未払利息が出たあと、繰上げ返済はどこから充当されるか

未払利息は、毎月の返済額で払いきれなかった利息です。全国銀行協会は、未払利息について 「未払利息の分は通常の返済とは別に支払わない限り、翌月以降、返済終了時まで蓄積されていきます」と説明しています (変動金利住宅ローンの未払利息とは?|一般社団法人 全国銀行協会)。 つまり、通常の返済とは別に資金を入れない限り、未払利息は残り続けます。

そこで繰上げ返済の資金を入れると、その資金はまず未払利息の解消に使われ、元金に届くのは残った分だけになります。 本ページはこの前提で計算しています。あわせて、未払利息には利息を付けない(利息を元本に組み入れない)前提を置いています。 この2点の取り扱いは金融機関により異なるため、実行前の確認が必要です。

ここで注意したいのは、未払利息の解消に回った分は元金を減らさないけれども、 その後の利息を減らさないわけではないという点です。未払利息が残っていると、改定で返済額が上がったあとも その余剰は先に未払利息の解消へ向かい、元金が減り始める時期が遅れます。先に未払利息を消しておけば、 改定後の余剰が最初から元金に向かいます。この記事では、減る利息を 「未払利息の解消による分」と「元金充当による分」に分けて計算しました。

基準ケース|未払利息が積み上がる過程

残債3,000万円・残り30年・元利均等・現在金利0.6%、5年ルールと125%ルールあり、次回改定は60回目とします。 ここに3年かけて4%上がり、4.6%になるという仮定を置きます。これは予測ではありません。 この条件の危険水位(未払利息が出はじめる金利)は開始時点で3.64%で、仮定した上昇はこれを超えます。 危険水位は「残債 × 金利 ÷ 12」が返済額を超える点なので、残債が減るとわずかに上がります。 以下の表や本文で3.64%と違う値が出てくるのは、その時点の残債で計算しているためです。

経過年月適用金利返済額うち利息元金充当未払利息残高残債
24回目 2028年9月 3.27% 91,078円 78,834円 12,244円 0円 2,894万円
28回目 2029年1月 3.93% 91,078円 94,744円 0円 3,666円 2,891万円
36回目 2029年9月 4.6% 91,078円 110,812円 0円 81,198円 2,891万円
48回目 2030年9月 4.6% 91,078円 110,812円 0円 318,006円 2,891万円
60回目 2031年9月 4.6% 113,847円 110,812円 0円 532,045円 2,891万円
72回目 2032年9月 4.6% 113,847円 110,812円 0円 495,625円 2,891万円
120回目 2036年9月 4.6% 142,308円 110,812円 0円 321,484円 2,891万円
131回目 2037年8月 4.6% 142,308円 110,812円 24,972円 0円 2,888万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。金利の上昇幅と速度は仮定で、予測ではありません。

未払利息が出はじめるのは28回目(2029年1月)です。そこから元金充当は0円になり、 残債は2,891万円で止まります。60回目の改定で返済額は 91,078円から113,847円へ上がりますが、125%ルールの上限に当たっており、 上限がなければ162,035円でした。増えた返済額は未払利息の解消に回るため、 元金が再び減り始めるのは2037年8月、元金充当が0円の月は8年7ヶ月続きます。

発生時期そのものは未払利息はいつ発生していくらか、 金利が下がった場合の解消は未払利息は金利が下がれば消えるかで扱っています。 本ページは、手元資金で解消する場合に絞ります。

繰上げ返済額別|未払利息と元金への分かれ方

未払利息が最大になる2031年8月(59回目の返済後、次回改定の直前)に繰上げ返済をした場合です。 この時点の未払利息残高は535,080円です。

繰上げ返済額未払利息へ元金へ元金に届く割合減る利息実行後の危険水位
100万円 535,080円 464,920円 46.5% 137万円 3.84%
300万円 535,080円 2,464,920円 82.2% 425万円 4.13%
500万円 535,080円 4,464,920円 89.3% 665万円 4.47%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。未払利息の解消に先に充て、残りを元金に充てる前提で計算しています。

100万円では46.5%しか元金に届きません。 金額が大きくなるほど、未払利息の解消分は同じ535,080円のままなので、元金に届く割合は上がります。 500万円なら89.3%が元金に届き、減る利息は665万円でした。

危険水位も動きます。実行前は3.78%でしたが、500万円入れると 4.47%まで上がります。仮定した金利4.6%との距離が、 次に未払利息が出るかどうかを決めます。

実行時期別|元金に届く額と利息軽減額

同じ300万円を、3つの時期に入れた場合を比べます。いずれの時期も未払利息はその時点の残高を全額解消できる金額なので、 減る利息を「未払利息の解消による分」と「元金充当による分」に分けられます。

実行時期年月未払利息へ元金へ減る利息うち未払利息の解消分うち元金充当分
未払利息が出た直後 2029年1月 3,666円 2,996,334円 504万円 4,162円 5,033,023円
次回改定の直前 2031年8月 535,080円 2,464,920円 425万円 678,096円 3,574,170円
改定から1年後 2032年9月 495,625円 2,504,375円 399万円 621,807円 3,365,684円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。実行後は同じ金利パスの上で残りの期間を再計算しています。

減る利息がいちばん大きいのは未払利息が出た直後(2029年1月)で504万円、 いちばん小さいのは改定から1年後で399万円でした。差は105万円です。 内訳を見ると、元金充当による分は5,033,023円から3,365,684円へ減っています。 元金に届く額が小さくなり、しかも実行が遅いためです。

一方、未払利息の解消による分は未払利息が出た直後では4,162円しかありません。解消すべき残高が3,666円しかないためです。 次回改定の直前では678,096円になります。535,080円を解消することで、改定後の返済額の余剰が 未払利息ではなく元金に向かうようになるためで、投じた額を上回る利息が減っています。

1円あたりの効きで見ると、次回改定の直前では未払利息の解消分が1.27円、 元金充当分が1.45円でした。元金に入る方が効率は高いものの、 未払利息の解消も利息を減らす働きをしています。「未払利息に消えた」と単純に捉えると、判断を誤ります。

未払利息の再発を止めるのに必要な額

未払利息をいったん解消しても、返済額が据え置かれたまま金利が高いと、翌月から再び発生します。 再発を止めるには、残債を下げて危険水位を仮定した金利4.6%より上に押し上げる必要があります。 時期別に、その必要額を逆算しました。

実行時期年月未払利息の解消に必要再発を止める元金充当合計
28回目 2029年1月 3,666円 508万円 509万円
36回目 2029年9月 81,198円 515万円 523万円
48回目 2030年9月 318,006円 515万円 547万円
59回目 2031年8月 535,080円 0円 54万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。再発を止める元金充当額は、未払利息が出なくなる残債を二分探索で求めています。

28回目(2029年1月)に再発まで止めようとすると、合計509万円が必要でした。 返済額が91,078円に据え置かれている間は、残債を2,383万円まで下げないと 危険水位が4.6%に届かないためです。

一方、59回目では再発を止める元金充当は0円です。次の月に改定が来て返済額が113,847円へ上がり、 その額なら利息を上回るためです。ここは目的で答えが変わる部分です。利息を減らすことが目的なら早い方が大きく、 未払利息の再発を止めることが目的なら据え置き期間中は多額の資金が要る、という形になります。

判断基準|どの数字を見て決めるか

見る数字は3つです。1つ目は未払利息の残高。これが繰上げ返済額のうち元金に届かない分にあたります。 2つ目は危険水位と現在の適用金利の距離。距離がマイナスなら、いま未払利息が出ている状態です。 3つ目は次回改定までの月数。改定で返済額が上がれば、そこから先は未払利息が出にくくなります。

この3つの組み合わせで優先順位が変わります。改定が目前なら、改定後の返済額で未払利息が解消に向かうかを先に見る余地があります。 改定までまだ長いなら、未払利息が積み上がる分だけ、後で入れる資金の効きが落ちます。 どちらが自分の条件に当てはまるかは、返済予定表と金利の通知で確認できます。

なお繰上げ返済は手元資金を減らす選択です。未払利息の解消に回る分は元金を減らさないため、 残債の数字は動かないように見えます。それでも改定後の元金充当が早まる効果はあるので、 残債の減り方だけで効果を判断しない方が実態に合います。 期間短縮型と返済額軽減型のどちらを選ぶかも、返済額が据え置かれている期間中は効き方が変わります。

金融機関に確認する手順

まず返済予定表と金利変更の通知を用意し、現在の適用金利、返済額、残債、次回改定の時期を書き出します。 次に、返済額の内訳で利息が返済額に達していないか、未払利息の欄があるかを見ます。 表示の名称は金融機関により異なるため、見当たらない場合は残債が減っているかで代わりに判断できます。

そのうえで借入先に確認する項目は4つです。未払利息が現在いくらあるか、繰上げ返済金の充当順序、 未払利息に利息が付くかどうか、そして繰上げ返済の手数料と受付方法です。 auじぶん銀行は一部繰上返済について、5年ルールにより返済額が据え置かれている期間に金利が上がると 「返済額は一定のまま『元金』充当額は減り、『利息』が増えます」とし、そのため 「一部繰上返済金額によっては返済期間が変わらない場合がございます」と案内しています (住宅ローンにおける一部繰上返済について|auじぶん銀行)。 期間短縮型を選んだのに期間が変わらないことがある点は、実行前に確かめておく価値があります。

金額を決める前に、このサイトのツールで残債と金利を入れ直し、繰上げ返済後の危険水位を見ておくと、 必要額の見当がつきます。そのうえで借入先の試算と突き合わせてください。

未払利息と繰上げ返済についてよくある質問

未払利息を先に払わずに、元金だけ減らすことはできますか

充当の順序は金融機関の取り扱いによります。本ページは未払利息の解消を先に充てる前提で計算しています。 順序が違えば元金に届く額も変わるため、借入先に確認してください。全国銀行協会の説明では、 未払利息は通常の返済とは別に支払わない限り蓄積されるとされています。

未払利息に利息は付きますか

本ページは、未払利息に利息を付けない(元本に組み入れない)前提で計算しています。 取り扱いが異なれば負担は変わるため、契約書や商品説明書の記載を確認してください。

未払利息が出ている間は、繰上げ返済をしても意味がないのですか

そうではありません。2031年8月に100万円を入れた場合でも、 元金に464,920円届き、減る利息は137万円でした。 内訳は未払利息の解消による分が678,096円、元金充当による分が693,762円です。

まとめ

  • 未払利息は535,080円まで積み上がり、元金充当が0円の月は8年7ヶ月続いた
  • その時点で100万円を入れると、元金に届くのは464,920円(46.5%)
  • 減る利息137万円の内訳は、未払利息の解消で678,096円、元金充当で693,762円
  • 再発まで止めるには、据え置き期間中は合計509万円が必要だった
  • 充当順序と未払利息の扱いは金融機関により異なるため、実行前に確認する