預金で並ぶには、税引前でいくら必要か

結論から言うと、繰上げ返済の効果はおおむねローン金利と同じ年利で得られます。これに預金で並ぶには、預金の利息にかかる税金の分だけ高い金利が必要です。国税庁は預貯金の利子について、20.315%の源泉分離課税と案内しています(No.1310 利息を受け取ったとき、2026年10月31日に確認)。

住宅ローンの金利並ぶ預金金利(税引前)並ぶ預金金利(税引後)
0.6%0.75%0.6%
0.8%1%0.8%
1%1.25%1%
1.5%1.88%1.5%
2%2.51%2%

このサイトの計算による算出値です。税引前金利 × (1 − 20.315%) がローン金利に並ぶ水準です。実際の繰上げ効果はローンの残高と残り期間で少し変わります。

金利が上がって預金金利が高くなったとしても、ローン金利も上がっていれば、並ぶ水準は上の表のとおり高くなります。「預金金利が上がったから預金の方が得」とは直ちに言えません。

300万円を10年置いた場合の差

実際の金額で比べます。残債3,000万円・残り30年の人が、300万円を繰上げ返済する場合と、10年間預金に置く場合です。繰上げは返済額軽減型で計算し、10年後の「資産 − 残債」の差を比べました。

ローンの金利と上昇預金0.1%預金0.3%預金0.5%預金1.0%
0.6%(横ばい)+12.8万円+8.0万円+3.1万円−9.6万円
0.6%(3年で+1%)+34.5万円+29.6万円+24.7万円+12.1万円
1%(横ばい)+23.2万円+18.4万円+13.4万円+0.8万円
1%(3年で+1%)+45.4万円+40.5万円+35.6万円+23.0万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。プラスは繰上げ返済の方が10年後の「資産 − 残債」が大きいことを示します。預金は税引後の複利で計算し、預金金利は10年間一定としています。控除は含めていません。

ローン金利が横ばいの0.6%で預金1.0%の場合だけ、預金の方が有利になりました。ローン金利が1%上がる仮定では、同じ預金金利でも繰上げの差が広がります。ローン金利の上昇が預金より大きいかどうかが、判断の分かれ目になります。

預金金利とローン金利が同時に上がる場合の見方

預金金利がローン金利と同じ幅で上がるとは限りません。上の表を読むときは、ローンの行と預金の列を組み合わせて、自分が想定する組み合わせを探します。たとえばローンが1%上がっても預金が0.5%しか上がらないなら、ローン1.6%相当と預金の差を比べることになります。

金利の水準は仮定ですので、1つの組み合わせで決めず、預金が有利になる組み合わせがどの程度現実的かを考えます。自分の適用金利がいくらかによって、結論が変わります。

手元資金の流動性は別に評価する

金額の比較に出てこない価値があります。預金はいつでも引き出せますが、繰上げ返済で入れたお金は借りるのが難しくなります。教育費や修繕費、収入の変化で資金が必要になったとき、借り直すのは簡単ではありません。

小さな差のために手元を薄くするのは、割に合わないこともあります。生活防衛資金の目安を確保した上で、余る分について比較する形が現実的です。

控除が残っている間は判断が変わる

控除がある間は、繰上げで残高を減らすと控除額も減る場合があります。残高が借入限度額を下回っている期間は、残高に対して0.7%の控除が減る形になり、繰上げの実質効果はローン金利より小さくなります。計算は控除中の繰上げ返済と控除の減少を差し引いた実質効果で確認できます。

この表には控除を入れていないので、控除が残っている人は預金の方が有利になる範囲が広がります。控除が終わった後は、表の数字に近くなります。繰上げをいつ始めるかの比較は繰上げを控除終了まで待つ場合で試算しています。

どの数字で判断するか

見るのは3つです。今の適用金利、手元資金の預金金利(税引後)、そして資金の使い道です。適用金利が預金の税引後金利より十分に高く、使い道が当面なければ、繰上げの価値があります。差が小さいなら、手元資金の余裕を優先する理由があります。

リスクのある運用と比べる場合は別の話です。運用の利回りは保証されないので、預金のような単純比較はできません。考え方は繰上げ返済と運用の比較にまとめています。

この比較で置いた前提

預金の金利は10年間一定とし、毎年の税引後の利息を預金に加えて計算しました。繰上げ側は毎月の返済が減った分の額をそのまま資産の差に足しており、運用益は入れていません。そのため繰上げ側は少し控えめな数字です。

2027年以後の税の区分には変更の案内があるので、最新の税率は国税庁で確かめてください。

比較する手順

  1. 返済予定表で今の適用金利と残債を確かめる
  2. 預けている口座の預金金利を確かめ、税引後の金利を計算する
  3. 生活防衛資金を除いた、動かせる資金の額を決める
  4. ツールで繰上げ後の返済と総支出を確かめ、預金の利息と比べる

預金金利と繰上げ返済についてよくある質問

キャンペーン金利の定期預金で比べてもよいですか

短期間だけの高い金利は、長期の比較にはそのまま使えません。満期後の金利がどうなるかで結果が変わるので、継続できる金利で比べます。

金利が上がってから繰上げ返済するほうが効果は大きいですか

金利が上がった後の繰上げは、その時点の高い金利の利息を減らすので効果は大きくなりますが、それまでの期間の利息は減らせません。時期の比較は繰上げ返済のタイミングで試算しています。

預金保険の範囲も考える必要がありますか

大きな額を預ける場合は別途確認が必要です。預金保険の範囲は銀行と預金の種類によるので、預金保険機構や銀行に確認します。

まとめ

  • ローン0.6%に並ぶ預金金利は税引前で0.75%
  • ローン金利が上がる仮定では、同じ預金金利でも繰上げの差が広がる
  • 控除中は実質効果が小さくなり、預金の有利さが増す
  • 流動性の価値は金額の比較に入らないので、別に判断する