危険水位はどう決まるか

未払利息は、その月の利息が返済額を上回った瞬間に発生します。利息は「残債×金利÷12」なので、 発生条件は残債×金利÷12>毎月返済額と書けます。これを金利について解くと、 危険水位は毎月返済額×12÷残債という形になります。

つまり水位を上げる方法は2つだけです。返済額を増やすか、残債を減らすか。繰上げ返済は後者にあたりますが、 同じ資金を入れても方式によって返済額が動くため、水位の変わり方は方式ごとに違います。 基準ケースでは残債3,000万円・毎月返済91,078円なので、危険水位は3.64%です。

期間短縮型でいくら入れると水位は何%になるか

期間短縮型は毎月返済額を91,078円のまま据え置き、残期間を縮めます。 分子が固定で分母だけ小さくなるため、危険水位はそのまま上がります。

投入額繰上げ後の残債毎月返済残期間危険水位上昇幅
なし3,000万円91,078円30年3.64%基準
100万円 2,900万円 91,078円 28年11ヶ月 3.77% +0.13ポイント
300万円 2,700万円 91,078円 26年9ヶ月 4.05% +0.40ポイント
500万円 2,500万円 91,078円 24年8ヶ月 4.37% +0.73ポイント
1,000万円 2,000万円 91,078円 19年5ヶ月 5.46% +1.82ポイント

このサイトの計算エンジンによる算出値です。元利均等・ボーナス返済なしで、繰上げ返済直後の残債と返済額から危険水位を算出しています。

100万円の投入で上がるのは0.13ポイントです。 水位を1ポイント動かすには646万円、残債の21.5%が必要になります。 このとき残期間は6年11ヶ月短くなります。

返済額軽減型では危険水位が動かない

返済額軽減型は残期間を30年のまま残し、毎月返済額を下げます。 元利均等返済では返済額が残債にほぼ比例するため、分子と分母が同じ比率で小さくなります。

投入額繰上げ後の残債毎月返済下がる月額危険水位上昇幅
なし3,000万円91,078円—3.64%基準
100万円 2,900万円 88,043円 3,035円 3.64% +0.00ポイント
300万円 2,700万円 81,971円 9,107円 3.64% +0.00ポイント
500万円 2,500万円 75,899円 15,179円 3.64% +0.00ポイント
1,000万円 2,000万円 60,719円 30,359円 3.64% +0.00ポイント

このサイトの計算エンジンによる算出値です。繰上げ返済後の返済額は、残期間を変えずに元利均等で再計算した額です。

1,000万円を入れても危険水位の変化は0.00ポイント、 表示上は3.64%のままです。毎月の負担は30,359円軽くなりますが、 未払利息が出はじめる金利は変わりません。 期間短縮型と返済額軽減型の違いは総利息の差として語られることが多いものの、 危険水位という軸で見ると効き方が分かれます。

目標の水位まで上げるのに必要な額

「金利が何%になっても未払利息を出したくない」という形で目標を置くと、必要額は一意に決まります。 返済額91,078円を据え置く前提で、目標水位から逆算した額は次の通りです。

上げ幅目標の危険水位必要な繰上げ返済額残債に対する割合縮む期間
+0.5ポイント 4.14% 362万円 12.1% 3年11ヶ月
+1.0ポイント 4.64% 646万円 21.5% 6年11ヶ月
+1.5ポイント 5.14% 875万円 29.2% 9年3ヶ月
+2.0ポイント 5.64% 1,063万円 35.4% 11年3ヶ月

このサイトの計算エンジンによる算出値です。期間短縮型で毎月返済額を据え置いたまま、目標水位に必要な残債まで元金を落とす額を逆算しています。

上げ幅に対して必要額は直線的には増えません。+0.5ポイントで362万円、 +2.0ポイントで1,063万円です。 水位が高くなるほど、さらに同じ幅だけ上げるための追加額は小さくなっていきます。

残期間が短いほど必要額は小さい

同じ残債でも、残期間が短ければ毎月返済額が大きく、危険水位は最初から高い位置にあります。 残債3,000万円・金利0.6%で、水位を1ポイント上げるのに要る額を残期間別に出しました。

残期間毎月返済現在の危険水位+1ポイントに必要な額残債に対する割合
15年 174,320円 6.97% 376万円 12.5%
20年 132,681円 5.31% 476万円 15.9%
25年 107,712円 4.31% 565万円 18.8%
30年 91,078円 3.64% 646万円 21.5%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。残期間ごとに元利均等の返済額を算出し、そこから危険水位と必要額を逆算しています。

残り30年では残債の21.5%が必要ですが、 残り15年まで来ると12.5%で足ります。 この割合は残債の大きさでは変わりません。残債が3,000万円でも半分でも、残期間と金利が同じなら同じ割合です。 返済が進むほど水位は自然に上がっていくため、必要額の見積もりは返済予定表の 現在値で取り直してください。

水位を上げると未払利息はどれだけ減るか

水位の数字だけでは実感が持ちにくいので、月次で走らせて確かめます。 金利が半年後の見直しで0.6%から4.5%へ一段に上がり、その後は横ばいという仮定です。 5年ルールと125%ルールは有効にしています。

条件危険水位未払利息の発生未払利息の最大額発生時期
繰上げ返済なし 3.64% 発生する 1,044,524円 2027年4月
500万円・期間短縮型 4.37% 発生する 47,753円 2027年4月
500万円・返済額軽減型 3.64% 発生する 870,366円 2027年4月
1,000万円・期間短縮型 5.46% 発生しない 0円 —
1,000万円・返済額軽減型 3.64% 発生する 696,314円 2027年4月

このサイトの計算エンジンで月次シミュレーションを行った算出値です。未払利息には利息を付けない前提で、返済額に余剰が出た月は未払利息から先に充当しています。

1,000万円を期間短縮型で入れると危険水位が5.46%まで上がり、 4.5%でも未払利息は発生しません。同じ1,000万円を返済額軽減型で入れた場合は水位が 3.64%のままなので、未払利息は696,314円まで積み上がります。 軽減型でも残債が減る分だけ利息は小さくなり、繰上げ返済なしの1,044,524円より低い額にはなりますが、 発生そのものは止まりません。

上昇が緩やかなら水位を超えても出ないことがある

危険水位は「いま返済額を据え置いたまま、残債がいまのままなら」という条件つきの数字です。 金利が時間をかけて上がる場合、その間に残債が減り、5年ごとの改定で返済額も上がるため、 同じ到達金利でも結果が変わります。

0.6%から4%へ上がる場合、半年後に一段で上がると未払利息は 392,094円まで積み上がります。一方、5年かけて半年ごとに刻んで上がると 未払利息は発生しません。 到達金利が同じでも、上昇の速さで発生の有無そのものが変わります。

したがって、危険水位を1ポイント上げる必要額は「急上昇に備える保険料の目安」として読むのが実態に近いです。 未払利息がいつ発生していくらになるかと合わせて、 上昇の速さを変えた複数の仮定で見ておくと、必要額の幅がつかめます。

どちらの方式を選ぶかの判断基準

急上昇で未払利息を避けたいなら、見るべきは期間短縮型です。返済額が据え置かれるため水位が上がり、 総利息の削減額も大きくなります。ただし毎月の負担は軽くなりません。

毎月のキャッシュフローを楽にしたいなら返済額軽減型ですが、危険水位は動かないため、 金利急上昇への備えとしては働きません。500万円を軽減型で入れた場合、 月額は15,179円下がる一方、水位は3.64%のままです。

どちらを優先するかは、手元資金の厚みで分かれます。生活防衛資金を取り崩して期間短縮型に回すと、 金利上昇以外の事故(収入減、修繕、医療費)への耐性が落ちます。水位を上げるために残債の 21.5%を一度に投入するかどうかは、手元に残す現金と 並べて決める論点です。

自分の数字で確認する手順

まず返済予定表から、現在の残債、残期間、毎月返済額、適用金利の4つを写します。 次に「毎月返済額×12÷残債×100」を計算すると、いまの危険水位が出ます。 基準ケースでは91,078円×12÷3,000万円で3.64%でした。

続いて目標水位を決めます。耐えたい金利水準を置き、「返済額×12÷目標水位×100」で必要な残債を求め、 現在の残債との差額が必要な投入額です。家計が耐えられる金利を 先に出しておくと、目標水位の置き方に根拠が持てます。

最後に金融機関で、5年ルールと125%ルールの適用があるか、未払利息が出た場合の取り扱い、 繰上げ返済の方式と手数料、受付の締切を確認します。方式の呼び方は金融機関ごとに違うため、 「毎月返済額を据え置く方式か」という形で聞くと取り違えが起きにくくなります。

金融機関の公表資料で確かめたこと

未払利息の取り扱いは、計算の前提になるため一次情報で確認しています。 三菱UFJ銀行の説明では、返済額は5年ごとに見直し、新返済額はそれまでの返済額の125%を超えないとしたうえで、 「適用利率が急上昇して利息分だけで返済額を超えてしまった場合、超過分は未払利息として翌月以降に繰り延べします」 「最終返済日に未返済残高が生じる場合は、原則として一括返済していただきます」と記載されています (三菱UFJ銀行「住宅ローンの5年ルール・125%ルールとは?」)。

繰上げ返済の方式についても、同行は「最終返済期限繰上方式」(毎月の返済額は変えずに返済期間を短縮する方式)と 「返済額再計算方式」(返済期間は変えずに毎月の返済額を減らす方式)の2つを示し、一部繰上返済手数料は インターネットが無料、店頭窓口が16,500円(消費税込)としています (三菱UFJ銀行「一部繰上返済」)。 本ページで期間短縮型・返済額軽減型と書いているのは、この2方式に対応する一般的な呼び方です。

ルールの適用有無、未払利息の計算方法、手数料は金融機関ごとに異なります。 ここに挙げたのは1つの金融機関について確認できた取り扱いであり、ご自身の契約内容は借入先の商品説明書と契約書で確認してください。

危険水位と繰上げ返済についてよくある質問

返済額軽減型を選ぶと危険水位は下がってしまうのですか

基準ケースの算出では、1,000万円を軽減型で入れても水位の変化は0.00ポイントで、 下がるわけでも上がるわけでもありません。残債と返済額が同じ比率で小さくなるため、比で決まる水位は据え置かれます。 ただし未払利息が出た場合の金額は、残債が小さい分だけ小さくなります。

危険水位を超えたら必ず未払利息が出るのですか

水位は「いまの残債と返済額が続くなら」という条件つきの数字です。上昇が緩やかな場合、 その間に元金が減り、5年ごとの改定で返済額も上がるため、同じ金利でも発生しないことがあります。 基準ケースでは、4%への上昇が半年後の一段なら392,094円、 5年かけた場合は0円でした。

繰上げ返済のタイミングは水位に影響しますか

水位は投入直後の残債と返済額で決まるため、同じ額なら早く入れるほど早く水位が上がります。 ただし返済が進むと水位は自然に上がっていくので、時間が経ってから入れる場合は、 そのときの残債で必要額を取り直す方が過大な見積もりになりません。

すでに未払利息が出ている場合も同じ計算でよいですか

発生後は投入した資金が未払利息の解消に先に回るため、元金に届く額が目減りします。 その分、水位の上がり方は本ページの表より小さくなります。 未払利息が出た後の繰上げ返済がどこへ行くかを先に確認してください。

まとめ

  • 基準ケースの危険水位は3.64%(残債3,000万円・返済額91,078円)
  • 1ポイント上げるには期間短縮型で646万円、残債の21.5%が必要
  • 返済額軽減型では水位の変化は0.00ポイントで、備えとしては働かない
  • 残期間が短いほど必要額の割合は小さく、残り15年で12.5%
  • 上昇が緩やかなら水位を超えても発生しないことがあるため、複数の仮定で見る