そもそも法律で決まっているルールではない

5年ルール(金利が上がっても5年間は返済額を据え置く)と125%ルール(改定後の返済額は直前の1.25倍まで)は、 金融機関ごとの取り扱いです。法律で義務づけられているものではありません。

つまり同じ「変動金利」でも、金融機関によって取り扱いが違います。 ルールを設けていない金融機関もありますが、この記事では 公式サイトの記載を確認できたものだけを下の表に載せています。 表に無い金融機関については、ご自身の商品説明書や契約書でお確かめください。

また、これらのルールは元利均等返済の場合の取り扱いです。 元金均等返済を選んでいる場合は、そもそも毎月の返済額が変動する方式なので適用されません。

金融機関別の取り扱い(公式サイトで確認できた分)

各行の公式サイトに書かれている内容を読んで確認できたものだけを並べます。 確認できなかった金融機関は載せていません(「無いらしい」で書くと、 ご自身の契約と食い違ったときに取り返しがつかないためです)。

金融機関5年ルール125%ルール 公式サイトの記載出典・確認日
三菱UFJ銀行ありあり 「変動金利かつ元利均等返済で借入の場合には、以下のルールがあります」「返済額は5年ごとに見直しします」「新返済額はそれまでの返済額の125%を超えることはありません」。見直しは「5回目の10月1日を基準とした利率で見直し、その翌年1月以降最初の返済分から変更します」。元金均等返済で借入の場合は両ルールなしと明記。 返済方法について
2026-11-05 確認
三井住友銀行ありあり 「変動金利期間中に、5年ごとの返済額見直しを行う場合、変更後の返済額は、現在の返済額の1.25倍以内とします。(元利均等返済方式)」。変更前100,000円なら変更後は125,000円以内という例を掲載。 用語解説「前回返済額×1.25」
2026-11-05 確認
auじぶん銀行ありあり 「お借入後の返済額は、お借入後5回目の10月1日を基準日とする借入金利の見直しを行うまで一定のままとします」「再計算される新しい返済額は、再計算前の返済額の125%を超えることはありません(これを125%ルールといいます)」。金利引下げで返済額が減る場合は制限なし。元金均等返済については「返済額は、利息の変動額と同額変動します。その変動額に上限はありません」と記載。 金利変動リスク等に関する説明(PDF)
2026-11-05 確認

金融機関の取り扱いは変更されることがあります。上の表は確認日時点の記載で、 最新の内容はリンク先と借入先の商品説明書でご確認ください。

確認できた3行はいずれも両方のルールがあり、 どちらも変動金利かつ元利均等返済のときだけの取り扱いでした。 三菱UFJ銀行は元金均等返済には両ルールが無いと明記しています。 auじぶん銀行は元金均等返済について「返済額は、利息の変動額と同額変動します。その変動額に上限はありません」としており、 据え置きも上限も無い扱いです。 元金均等返済を選んでいる場合は、ルールの有無を調べる前に 自分がそもそも対象外であることを押さえておけば済みます。

起点は「借入から5年後」ではなく、10月1日の経過回数

確認した2行は、起点の数え方が一致していました。どちらも 「5回目の10月1日」を見直しの基準に置いています。 三菱UFJ銀行は「10月1日を1回経過する毎に1年経過したものとみなします」と書いていて、 借入月からの満5年ではありません。 たとえば9月に借りた場合、翌月の10月1日が1回目として数えられます。

一方で、新しい返済額が反映される月は行によって違いました。 三菱UFJ銀行は「5回目の10月1日を基準とした利率で見直し、その翌年1月以降最初の返済分から変更します」、 auじぶん銀行は新返済額が「12月の約定返済日の翌日から」適用されるとしています。 同じ10月1日を起点にしても、実際に引き落とし額が変わる月は1か月ほどずれます。

起点を「借入から5年後」と取り違えると、次の改定時期の見当が1年近くずれることがあります。 借入年月からの改定時期は借入年月別の改定時期の早見表で、 改定後の金額は試算ツールで確かめられます。

ルールが無いと何が起きるか

金利が上がると、その都度(通常は半年ごとの見直しに合わせて)返済額が改定されます。 据え置き期間がないので、金利上昇がすぐ家計に反映されます。

その代わり、元金は予定どおり減り続けます。ここが重要です。

利息が返済額を超えるという状態が起きないため、未払利息は発生しません。 最終回に想定外の一括請求が来ることもありません。

実際に計算して比べます。3,000万円・35年・当初1.0%で、 5年かけて金利が3.0%まで上がった場合の推移です。

時点適用金利 返済額
ルールあり
残債
ルールあり
返済額
ルールなし
残債
ルールなし
2026年4月1% 84,685円2,994万円 84,685円2,994万円
2027年4月1.4% 84,685円2,926万円 90,276円2,924万円
2031年2月2.8% 84,685円2,764万円 110,224円2,687万円
2031年3月2.8% 105,856円2,760万円 110,224円2,683万円
2036年4月3% 119,496円2,514万円 113,097円2,380万円
2046年4月3% 119,496円1,723万円 113,097円1,630万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。

ルールありは最初の5年間、返済額が動きません。その代わり残債の減りが遅れます。 ルールなしは金利が上がるたびに返済額が上がりますが、残債は着実に減っていきます。

ルールがある方が「損」になる理由

5年ルールは支払いを減らす制度ではありません。先送りする制度です。

据え置き期間中、金利が上がっても返済額は変わりません。しかし利息は残債に対して発生し続けるので、 増えた利息のぶん元金に回る額が減ります。元金の減りが遅れれば、その後の利息計算の基になる残債が大きいままです。

結果として、同じ金利の動き方をしてもルールがある方が総支払額は多くなります。 猶予を得る代わりに、利息を余分に払っているという構造です。

先ほどと同じ条件で、完済までの総額を比べます。

項目ルールありルールなし
総返済額 47,315,990円 46,558,369円
返済額の最大値 119,496円 113,097円
差額 ルールありの方が 757,621円 多い

3,000万円・35年・当初1.0%、5年で3.0%まで上昇した場合。計算エンジンによる算出値です。

注目したいのは返済額の最大値です。 ルールありが119,496円、ルールなしが113,097円。 ルールがある方が、最終的にはむしろ高い返済額に到達します。

直感に反するかもしれませんが、理由は単純です。125%ルールが抑えるのは 1回の改定でどれだけ上がるかであって、最終的にいくらになるかではありません。 据え置いた5年間で元金が減っていない分、後になってより多くを返す必要が出ます。

総返済額も757,621円多くなります。ルールが与えるのは 「上昇のペースを緩やかにする」ことだけで、 水準そのものを下げてはいません。これが「猶予の対価」です。

それぞれの向き不向き

ルールがある方が向いている人

  • 返済額が急に上がると家計が回らない。とにかく変動幅を抑えたい
  • 数年内に収入が増える見込みがあり、それまでの時間を稼ぎたい
  • 先送りのぶん総支払額が増えても、月々の予測可能性を優先したい

ルールが無い方が向いている人

  • 返済額が上がっても対応できる家計の余裕がある
  • 元金を予定どおり減らしたい。先送りしたくない
  • 未払利息という不確定要素を持ちたくない

どちらが優れているという話ではありません。 「上がったときに払えるか」で決まります。

いちばん危ないのは「ルールがあると思い込んでいる」場合

ルールの有無そのものより問題なのは、自分の契約がどちらか把握していないことです。

ルールがあると思い込んでいる人がルール無しの契約を結んでいた場合、 金利上昇の翌々月あたりに返済額が上がって驚くことになります。 逆にルールがあると、返済額が変わらないので「自分には影響がなかった」と誤解し、 元金が減っていない事実に気づかないまま数年が過ぎます。

ご自身の契約がどちらかは、次のどれかで確認できます。

  • 金銭消費貸借契約書
  • 商品説明書・重要事項説明書
  • 金融機関のマイページやFAQ

「返済額の見直し」「元利金の返済額の変更」といった見出しの項目に、 5年ごとの改定や125%の上限について書かれています。

これから借りる・借り換える場合の考え方

ルールの有無だけで金融機関を選ぶ必要はありません。優先順位としては、 金利・諸費用・団信の内容の方が金額へのインパクトが大きいのが普通です。

ただし、金利上昇局面ではルールの有無が体感に大きく効きます。 条件が拮抗しているなら、「返済額がすぐ上がる方が困るか、元金が減らない方が困るか」で 決めるのは合理的な選び方です。

まとめ

  • 5年ルール・125%ルールは法律ではなく、金融機関ごとの取り扱い
  • 取り扱いは金融機関ごとに違う。確認できた3行はいずれも両ルールあり(元金均等返済は対象外)
  • ルールが無いと返済額はすぐ上がるが、未払利息は発生しない
  • ルールがあると変動は緩やかだが、先送りのぶん総支払額は増える
  • 危険なのはルールの有無ではなく、自分の契約を把握していないこと

ルールの有無を切り替えた試算は試算ツールでできます。 仕組みそのものは返済額が変わらないのに元金が減らない理由で詳しく扱っています。