試算の条件と、固定期間別の金利の置き方

借入額3,000万円、返済期間35年、元利均等、ボーナス返済なし、返済開始は2026年10月とします。金利は本ページの仮定で、変動0.6%、10年固定1.3%、20年固定1.8%、全期間固定2%と置きました。実際の金利は金融機関ごとに違い、同じ銀行でも固定期間ごとの差の付け方は変わります。ここで見るのは金額そのものではなく、固定期間の長さで何が変わるかという構造です。

固定期間が明けた後は変動金利へ移るものとして計算しています。住宅金融支援機構【フラット35】は固定金利期間選択型のデメリットとして「借入時に固定金利期間終了後の返済額が確定しないので、返済計画が立てにくい」を挙げています。明けた後に何が起きるかは、選ぶ時点では確定していません。だからこそ、複数の仮定で先に計算しておく意味があります。

固定期間が終わったあと、申し出がなければ変動へ移る金融機関もあれば、改めて固定と変動を選び直せる金融機関もあります。取り扱いは契約先によって異なるため、契約書と商品説明書で確認してください。明けた後の扱いを詳しく見る場合は固定期間が明けたら何が起きるかを参照してください。

金利が動かなかった場合の総返済額

まず、変動金利が0.6%のまま完済まで動かなかった場合です。この条件では固定期間が長いほど当初金利が高いぶん、総返済額も素直に増えます。

タイプ当初の毎月返済固定が明ける時期総利息総返済額
変動 79,208円 327万円 3,327万円
10年固定 88,944円 2036年10月 520万円 3,520万円
20年固定 96,327円 2046年10月 900万円 3,900万円
全期間固定 99,378円 1,174万円 4,174万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。変動金利が0.6%のまま動かないという仮定で、固定期間終了後も同じ金利が続くものとして計算しています。

10年固定と20年固定の差は380万円です。当初金利の差0.5%が、10年ぶん長く効くためにこれだけの金額になります。金利が上がらない世界では、固定期間を延ばすほど支払いが増えるという当たり前の結果になります。判断が難しくなるのは、ここに金利上昇の仮定を入れてからです。

上昇幅別|総返済額と振れ幅

次に、変動金利が10年かけて一定のペースで上がる仮定を置きます。固定期間中はその影響を受けず、明けた月に当時の水準へ移ります。

タイプ据え置き+0.5%+1%+2%+3%振れ幅
変動 3,327万円3,544万円3,775万円4,276万円4,850万円 1,523万円
10年固定 3,520万円3,673万円3,832万円4,166万円4,537万円 1,017万円
20年固定 3,900万円3,960万円4,021万円4,147万円4,279万円 379万円
全期間固定 4,174万円4,174万円4,174万円4,174万円4,174万円 0万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。上昇幅は変動金利に対するもので、10年かけて一定ペースで上がる仮定です。振れ幅は据え置きと+3%の総返済額の差です。

読み方が2通りあります。ひとつは横方向で、上昇幅が大きくなるほどどのタイプも総額が増えるという当然の動きです。もうひとつは右端の振れ幅で、こちらが固定期間の長さを選ぶ意味そのものです。変動の1,523万円に対し、10年固定は1,017万円、20年固定は379万円、全期間固定は0円です。固定期間を延ばすというのは、総額を確実に下げる行為ではなく、総額が動く幅を縮める行為だとこの列が示しています。

順位が入れ替わる上昇幅

どこまで上がったら順位が入れ替わるのかを、上昇幅を二分探索して逆算しました。表の値は、左のタイプの総返済額が右のタイプを上回り始める上昇幅です。

比較入れ替わる上昇幅入れ替わった後に総額が少ない方
変動 と 10年固定 +1.36% 10年固定
変動 と 20年固定 +1.67% 20年固定
変動 と 全期間固定 +1.8% 全期間固定
10年固定 と 20年固定 +1.91% 20年固定
10年固定 と 全期間固定 +2.02% 全期間固定
20年固定 と 全期間固定 +2.2% 全期間固定

このサイトの計算エンジンによる算出値です。10年かけて一定ペースで上がる仮定のもとで、総返済額が等しくなる上昇幅を0.001ポイント刻みで探索しています。

変動が10年固定に追い抜かれるのが+1.36%、10年固定が20年固定に追い抜かれるのが+1.91%、20年固定が全期間固定に追い抜かれるのが+2.2%です。固定期間が長いタイプほど、有利になるために必要な上昇幅が大きいという並びになります。逆に言えば、上昇が+1.36%に届かない範囲なら、この試算では固定期間を延ばすほど総額は増えます。「長く固定した方が安心」という言い方は総額の話ではなく、次の見出しで見る振れ幅と返済額の話です。

固定が明けた月に返済額はどう変わるか

固定期間選択型の山場は、固定が明けた月です。この月に返済額が残債・残り期間・その時点の金利で洗い替えられます。10年固定は2036年10月、20年固定は2046年10月が該当します。

タイプ上昇幅明けた時の金利明ける直前の残債明ける前の返済額明けた後の返済額125%上限
10年固定 据え置き 0.6% 2,277万円 88,944円 81,756円 当たらない
10年固定 +0.5% 1.1% 2,277万円 88,944円 86,851円 当たらない
10年固定 +1% 1.6% 2,277万円 88,944円 92,142円 当たらない
10年固定 +2% 2.6% 2,277万円 88,944円 103,304円 当たらない
10年固定 +3% 3.6% 2,277万円 88,944円 111,180円 当たる(115,221円→111,180円)
20年固定 据え置き 0.6% 1,519万円 96,327円 88,237円 当たらない
20年固定 +0.5% 1.1% 1,519万円 96,327円 91,553円 当たらない
20年固定 +1% 1.6% 1,519万円 96,327円 94,947円 当たらない
20年固定 +2% 2.6% 1,519万円 96,327円 101,971円 当たらない
20年固定 +3% 3.6% 1,519万円 96,327円 109,305円 当たらない

このサイトの計算エンジンによる算出値です。固定期間中は返済額を改定せず、明けた月に残債・残り期間・その時点の金利で元利均等を再計算しています。

10年固定では、上昇幅が+2%までなら125%上限に当たりません。+3%のときだけ洗い替えの計算値115,221円に対して上限が効き、111,180円に抑えられます。差額4,041円は消えるのではなく、後ろの返済へ回ります。一方の20年固定は、この表の範囲ではどの上昇幅でも上限に当たりません。明ける時点で残債が1,519万円まで減っており、洗い替え後の返済額が元の返済額の1.25倍まで届かないためです。

見落としやすいのは、据え置きの行です。金利が上がらなければ、明けた月に返済額は下がります。10年固定なら88,944円から81,756円へ、20年固定なら96,327円から88,237円へ動きます。固定が明ける=返済額が上がる、と決まっているわけではありません。

明けた直後の危険水位(未払利息)

未払利息は、毎月の利息が返済額を超えたときに発生します。固定期間中は金利が動かないので発生しませんが、明けて変動になった後は5年ルールで返済額が据え置かれる期間ができ、その間に金利が上がると起こり得ます。明けた直後の残債と返済額から、その水位を逆算しました。

タイプ基準になる時点その時点の残債その時点の返済額未払利息が出る金利
変動 2026年10月 3,000万円 79,208円 3.17%
10年固定 2036年10月 2,277万円 81,756円 4.31%
20年固定 2046年10月 1,519万円 88,237円 6.97%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。変動は返済開始時点、固定は明けた月の残債と返済額で計算しています。明けた時点の変動金利が0.6%だった場合の値です。

変動で借りた場合は3.17%、10年固定が明けた時点では4.31%、20年固定が明けた時点では6.97%です。固定期間が長いほど、変動に移る時点で残債が減っており、水位は高くなります。なお本ページで計算した4タイプ×5通りの上昇幅の全ケースで、未払利息は発生しませんでした。フラット35も未払利息について「元金は全く減らず、未払利息が積み上がっていく可能性があります」と説明していますが、それは返済額が据え置かれたまま金利が水位を超えた場合の話です。仕組みの詳細は5年ルールで実際に起きていることで扱っています。

上昇のペースで結論が変わる

同じ「+2%」でも、何年かけて上がるかで結論は動きます。動くのは変動の総額で、上昇が速いほど変動が不利になり、遅いほど変動が有利に戻ります。

到達までの年数変動10年固定20年固定全期間固定
3年 4,562万円4,166万円4,147万円4,174万円
5年 4,469万円4,166万円4,147万円4,174万円
10年 4,276万円4,166万円4,147万円4,174万円
20年 4,004万円4,060万円4,147万円4,174万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。変動金利が+2%まで上がる点は共通で、そこへ到達するまでの年数だけを変えています。

3年で到達する場合、変動は4,562万円で4タイプの中でいちばん多くなります。20年かけて到達する場合は4,004万円となり、10年固定の4,060万円より少なくなります。同じ上昇幅でも、変動が上がりきる前に元金を減らせた分だけ結果が変わるためです。20年固定と全期間固定は、この4通りのペースで総額が1円も動きません。固定期間中の返済がペースの影響を受けず、20年固定が明ける時点ではどのペースでも上がりきっているためです。10年固定だけは20年かけて上がる場合に4,060万円へ下がり、明ける時点でまだ上がりきっていないことが総額に出ています。なお、3年で到達する場合に総額がいちばん少ないのは20年固定の4,147万円で、全期間固定の4,174万円より少なくなります。固定期間は長ければ長いほど良いという単純な並びにはなりません。

毎月返済額の最大値で見ると何が違うか

総額ではなく、完済までに毎月返済額がいくらまで上がるかで見ると、固定期間の長さの意味がもう一段はっきりします。

変動金利が据え置きなら、毎月返済額の最大値は変動が79,215円、全期間固定が99,378円で、固定の方が高いまま完済まで変わりません。ところが+3%まで上がる仮定では、最大値は変動126,396円、10年固定116,773円、20年固定109,305円、全期間固定99,378円となり、順序が逆になります。

つまり固定は「毎月の支払いを安くする選択」ではなく、「上がった場合の上限を今の時点で決めておく選択」です。家計に置き換えるなら、当初の20,170円の差を毎月払い続けることで、最大値が27,018円低く固定される、という取引になります。この差額を許容できるかどうかが、固定期間の長さを決める実際の判断材料になります。

10年か20年かを決める判断基準

この試算からは、次の3点で切り分けられます。第一に、上昇幅の見立てです。上昇が+1.91%に届かないと考えるなら、10年固定の方が総額では少なく済みます。第二に、明ける時期に何が起きているかです。10年固定なら2036年10月、20年固定なら2046年10月に返済額が洗い替えられます。教育費のピークや役職定年と重なる時期に洗い替えが来るなら、その時点の変動幅を小さくしておく意味は総額とは別にあります。

第三に、明けた時点の残債です。10年固定は2,277万円、20年固定は1,519万円で、残債が小さいほど同じ金利上昇に対する返済額の増え方は小さくなります。20年固定が125%上限に当たらないのも、危険水位が6.97%まで上がるのも、この残債の差から来ています。固定期間の長さは、変動に移る時点の残債をいくらにしておくかの選択でもあります。

なお、上昇幅を当てにいく必要はありません。予測ではなく、+1%と+2%の2通りで毎月返済額を出し、どちらでも家計が回るかだけを確認する方が実用的です。回らない方の条件が見つかったら、そこが自分の警戒ラインになります。

契約前に確認しておくこと

最初に、固定期間別の金利を契約先の金融機関で確認します。本ページの1.3%・1.8%・2%はあくまで仮定で、実際の差は金融機関によって大きく違います。特に当初期間だけ優遇幅が大きい商品では、固定期間終了後に優遇幅が縮む場合があるため、明けた後に適用される金利がどう決まるかを商品説明書で確認します。

次に、固定期間が終わった後の手続きを確認します。申し出がなければ変動へ移るのか、改めて選び直せるのか、選び直すときに手数料がかかるのかは契約によって異なります。明ける時期が近づいてから調べるのではなく、選ぶ時点で確認しておくと、2036年10月や2046年10月に慌てずに済みます。

最後に、5年ルールと125%ルールの有無を確認します。この2つは法律ではなく商品ごとの取り扱いで、無い金融機関もあります。無い場合は改定のたびに返済額がそのまま反映されるため、上限に守られない代わりに未払利息も出にくくなります。違いは5年ルールがない銀行との違いにまとめています。

固定期間の長さについてよくある質問

10年固定と20年固定では、どちらが総返済額は少なくなりますか

この試算の条件では、変動金利の上昇が+1.91%を超えるかどうかで入れ替わります。超えなければ10年固定、超えれば20年固定の方が総返済額は少なくなります。ただし固定期間別の金利の差が本ページの仮定と違えば、この分かれ目も動きます。

固定期間が明けると返済額は必ず上がりますか

上がるとは限りません。この試算では、変動金利が0.6%のまま動かなかった場合、10年固定は明けた月に88,944円から81,756円へ下がります。明けた時点の金利と残債で洗い替えられるため、金利の動き方によって上下どちらにもなります。

固定期間が長い方が、金利上昇には強いということですか

総返済額の振れ幅という意味では、固定期間が長い方が小さくなります。この試算では上昇幅0〜+3%での振れ幅が変動1,523万円、20年固定379万円でした。ただし金利が上がらなかった場合の総返済額は、20年固定の方が変動より573万円多くなります。強い・弱いではなく、幅を狭める代わりに水準を上げる取引だと見た方が実際に近いです。

まとめ

  • 金利が動かなければ、10年固定と20年固定の総返済額の差は380万円で、20年固定の方が多い
  • 10年かけて上がる仮定では、+1.91%を超えると20年固定の方が総額で少なくなる
  • 総返済額の振れ幅は変動1,523万円、10年固定1,017万円、20年固定379万円、全期間固定0円
  • 明けた時点の残債は10年固定2,277万円、20年固定1,519万円で、危険水位は4.31%と6.97%