残債いくらからなら借り換えが見合うか

まず基準ケースで答えを出します。残債2,000万円、残り期間20年、 現在の適用金利1.3%を0.8%へ借り換える前提です(金利差0.5ポイント)。 元利均等・ボーナス返済なし、返済期間は変えずに借り換えるものとして計算しています。

手数料方式毎月返済毎月の差利息等の削減額諸費用実質損得諸費用の回収
定率型(借入額の2.2%)90,205円−4,475円1,074,007円640,000円+434,007円12年
定額型(55,000円)90,205円−4,475円1,074,007円255,000円+819,007円4年9ヶ月

このサイトの計算エンジンによる算出値です。借り換え前の毎月返済は94,680円。諸費用は data/loan-config.json の既定値を積み上げています。

同じ金利差でも、手数料方式を変えただけで実質損得は385,000円違いました。 回収までの期間も12年と4年9ヶ月で開きます。 残債2,000万円はどちらの方式でもプラスですが、残債が小さくなるとこの差が結論を分けます。

諸費用のうち残債に比例するのはどれか

残債の下限が生まれる理由は、諸費用の構造にあります。残債に比例して増える費用と、 残債に関係なく同額かかる費用が混ざっているためです。基準ケースの内訳を項目別に並べます。

項目定率型定額型残債に比例するか
事務手数料440,000円55,000円定率型は比例する/定額型はしない
抵当権設定の登録免許税80,000円80,000円比例する
司法書士報酬80,000円80,000円比例しない
抵当権抹消費用20,000円20,000円比例しない
印紙税20,000円20,000円比例しない
合計640,000円255,000円—

このサイトの計算エンジンによる算出値です。各項目の金額は data/loan-config.json の既定値で、実際の額は金融機関・司法書士・登記の内容により異なります。保証料の戻りは既定で0としています。

定額型では、残債に比例しない項目の合計が175,000円です。 諸費用255,000円のうち69%が、残債の大きさと無関係にかかる部分にあたります。 一方、利息の削減額は残債にほぼ比例します。この「比例しない費用」を削減額で埋められるかどうかが、残債の下限を決めています。 諸費用の積み上げ自体は借り換えの諸費用は総額いくらで詳しく分解しています。

残債別・残り期間別の実質損得

次に、残債と残り期間を動かします。金利差は0.5ポイントのまま、定率型(借入額の2.2%)で揃えた実質損得です。 数字がマイナスの欄は、諸費用を利息の削減で回収できなかったことを意味します。

残債残り15年残り20年残り25年諸費用
1,000万円 +16,741円+156,994円+301,617円 380,000円
1,500万円 +85,112円+295,508円+512,400円 510,000円
2,000万円 +153,477円+434,007円+723,206円 640,000円
2,500万円 +221,858円+572,512円+934,005円 770,000円
3,000万円 +290,218円+711,024円+1,144,821円 900,000円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。1.3%から0.8%へ、返済期間は変えずに借り換えた場合の総返済額の差から諸費用を引いています。

残債1,000万円・残り15年の欄が+16,741円で、ほぼ損得なしの水準にあります。 同じ残債でも残り25年なら+301,617円まで広がります。 逆に、残債3,000万円・残り15年は+290,218円です。 残債が3倍でも、残り期間が短いと実質損得は残り25年の1,000万円に近い水準にとどまります。 つまり「残債が大きいほど得」とは言えず、残債と残り期間の両方で見る必要があります。

損得が分岐する残債の下限

実質損得がちょうどゼロになる残債を、残り期間ごとに二分探索で求めました。 この額より残債が小さいと、金利差0.5ポイントでは諸費用を回収できない計算になります。

残り期間定率型(2.2%)の下限残債定額型(55,000円)の下限残債下限が低いのは
残り10年 届かない 792万円 定額型
残り15年 878万円 491万円 定額型
残り20年 433万円 352万円 定額型
残り25年 285万円 273万円 定額型
残り30年 210万円 221万円 定率型

このサイトの計算エンジンによる算出値です。実質損得がゼロになる残債を1円単位で探索し、万円に丸めて表示しています。「届かない」は残債1億円まで広げても実質損得がプラスにならなかった欄です。

残り25年では定率型の下限が285万円、残り30年では210万円まで下がります。 残り30年の欄では、定率型の下限が定額型(221万円)を下回りました。 残債が小さいうちは定率2.2%の手数料が定額55,000円より安くなるためです。 逆に残り期間が短くなると下限は上がります。残り25年と残り15年を比べると、 定率型の下限は285万円から878万円へ3.1倍、 定額型は273万円から491万円へ1.8倍になりました。 期間が10年縮むだけで必要な残債が変わる度合いは、方式によって違います。

残り10年で定率型が成立しない理由

表で「届かない」となったのは、残り10年・定率型の欄です。 残債1,000万円での実質損得は−119,177円、残債1億円でも−111,765円でした。 残債を10倍にしても損得はほとんど改善していません。

理由は比率の比較で説明できます。残り10年・金利差0.5ポイントのとき、 利息の削減額は残債の2.61%です。これに対して、 定率型の諸費用のうち残債に比例する部分は事務手数料2.2%と登録免許税0.4%の合計2.6%にあたります。 削減額の比率が比例する費用の比率をわずかに上回るだけなので、 残債を増やしても余りはほとんど増えません。 その余りで、残債に比例しない120,000円を埋めきれないため、 実質損得はマイナスのまま動きません。

同じ条件でも定額型なら、残債1,000万円で+45,823円、 下限は792万円です。残り期間が短い人にとっては、金利差より手数料方式の方が結論を左右します。 金利差そのものの閾値は借り換えの金利差は何%から得か、 経過年数から見た閾値は借り換えは何年目まで得かで扱っています。

残債が小さいときに先に確認すること

残債が小さい人は、残り返済期間も短くなっている場合が多くあります。ここで制度上の分岐が入ります。 国税庁は住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の要件として 「10年以上にわたり分割して返済する方法になっている」借入金等であることを挙げています (国税庁 No.1211-1 住宅借入金等特別控除の適用要件)。 借り換え後の返済期間が10年を下回る組み方にすると、この要件を満たさなくなります。

控除の残存年数がある人は、実質損得に控除の増減も足して考える必要があります。 残高が減れば控除額も減り、諸費用を借入に上乗せした分は控除の対象外として按分されます。 控除側の計算は借り換えで住宅ローン控除は減るのかと 諸費用を上乗せしても控除は増えないで分けて扱っています。

どの数字を見て判断するか

このページの試算では、見る順番が決まっています。第一に残り期間です。 残り期間が短いほど利息の削減額が小さくなり、下限残債が上がります。 第二に手数料方式です。定率型と定額型で、基準ケースでも385,000円差が出ました。 第三に残債で、下限を下回っていれば金利差を広げるか、方式を変えるかしないと回収できません。

下限を下回っている場合、選択肢は借り換え以外にもあります。 同じ現金を諸費用ではなく繰上げ返済に充てる、現在の金融機関に金利引き下げの可否を相談する、 そのまま返し切る、のいずれかです。残債が小さい局面では、借り換えの事務コストに対して 得られる削減額が小さいため、現状維持が有利と出ることがあります。 その結果が出た場合も、数字をそのまま読んでください。

確認手順

最初に返済予定表を開き、現在残債、残り回数、適用金利の3つを書き出します。 残り回数は「あと何年」ではなく回数で確認すると、下限の表と突き合わせやすくなります。

次に、借り換え候補の金利と事務手数料の方式を調べます。定率か定額かは、金融機関の手数料の案内で確認します。 定率型の場合は率(このページでは2.2%)を確認し、借入額に掛けて実額に直します。

そのうえで、残り期間に対応する下限残債を表から読み、自分の残債と比べます。 下限を上回っていれば、諸費用の実額を入れて実質損得を計算し直します。 下限を下回っていれば、金利差をもっと取れる候補があるか、定額型の候補があるかを先に確認します。 保証料の戻りがある契約では費用側が下がるため、金融機関に戻り額を確認してから再計算します。

よくある質問

残債1,000万円以下だと借り換えはできないのですか

申込みができるかどうかは借り換え先の条件によるもので、このページの下限とは別の話です。 ここで出しているのは「諸費用を利息の削減で回収できるか」という損得の下限です。 残り期間が長ければ、残債1,000万円でもプラスになる欄があります。

金利差が0.5ポイントより大きければ下限は下がりますか

利息の削減額が増えるため、下限は下がる方向に動きます。 このページは金利差0.5ポイントに固定した試算なので、 手元の候補が別の金利差なら、ツールに実際の数値を入れて計算し直してください。

返済期間を延ばして毎月返済を下げる形でも同じ下限になりますか

同じにはなりません。期間を延ばすと毎月返済は下がりますが、利息の総額は増えるため、 総返済額で見た実質損得は悪化する方向に動きます。 期間を変える場合の計算は借り換えで返済期間を延ばすとで扱っています。

まとめ

  • 金利差0.5ポイント・残り20年なら、実質損得の分かれ目は定率型で433万円、定額型で352万円
  • 残り15年では定率型の下限が878万円、定額型が491万円まで上がる
  • 残り10年・定率型は、削減額が残債の2.61%しかなく、比例する費用2.6%をほぼ超えない
  • 残債2,000万円・残り20年の実質損得は定率型+434,007円、定額型+819,007円