必要な年収は「改定後の返済額 ÷ いまの返済額」で決まる

返済負担率は「年間返済額 ÷ 年収」です。返済額が上がっても負担率を同じに保ちたいなら、 年収を返済額と同じ割合だけ増やせばよいことになります。 つまり必要な昇給率は、改定後の返済額がいまの返済額の何倍になるかで決まります。

モデルケースの返済額は79,208円、年収500万円に対する返済負担率は19%です。 ここを出発点に、金利が上がったあとの1回目の改定額から必要年収を逆算します。 変動金利では金利が上がってもすぐには返済額が変わらないため、 必要な昇給には改定までの猶予があるという点も同時に見ていきます。

上昇幅別|1回目の改定と必要年収

金利が3年かけて上がるとして、上昇幅ごとに1回目の返済額改定を計算しました。 改定は2031年9月、借入から5年後です。

上昇幅改定後の金利改定後の返済額必要年収必要な昇給率年あたり
+0.5% 1.1% 86,620円 547万円 9.4% 1.81%
+1% 1.6% 94,545円 597万円 19.4% 3.6%
+1.5% 2.1% 99,010円(上限) 625万円 25% 4.56%
+2% 2.6% 99,010円(上限) 625万円 25% 4.56%
+2.5% 3.1% 99,010円(上限) 625万円 25% 4.56%
+3% 3.6% 99,010円(上限) 625万円 25% 4.56%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入3,000万円・35年・元利均等・5年ルールと125%ルールありで計算し、必要年収は改定前の返済負担率19%を保つ金額としています。

+1.5%以上では、上昇幅を広げても改定後の返済額が99,010円で止まっています。 125%ルールにより、1回の改定でいまの返済額の1.25倍を超えられないためです。 その結果、1回目の改定で必要な昇給率は25%が上限になります。 +3%でも+1.5%でも、この時点で求められる年収は同じ625万円です。

125%ルールがない場合との差

同じ条件で125%ルールがない前提にすると、改定額は上限で止まりません。 必要年収がどこまで変わるかを比べました。

上昇幅改定額(上限あり)改定額(上限なし)必要年収(上限あり)必要年収(上限なし)
+1% 94,545円 94,545円 597万円 597万円
+1.5% 99,010円 102,998円 625万円 650万円 25万円
+2% 99,010円 111,994円 625万円 707万円 82万円
+2.5% 99,010円 121,550円 625万円 767万円 142万円
+3% 99,010円 130,859円 625万円 826万円 201万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。has125Cap の有無だけを変え、他の条件は同じにしています。

+3%では、上限がないと必要年収は826万円、 上限があると625万円で、差は201万円です。 ただしこれは1回目の改定時点を切り取った差で、支払う総額が減るという意味ではありません。 上限で払わずに済んだ分は元金の減りが遅れる形で後ろに回ります。 5年ルールと125%ルールの仕組みは 住宅金融支援機構【フラット35】の解説 でも、返済額の見直しは5年ごと、見直し後は変更前の1.25倍が限度とされているケースが一般的と説明されています。 ルールの有無そのものは5年ルールがない銀行との違いで扱っています。

頭打ちは1回目だけ|改定を重ねた場合

上限に当たった分は消えるわけではありません。次の改定でまた1.25倍まで上げられるため、 必要年収は改定のたびに階段状に伸びます。同じ上昇シナリオで、5年後・10年後・15年後の 約定返済額から必要年収を出しました。

上昇幅時点約定返済額必要年収必要な昇給率年あたり
+1% 2031年9月(5年後) 94,545円 597万円 19.4% 3.6%
2036年9月(10年後) 94,545円 597万円 19.4% 1.79%
2041年9月(15年後) 94,545円 597万円 19.4% 1.19%
+2% 2031年9月(5年後) 99,010円 625万円 25% 4.56%
2036年9月(10年後) 115,756円 731万円 46.1% 3.87%
2041年9月(15年後) 115,755円 731万円 46.1% 2.56%
+3% 2031年9月(5年後) 99,010円 625万円 25% 4.56%
2036年9月(10年後) 123,762円 781万円 56.2% 4.56%
2041年9月(15年後) 149,600円 944万円 88.9% 4.33%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。各時点の約定返済額を読み取り、改定前の返済負担率を保つ年収を逆算しています。

+1%では5年後の94,545円で止まり、10年後も15年後も同じです。 上昇分が1回の改定で吸収しきれる幅なので、必要年収も597万円のまま動きません。 一方+2%では、5年後の必要年収625万円に対し、 10年後は731万円へ上がります。 +3%では15年後に944万円、 いまの年収の88.9%増が必要になります。 年あたりに直すと4.33%で、1回目だけを見た4.56%と大きくは変わりません。 つまり+3%のシナリオでは、必要な昇給ペースは頭打ちにならず、 同じペースを続ける期間が延びる形になります。 1回の改定で吸収しきれる+1%とは、必要な年数が違うという読み方になります。

なお+3%のシナリオでは、2029年9月に未払利息が発生し、 累計174,552円になります。返済額が上限で抑えられている間に、 利息が返済額を超えた分が繰り延べられるためです。 発生の時期と金額は未払利息はいつ発生していくらかで詳しく扱っています。

年収別|必要な昇給率は変わらない、変わるのは実額

+1%のケースで、いまの年収を変えて必要年収を計算しました。

現在の年収改定前の負担率改定後の負担率必要年収必要な増加額
400万円 23.8% 28.4% 477万円 77万円
500万円 19% 22.7% 597万円 97万円
600万円 15.8% 18.9% 716万円 116万円
700万円 13.6% 16.2% 836万円 136万円
800万円 11.9% 14.2% 955万円 155万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。返済額79,208円が94,545円へ改定される前提で、年収だけを変えています。

必要な昇給率はどの年収でも19.4%で同じです。 返済額の増え方が年収と無関係だからで、変わるのは必要な増加額の実額だけです。 違いが出るのは負担率の水準の方で、年収400万円では改定後に28.4%、 年収800万円では14.2%になります。 同じ昇給率が必要でも、出発点の負担率が高いほど、達成できなかったときの家計への影響は大きくなります。

管理費・修繕積立金を含めるとどう見えるか

マンションでは、ローン返済額のほかに管理費・修繕積立金が毎月出ていきます。 これらは金利では動かないため、住居費全体で見ると増加率は小さくなります。 月額を仮に置いて計算しました。

管理費等改定前の住居費負担率改定後必要年収必要な昇給率年あたり
なし 19% 22.7% 597万円 19.4% 3.6%
月2万円 23.8% 27.5% 577万円 15.5% 2.92%
月4万円 28.6% 32.3% 564万円 12.9% 2.45%
月6万円 33.4% 37.1% 555万円 11% 2.11%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。管理費・修繕積立金の金額は本ページの仮定で、平均額ではありません。金利上昇では動かない支出として、返済額に足して計算しています。

月4万円を含めると、必要な昇給率は19.4%から12.9%へ下がります。 ただしこれは分母が大きくなったためで、楽になったわけではありません。 改定後の住居費負担率は32.3%と、ローンだけで見た22.7%より高い水準です。 管理費や修繕積立金は改定とは別の理由で見直されることもあるため、 管理費・修繕積立金を含めた負担率もあわせて確認してください。

判断基準|昇給を当てにできる範囲

この記事の数字は「必要額の逆算」であって、年収がそう上がるという見通しではありません。 判断に使うなら、必要な昇給率と、自分が過去に実際に経験した昇給率を並べるのが実用的です。 年あたり3.6%が過去の実績の範囲内なら、+1%程度の上昇は吸収できる可能性が見えます。 届かないなら、返済側で調整する余地がどれだけあるかを先に確認することになります。

もう一つの軸は、昇給が止まった場合に何が起きるかです。 年収が変わらないまま+1%の改定を受けると、負担率は19%から 22.7%へ上がります。 この水準で家計が回るかどうかが、昇給を前提にしない場合の下限になります。 返済額の上限そのものを知りたい場合は金利は何%まで耐えられるか、 年収が下がる側は年収減少時の返済負担率で扱っています。

昇給で追いつかない部分を埋める手段としては、繰上げ返済で返済額そのものを下げる方法があります。 ただし方式によって改定後の返済額への効き方が違うため、 金利上昇への備えに繰上げ返済は効くかで効果の大きさを確認してから選ぶ方が確実です。

確認手順

まず返済予定表で、現在の残債・適用金利・残り期間・毎月返済額を確認します。 探す場所は返済予定表の見方にまとめてあります。 次に、直近の返済額改定がいつだったかを確認します。5年ルールがある契約なら、 そこから5年後が次の改定時期です。

改定時期が分かったら、そこまでの年数で必要な昇給率を割ります。 たとえば改定まで5年あるなら、必要な昇給率19.4%は 年あたり3.6%に分解できます。この数字と、自分の勤務先での 昇給の実績を突き合わせます。

最後に、昇給がゼロだった場合の負担率を出しておきます。 その水準が受け入れられないなら、固定金利への変更、借り換え、繰上げ返済、期間の見直しのうち、 どれが自分の条件で効くかを金額で比べます。判断に必要な数字は返済予定表と本ページのツールで揃います。

この試算で置いている仮定

金利は3年かけて上昇幅の分だけ上がり、その後は一定としています。 上昇のペースが遅ければ1回目の改定額は小さくなり、必要な昇給率も下がります。 逆に、改定の直前に急に上がるほど、1回目で反映される幅は大きくなります。 ペースの違いによる差は金利2%上昇で総額はいくら増えるかで扱っています。

返済負担率を一定に保つ、という置き方も仮定の一つです。 実際には、昇給しても手取りは同じ割合では増えません。社会保険料や税の負担があるためで、 額面で19.4%増えても、使える金額の増え方はそれより小さくなります。 この記事の必要年収は額面ベースなので、手取りで見ると必要額はさらに上振れします。

金利の水準そのものについては、上がるとも上がらないとも置いていません。 「もしこの水準になったら」という条件計算です。実際の適用金利は金融機関と契約内容で決まり、 5年ルールや125%ルールの有無も契約により異なります。

よくある質問

年収が上がれば返済負担率は元に戻るので、金利上昇は気にしなくてよいですか

負担率が同じでも、支払う総額は増えています。負担率は収入に対する比率で、 金利上昇によって増えた利息そのものが消えるわけではありません。 また必要な昇給率は1回目の改定で25%が上限ですが、 改定が重なると88.9%まで伸びる計算になります。

125%ルールがあるので、必要な昇給は最大25%と考えてよいですか

1回目の改定についてはその通りですが、それ以降は当てはまりません。 上限で払わなかった分は元金の減りが遅れる形で残り、次の改定でさらに1.25倍まで上がり得ます。 上の表では、+3%のシナリオで15年後の必要年収が944万円になっています。

改定までに昇給が間に合わない場合はどうすればよいですか

取れる手段は、繰上げ返済で返済額を下げる、固定金利へ変更する、借り換える、 返済期間を見直す、などがあります。どれが有利かは残債・残り期間・諸費用で変わるため、 金額を出して比べる必要があります。条件変更の可否や手数料は契約先の金融機関にご確認ください。

まとめ

  • 必要な昇給率は「改定後の返済額 ÷ いまの返済額」で決まり、年収の水準では変わらない
  • +1%なら必要年収は597万円(19.4%増、年あたり3.6%)
  • 125%ルールにより、1回目の改定で必要な昇給率は25%で頭打ちになる
  • 頭打ちは1回目だけで、+3%では15年後に88.9%増まで伸びる