そもそも何が違うのか
元利均等返済
毎月の返済額が一定になるように組む方式です。内訳は返済が進むにつれて変化し、 最初は利息の割合が大きく、だんだん元金の割合が増えます。 日本の住宅ローンではこちらが主流です。
元金均等返済
毎月の元金充当額が一定の方式です。利息は残高に応じて計算されるので、 残高が減るほど利息も減り、返済額は少しずつ下がっていきます。
3,000万円を35年で借りるなら、毎月の元金は約71,400円で固定。 これに残高分の利息が乗るので、初回がいちばん高く、最終回がいちばん安くなります。
総利息は元金均等の方が少ない
元金均等は序盤から元金を大きく削るため、利息計算の基になる残高が早く減ります。 結果として総利息は元利均等より少なくなります。
実際に計算します。3,000万円・35年・年1.0%で借りた場合です。
| 項目 | 元利均等 | 元金均等 |
|---|---|---|
| 初回の返済額 | 84,685円 | 96,428円 |
| 10年後の返済額 | 84,685円 | 89,344円 |
| 最終回の返済額 | 84,789円 | 71,727円 |
| 総利息 | 5,567,804円 | 5,262,332円 |
| 10年後の残債 | 2,247万円 | 2,143万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。
総利息の差は305,472円。その代わり初回の返済額は 元金均等の方が11,743円高くなります。
差は金利が高いほど、期間が長いほど大きくなる性質があります。 金利が1%を下回る局面では、思ったほど差が出ないこともあります。
初回返済額が高く、借入可能額が下がる
元金均等の弱点は、返済がいちばんきつい時期が最初に来ることです。
金融機関は返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)で審査するので、 初回返済額が高い元金均等は同じ年収で借りられる額が小さくなります。
住宅を買う時期は、教育費や車の買い替えなど他の支出も重なりがちです。 「総利息が少ないから」で選んだ結果、最初の数年の家計が苦しくなるのでは本末転倒です。
変動金利では、リスクの性質が変わる ★
ここが一般的な比較記事であまり触れられない部分です。
5年ルール・125%ルールは、元利均等返済の場合の取り扱いです。 毎月の返済額が一定であることを前提にした仕組みなので、 返済額がもともと毎月変わる元金均等には適用されません。
元利均等(ルールあり)の場合
- 金利が上がっても5年間は返済額が変わらない
- その間、元金の減りが遅くなる(内訳が利息に寄る)
- 金利が大きく上がると未払利息が発生しうる
- 先送りのぶん、総支払額は増える
元金均等の場合
- 金利が上がるとその月から返済額が上がる(据え置きがない)
- 元金は必ず定額で減り続ける
- 未払利息は発生しない
- 先送りが起きないので、総支払額は抑えられる
元金均等では、毎月の元金充当額が契約で決まっています。 利息はそれに上乗せして請求されるので、 「返済額を利息が食い尽くして元金が減らない」という状態が構造的に起こりません。 これが未払利息が発生しない理由です。
極端な例で確かめます。同じ3,000万円・35年で、3年かけて金利が5.0%まで上がった場合です。
| 項目 | 元利均等 ルールあり | 元利均等 ルールなし | 元金均等 |
|---|---|---|---|
| 未払利息 | 発生(最大 1,928,804円) | 発生しない | 発生しない |
| 返済額の最大値 | 226,343円 | 148,156円 | 185,713円 |
| 総返済額 | 69,003,496円 | 60,849,832円 | 54,275,001円 |
計算エンジンによる算出値です。
3列に分けたのは、この差が2つの要因の合計だからです。 真ん中の「元利均等・ルールなし」と比べると、それぞれの効き方が切り分けられます。
- ルールの効果:左と真ん中の差 8,153,664円。 据え置きと125%上限による先送りのぶんです
- 方式の効果:真ん中と右の差 6,574,831円。 元金の減り方の違いによるものです
未払利息が発生するのは元利均等でルールがある場合だけです。 ルールが無ければ元利均等でも発生しません。 つまり未払利息は返済方式そのものではなく、据え置きの仕組みが生む現象だということです。
つまり元金均等は、返済額の変動リスクを引き受ける代わりに、 元金が減らないリスクと未払利息のリスクを負わない方式だと言えます。 この構造は、5年ルールを採用していない金融機関で元利均等を借りる場合と似ています (5年ルールがない銀行はどうなのか)。
住宅ローン控除では不利に働くことがある
控除額は年末残高 × 控除率で決まります。 元金均等は残高が早く減るので、控除額もその分だけ小さくなります。
控除率が適用金利を上回っている間(たとえば適用金利0.6%・控除率0.7%)は、 残高を早く減らすことで減らせる利息より、失う控除の方が大きくなる可能性があります。
ただし、控除が所得税額で頭打ちになっている方には当てはまりません。 この論点は繰上げ返済と住宅ローン控除、どちらを優先するかで 詳しく扱っています。考え方は繰上げ返済とまったく同じです。
そもそも選べないことがある
元金均等を取り扱っていない金融機関があります。 ネット銀行を中心に元利均等のみというところは珍しくありません。
また、取り扱いがあっても、ネット申込みでは元利均等のみで、 元金均等は窓口のみという運用の場合もあります。 金利や諸費用が有利な金融機関を選んだ結果、元金均等が選べないということは普通に起こります。
返済方式は、金融機関選びより優先度が低いと考えておくのが現実的です。 金利差0.2%の方が、返済方式の違いより金額へのインパクトが大きいことがほとんどです。
選び方の整理
元金均等が向いている人
- 初回から高い返済額を払える家計の余裕がある
- 借入可能額に余裕があり、審査で不利になっても困らない
- 元金を確実に減らしたい。未払利息という不確定要素を持ちたくない
- 控除が所得税額で頭打ちになっている(残高を早く減らしても失う控除が無い)
元利均等が向いている人
- 毎月の支出を一定にして家計を組み立てたい
- 借入可能額をできるだけ確保したい
- 控除を満額受け取れていて、残高を早く減らすと控除が目減りする
- 金利上昇時に返済額がすぐ上がるのは避けたい
なお、元利均等で借りて繰上げ返済で調整するという選択肢もあります。 元金均等に近い効果を、自分のペースで作れます。 こちらの方が家計の変化に対応しやすいという考え方は合理的です。
数字で比べる
試算ツールでは返済方式を切り替えて試算できます。 変動金利で元金均等を選ぶと、金利上昇シナリオでも未払利息が発生しないこと、 返済額が毎月変わることが、そのままグラフと表に出ます。