20年 82,647円 230万円 321万円 71.6%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。到達金利は1.6%で共通、上がりきるまでの年数だけを変えています。

1年で上がりきる場合は39.9%、20年かけるなら71.6%です。 速く上がるほど、高い金利で利息が付く期間が長くなるため、控除では追いつかなくなります。 なお本ページで計算したケースでは、いずれも未払利息は発生していません。 +3.0ポイントのケースだけが2030年8月の改定で125%ルールの上限に当たり、本来101,488円のところ99,010円に抑えられます。

この数字をどう使うか

まず、自分の控除の残り年数を確認します。控除は入居年で期間と限度額が決まっており、 残りが少ないほど、金利上昇に対して使える金額は小さくなります。 次に、控除で戻る額を実際に返済へ回しているかを確認します。 生活費に混ぜてしまっている場合、この記事の「相殺できる割合」は成立しません。

判断が分かれるのは、控除を受けている期間に繰上げ返済をするかどうかです。 繰上げ返済で年末残高を減らすと控除額も減るため、金利水準によって損得が入れ替わります。 この論点は控除中の繰上げ返済は損かで扱っています。 また、返済期間が10年未満になると控除の対象から外れる点にも注意が必要です。国税庁は対象となる借入金の要件として、 償還期間が10年以上の割賦償還の方法により返済されるものであることを挙げ、 この期間は最初の返済の時から返済が終了する時までの期間だとしています。

確認する順番

1つ目に、返済予定表で残債・適用金利・残り期間を確認します。 2つ目に、年末残高等証明書と源泉徴収票で、実際に受け取っている控除額を確認します。 計算上の額と実際の額が違う場合、納税額で頭打ちになっている可能性があります。

3つ目に、次の返済額改定がいつかを確認します。変動金利では改定は5年ごとで、 時期はカレンダーで決まっています。4つ目に、控除が終わる年と、その時点の残債を確認します。 控除が切れた年に返済額の改定が重なると、手取りへの影響が同じ年に二重で出ます。 耐えられる金利の水準を先に出しておくと、 どの上昇幅までを許容範囲と見るかを決めやすくなります。

よくある質問

控除があるうちは金利が上がっても影響が出ないのですか

本ページの条件では、5年ルールにより最初の5年は返済額が変わらず、控除だけが入ります。 ただし返済額が変わらない間も、金利が上がれば利息が増え元金の減りは遅くなります。 +2.0ポイントのケースで年間の増加額が控除額を上回るのは2033年でした。

金利が上がると控除額は減りますか

本ページの計算では減らず、むしろ増えました。控除額は年末残高で決まり、 金利が上がると元金の減りが遅くなって残高が高く残るためです。 ただし+2.0ポイントでも増えるのは82,509円で、同じ期間の支払増の4.9%です。

控除の分を繰上げ返済に回せば金利上昇を打ち消せますか

打ち消せる範囲は上昇幅によります。本ページの条件では、控除13年分をすべて返済に回したとして、 完済までの増加を賄いきれるのは+0.53%までという結果でした。 繰上げ返済で年末残高が減ると控除額も減るため、実際にはこれより小さくなります。

2026年に入居した場合はどうなりますか

本ページは2025年入居・省エネ基準適合住宅の条件で計算しています。 控除率・限度額・控除期間は入居年と住宅の区分で変わるため、 入居年が違う場合は国税庁の資料で自分の年の条件を確認し、ツールに入力し直してください。

まとめ

  • 控除13年分の合計は227万円(この条件・年収600万円の場合)
  • 完済までの総返済額の増加を賄いきれるのは上昇幅+0.53%まで
  • +2.0ポイントでは25.0%、+3.0ポイントでは15.9%しか相殺できない
  • 控除は2037年で終わり、その後も約23年は増加分だけが残る