60歳・65歳で一括返済すると消える利息
前提は3,000万円・35年・元利均等・金利0.6%、40歳で借入(完済は75歳)です。 毎月返済は79,208円、35年の総利息は327万円になります。 この返済を続けた場合、各年齢の時点で残っている残債と、その後完済までに払う利息は次のとおりです。 一括返済で消えるのは残債ではなく、この「残っている利息」の方です。
| 返済する年齢 | 残債 | 残り期間 | 消える利息 | 投入額に対する比率 | 年あたり換算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 55歳 | 1,791万円 | 20年 | 110万円 | 6.14% | 0.31% |
| 60歳 | 1,363万円 | 15年 | 63万円 | 4.59% | 0.31% |
| 65歳 | 922万円 | 10年 | 28万円 | 3.05% | 0.31% |
| 70歳 | 468万円 | 5年 | 7万円 | 1.53% | 0.31% |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。手数料は0円、繰上げ返済までは当初の条件どおり返済したものとして計算しています。
60歳で1,363万円を一括返済すると、消える利息は63万円です。 投入する金額に対して4.59%、残り15年で均すと年0.31%にあたります。 65歳まで待つと消える利息は28万円に減りますが、年あたり換算は0.31%でほとんど変わりません。
年あたり換算が金利の半分になる理由
表の右端を縦に見ると、55歳でも70歳でも0.31%前後で揃っています。 適用金利は0.6%なのに、年あたり換算はその半分ほどです。ずれているわけではありません。
一括返済した金額が「利息を生まずに済む状態」で置かれるのは、返済期間の最初だけです。 返済を続けていれば残債は毎月減っていくので、返済期間全体を通してみると、 利息が付いていたはずの残高は投入額の半分程度になります。だから、投入額全体で割った年あたり換算は金利のおよそ半分に落ちます。
つまり「金利0.6%のローンを消す」と「年0.6%で運用する」は同じではありません。 手元資金を残す選択と比べるときは、金利そのものではなく、この年0.31%という数字と並べる方が実態に近くなります。
適用金利が高いほど一括返済の効果は大きい
同じ3,000万円・35年でも、適用金利が違えば60歳時点に残っている利息は変わります。 金利だけを変えて、60歳で全額返済した場合を比べます。
| 適用金利 | 毎月返済 | 60歳時点の残債 | 消える利息 | 投入額に対する比率 | 年あたり換算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.6% | 79,208円 | 1,363万円 | 63万円 | 4.59% | 0.31% |
| 1% | 84,685円 | 1,415万円 | 109万円 | 7.73% | 0.52% |
| 1.5% | 91,855円 | 1,480万円 | 174万円 | 11.73% | 0.78% |
| 2% | 99,378円 | 1,544万円 | 244万円 | 15.83% | 1.06% |
| 2.5% | 107,248円 | 1,608万円 | 322万円 | 20.02% | 1.33% |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入額と期間を固定し、金利だけを変えています。
金利2.5%なら消える利息は322万円、年あたり換算は1.33%です。 0.6%のときの0.31%とは4倍以上の開きがあります。 判断の前に見るべきなのは退職金の額ではなく、返済予定表に書かれている自分の適用金利の方だと分かります。
全額返す必要はあるか|投入額別の効率
60歳時点の残債1,363万円に対して、一部だけを期間短縮型で繰上げ返済した場合です。 毎月返済は79,208円のまま据え置き、完済が前倒しになります。
| 投入額 | 短縮される期間 | 完済年齢 | 減る利息 | 投入額に対する比率 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 3年5ヶ月 | 71歳7ヶ月 | 25万円 | 8.32% |
| 500万円 | 5年7ヶ月 | 69歳5ヶ月 | 38万円 | 7.59% |
| 1,000万円 | 11年1ヶ月 | 63歳11ヶ月 | 58万円 | 5.83% |
| 1,363万円(全額) | 15年 | 60歳 | 63万円 | 4.59% |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。期間短縮型・手数料0円で計算しています。
500万円を入れると5年7ヶ月縮んで利息が38万円減り、投入額に対する比率は7.59%です。 全額の1,363万円を入れた場合は63万円減りますが、比率は4.59%に下がります。 金額を増やすほど1円あたりの効きは落ちる、という形になっています。 先に入れた分が長い期間の利息を消し、後から積み増した分は残り期間の短い部分にしか効かないためです。
手元にいくら残すか|毎月返済を下げる使い方
退職金を2,000万円受け取ったと仮定して(金額は本ページの仮定で、平均額ではありません)、 そのうちいくらを返済に回すかで、毎月返済と手元に残る現金がどう変わるかを見ます。 ここでは期間を15年のままにして毎月返済を下げる返済額軽減型で計算しています。
| 返済に回す額 | 返済後の毎月返済 | 下がる額 | 手元に残る現金 | 減る利息 |
|---|---|---|---|---|
| 返済しない | 79,208円 | — | 2,000万円 | — |
| 500万円 | 50,155円 | 29,053円 | 1,500万円 | 23万円 |
| 1,000万円 | 21,101円 | 58,107円 | 1,000万円 | 46万円 |
| 1,363万円 | 0円 | 79,208円 | 637万円 | 63万円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。返済額軽減型・手数料0円、退職金2,000万円は本ページの仮定です。
全額を返済に回すと毎月79,208円の支出がなくなり、手元には637万円が残ります。 500万円だけ入れる場合は毎月29,053円下がり、手元には1,500万円が残ります。 どちらが合うかは、退職後の収入と支出の差でしか決まりません。 現金をどれだけ残すかの考え方は生活防衛資金の記事、 期間短縮型と返済額軽減型の違いは2方式の比較で扱っています。
変動金利で上がっていた場合
ここまでは金利0.6%が最後まで続く前提でした。変動金利で借りていて、 借入直後から10年かけて一定のペースで上がった場合はどうなるかを計算します(金利の予測ではなく、上がった場合の仮定です)。 60歳時点で全額返済する条件は同じです。
| 上昇幅 | 到達金利 | 60歳時点の残債 | その時の毎月返済 | 消える利息 | 年あたり換算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 据え置き | 0.6% | 1,363万円 | 79,208円 | 63万円 | 0.31% |
| +0.5% | 1.1% | 1,421万円 | 85,674円 | 121万円 | 0.57% |
| +1% | 1.6% | 1,480万円 | 92,532円 | 186万円 | 0.84% |
| +1.5% | 2.1% | 1,540万円 | 99,796円 | 257万円 | 1.11% |
| +2% | 2.6% | 1,601万円 | 107,475円 | 334万円 | 1.39% |
| +3% | 3.6% | 1,741万円 | 125,320円 | 515万円 | 1.97% |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。5年ルール・125%ルールがある前提で、半年ごとに階段状に上がるものとして計算しています。
据え置きなら消える利息は63万円ですが、+1.5%上がっていた場合は257万円、 +3%なら515万円です。年あたり換算も0.31%から1.97%まで動きます。 退職金で返す判断は、退職の時点で自分の適用金利がどこにあるかで結論が変わる、ということです。
据え置き期間中は残債の減りが遅れる
上の表で、上昇幅が大きいほど60歳時点の残債そのものが増えていることに注意してください。 据え置きなら1,363万円のところ、+3%のケースでは1,741万円です。 5年ルールで返済額が据え置かれている間、増えた利息の分だけ元金充当が減るためです。 返済額が変わっていなくても、返す元金は減っています。
+3%のケースでは、最初の返済額改定は2031年7月で、 79,208円から99,010円になります。 125%ルールがなければ101,351円のはずなので、 差額の2,341円はこの改定では請求されず、後ろの期間に回ります。
未払利息は、この6ケースではどれも発生していません。借入直後の閾値は3.17%で、 +3%のケースの到達金利3.6%はこれを上回ります。それでも発生しないのは、 到達する前に返済額の改定が入るからです。2031年7月の改定で返済額が99,010円に上がると、 閾値も4.39%へ切り上がります。金利の上がるペースが閾値の上がるペースに追いつかない、という関係です。 閾値は固定値ではなく、返済額と残債で毎月動く数字だと考えてください。
住宅ローン控除が残っているとき
繰上げ返済で気をつけるのは、期間短縮型で返済期間を縮める場合です。 国税庁は、住宅借入金等特別控除の対象となる借入金の要件として 「償還期間が10年以上の割賦償還の方法により返済されるものまたは割賦払の期間が10年以上の割賦払の方法により支払われるものであること」とし、 この10年以上の期間は「借入金等の債務を負っている期間をいうのではなく、最初の返済等の時から返済等が終了する時までの期間をいいます」としています (国税庁「住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」)。
本ページの前提では40歳の借入から20年が経過した時点の話なので、控除期間が残っているかどうかは人によって違います。 控除が残っている時期に繰上げ返済を検討する場合は、減る利息と減る控除額を並べて比べる必要があります。 この論点は控除中の繰上げ返済で扱っています。
判断に使う数字を3つに絞る
1つ目は適用金利です。適用金利別の表で見たとおり、0.6%と2.5%では年あたり換算が4倍以上違います。 退職金の額から考え始めると、この差が見えません。
2つ目は退職後の毎月の収支です。返済がなくなれば79,208円の支出が消えますが、 同じ金額を手元に置いておけば、収入が想定より少なかったときに取り崩せます。 一度返済に回した資金は、同じ条件では戻せません。
3つ目は消える利息の絶対額です。60歳・金利0.6%なら63万円、 変動で+1.5%上がっていれば257万円。この金額が、手元資金を減らす対価として見合うかどうかで判断します。 金額が小さい場合は、返さないという結論もそのまま成り立ちます。
確認手順
まず返済予定表を開き、現在の残債・適用金利・残り回数の3つを控えます。書かれている場所は返済予定表の見方で説明しています。 変動金利の場合は、直近の金利変更のお知らせも合わせて確認します。
次に、退職予定の時点まで返済を進めたときの残債を計算します。定年時点の残債そのものは完済年齢と定年後の残債でも扱っています。 そのうえで、この記事の表と同じように「残っている利息」を出せば、一括返済で消える金額が分かります。
最後に金融機関へ確認する項目は、繰上げ返済の手数料、最低金額、受付の方法、全額返済の場合の手続きです。 いずれも金融機関や契約内容により異なるため、試算の段階で0円としている手数料を実額に置き換えます。
退職金での一括返済についてよくある質問
退職金で一括返済すると、いくら得になりますか
得になる金額は、返済しなかった場合に払うはずだった利息です。本ページの前提(3,000万円・35年・金利0.6%・40歳借入)では、 60歳時点で63万円、65歳時点で28万円でした。 適用金利と残り期間で大きく変わるので、自分の返済予定表の数字で計算し直してください。
一括返済と、一部だけ繰上げ返済するのはどちらが効率的ですか
投入額1円あたりで見ると、一部繰上げの方が比率は高くなります。本ページの計算では、 500万円なら投入額の7.59%、全額1,363万円なら4.59%でした。 ただし減る利息の総額は全額返済の方が大きく、毎月の返済がなくなるという違いもあります。効率と総額のどちらを取るかで結論が変わります。
返済を先送りして、退職金を運用に回した方がいいですか
本ページでは運用の可否には踏み込みません。比較の目安になる数字だけを示すと、 一括返済で消える利息は投入額に対して年0.31%相当(金利0.6%の場合)でした。 変動で+1.5%上がっていれば年1.11%相当まで上がります。 個別の資産運用や税務の判断は、金融機関や専門家にご確認ください。
まとめ
- 60歳時点の残債は1,363万円、消える利息は63万円
- 投入額に対して4.59%、残り期間で均すと年0.31%相当
- 返す年齢を変えても年あたり換算は0.31%前後で動かず、変わるのは総額
- 変動で+1.5%上がっていれば消える利息は257万円まで増える
- 判断は退職金の額ではなく、適用金利と退職後の収支から見る