控除13年分と支払利息13年分を並べる

比較の条件は借入3,000万円・35年・元利均等・金利0.6%、年収500万円、 2025年入居の省エネ基準適合住宅(控除率0.7%・控除期間13年・借入限度額3,000万円)です。 毎月返済は79,208円になります。控除は年末残高をもとに計算されるため、年ごとに金額が変わります。 下の表は、その年に払った利息と、その年に受け取る控除額を同じ行に並べたものです。

年年末残高その年の支払利息その年の控除額差額
1年目 2,923万円 177,871円 204,591円 +26,720円
2年目 2,845万円 173,223円 199,150円 +25,927円
3年目 2,767万円 168,547円 193,677円 +25,130円
4年目 2,688万円 163,842円 188,170円 +24,328円
5年目 2,609万円 159,111円 182,630円 +23,519円
6年目 2,529万円 154,347円 177,057円 +22,710円
7年目 2,449万円 149,557円 171,451円 +21,894円
8年目 2,369万円 144,739円 165,810円 +21,071円
9年目 2,288万円 139,891円 160,136円 +20,245円
10年目 2,206万円 135,012円 154,428円 +19,416円
11年目 2,124万円 130,107円 148,685円 +18,578円
12年目 2,042万円 125,172円 142,908円 +17,736円
13年目 1,959万円 120,206円 137,096円 +16,890円
合計 — 1,941,625円 2,225,789円 +284,164円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。返済開始を1月とし、各年末に12回返済済みとして年末残高を取っています。

この条件では13年すべての年で控除額が支払利息を上回り、合計で284,164円の差が出ました。 控除13年分は同期間の支払利息の114.6%にあたります。 1年目の差額は26,720円で、13年目には16,890円まで縮みます。 残高が減るほど控除額も減りますが、同時に支払利息も減るため、この金利では逆転まで至りませんでした。

金利別|逆ざやが消える水準を逆算する

同じ借入額・期間で金利だけを変えると、支払利息は金利にほぼ比例して増えます。 一方、控除額は年末残高で決まるため、金利が上がって元金の減りが遅くなった分だけわずかに増えるにとどまります。 この非対称が、逆ざやが消える境目をつくります。

金利毎月返済13年の支払利息13年の控除合計差額控除/利息
0.4% 76,557円 129万円 221万円 +924,986円 171.9%
0.6% 79,208円 194万円 223万円 +284,164円 114.6%
1% 84,685円 327万円 225万円 −1,019,300円 68.8%
1.5% 91,855円 497万円 229万円 −2,687,874円 46.0%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入3,000万円・35年・年収500万円で、金利だけを変えています。

控除合計と支払利息が一致する金利を二分法で逆算すると0.69%でした。 これより低い金利なら控除が利息を上回り、高ければ下回ります。 金利1%では利息が327万円まで増え、控除225万円では 68.8%しか埋まりません。控除合計が金利0.4%の 221万円から金利1.5%の229万円へ ほとんど動いていないことが、境目が低い位置にある理由です。

「13年の利息」と「完済までの利息」を混同しない

ここまでの比較は控除期間13年に限った話です。35年返済なら、控除が終わったあとも22年分の利息が残ります。 金利0.6%の場合、完済までの支払利息は326.7万円で、控除13年分 223万円はその68.1%にあたります。

つまり「控除が利息を上回る」のは控除期間の中での話で、ローン全体では利息の方が多く残ります。 金利1%なら完済までの利息に対する控除の割合は40.5%まで下がります。 控除期間だけを切り出した数字を、借入全体の損得に読み替えないようにしてください。

年収別|控除が納税額で止まると境目も下がる

控除は「年末残高×控除率」で計算した額がそのまま戻るわけではなく、納める税額が上限になります。 納税額が小さい人は計算上の控除額を使い切れず、控除合計が頭打ちになります。 年収だけを変えて、頭打ちになる年数と逆ざやの境目を比べます。

年収試算上の年間上限13年の控除合計13年の利息との差控除/利息境目の金利
300万円 112,644円 146万円 −477,253円 75.4% 0.45%
400万円 172,263円 211万円 +172,467円 108.9% 0.65%
500万円 235,845円 223万円 +284,164円 114.6% 0.69%
600万円 302,210円 223万円 +284,164円 114.6% 0.69%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入3,000万円・35年・金利0.6%で年収だけを変え、年間上限は年収からの概算で求めています。

年収300万円では13年すべてで控除が年間上限に当たり、控除合計は146万円で止まりました。 同期間の利息194万円を477,253円下回ります。境目の金利も0.45%まで下がります。 年収400万円では頭打ちになる年が6年あり、控除合計は211万円でした。 年収500万円と600万円は頭打ちが発生せず、控除合計も境目の金利も同じ値になります。

「低金利なら控除で利息が消える」という説明が成り立つかどうかは、金利よりも先に納税額で決まる場合があります。 自分の源泉徴収票の所得税額を確認せずに判断すると、受け取れない控除を前提に計算してしまいます。

借入額別|限度額を超えると控除が伸びない

控除の対象になる年末残高には借入限度額があります。残高が限度額を超えている年は、超えた分が控除の計算に乗りません。 借入額を変えて、利息と控除の関係がどう変わるかを見ます。

借入額毎月返済13年の支払利息13年の控除合計差額限度額に当たる年境目の金利
2,000万円 52,805円 129万円 148万円 +189,470円 0年 0.69%
3,000万円 79,208円 194万円 223万円 +284,164円 0年 0.69%
4,000万円 105,611円 259万円 267万円 +78,631円 9年 0.62%
5,000万円 132,014円 324万円 273万円 −506,088円 13年 0.51%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。35年・金利0.6%・年収500万円で、借入額だけを変えています。借入限度額は3,000万円です。

借入2,000万円と3,000万円は残高が限度額を超えないため、 控除も利息も借入額に比例し、控除/利息の割合は114.6%で同じです。 借入4,000万円では9年にわたり限度額に当たり、割合は103.0%まで下がります。 借入5,000万円では13年すべてが限度額に当たり、控除合計は273万円で固定されます。 利息324万円を506,088円下回り、同じ金利0.6%でも逆ざやになりません。

どの数字を見て判断するか

見る順番は、年収からの所得税額、借入限度額、金利の3つです。 納税額が控除の計算額に届いていないなら、金利を下げても控除は増えません。 残高が借入限度額を超えているなら、超過分には控除が付かないため、その部分の利息は自己負担です。 この2つを確認したうえで、金利が0.69%より上か下かを見ると、控除と利息の関係が整理できます。

繰上げ返済を考えるときも同じ順番です。控除が年間上限で頭打ちになっている年は、残高を減らしても控除の減少が小さく済む場合があります。 逆に頭打ちになっていない年は、残高を減らした分がそのまま控除の減少に直結します。 控除中の繰上げ返済の損得と合わせて確認すると判断しやすくなります。

確認手順

最初に源泉徴収票で所得税額を確認します。次に住宅ローンの年末残高証明書で年末残高を確認し、 借入限度額を超えていないかを見ます。この2つがそろえば、その年の控除額が計算額どおり受け取れるかが判断できます。

続いて返済予定表で、控除期間が終わる年までの支払利息を合計します。返済予定表に利息欄があれば、 控除期間の行だけを足せば済みます。変動金利の場合は、現在の金利が続く前提の数字であることに注意してください。

最後に、控除期間が終わったあとの利息も見ます。控除期間中の収支だけで判断すると、 完済までに残る利息を見落とします。借り換えや固定金利への変更を検討する場合は、 控除期間が終わる年を境に、前後で分けて比べると差が見えやすくなります。

一次情報で確認した制度の内容

控除率と控除期間、借入限度額は国税庁のタックスアンサーで確認できます。 国税庁 No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 は、省エネ基準適合住宅で令和6年・令和7年に入居した場合の控除を「控除期間13年」「年末残高等×0.7%(21万円)」と記載しています。 21万円は借入限度額3,000万円に控除率0.7%を掛けた額です。 同ページは控除額を「年末残高等」をもとに計算し、100円未満を切り捨てると説明しています。

同ページの適用要件には、床面積50平方メートル以上で2分の1以上を自己の居住用とすること、 控除を受ける年分の合計所得金額が2,000万円以下であること、 10年以上にわたり分割して返済する方法になっている借入金があることが挙げられています。 本ページで使った控除率・控除期間・借入限度額は data/loan-config.json(2026年8月時点の制度基準)の値で、 この記載と一致しています。なお、納税額による頭打ちの算出方法は本ページの概算上の前提です。

控除と支払利息の比較についてよくある質問

控除が利息を上回るなら繰上げ返済はしない方がいいのですか

控除期間中に限れば、残高を減らすと控除も減るため、削減できる利息と減る控除の両方を見る必要があります。 ただし本ページの試算では、控除が利息を上回るのは控除期間の13年間だけで、 完済までの利息326.7万円に対しては控除が68.1%です。 控除期間が終わったあとの利息をどう扱うかで結論が変わります。

年収が低い方が控除の恩恵は小さくなるのですか

控除は納める税額を超えて戻るものではないため、納税額が小さいと計算上の控除額を使い切れない場合があります。 本ページの試算では、年収300万円で13年すべてが年間上限に当たり、 控除合計は146万円にとどまりました。具体的な金額は所得控除や家族構成で変わります。

境目の金利0.69%は誰にでも当てはまりますか

当てはまりません。本ページの試算では、年収300万円なら0.45%、 借入5,000万円なら0.51%と、条件によって境目が動きました。 借入額、返済期間、年収、住宅の区分のいずれかが変われば、逆算される金利も変わります。

変動金利の場合はどう考えればいいですか

控除期間中に金利が上がると、支払利息は増えますが控除の計算額は年末残高で決まるため、同じ幅では増えません。 5年ルールがある商品では返済額が据え置かれ、元金の減りが遅くなって年末残高が想定より大きく残ることがあります。 その場合は控除額が計算上は増えますが、増えた利息を埋めるには足りないことが表の金利別の行からわかります。

まとめ

  • 金利0.6%なら控除13年分223万円が同期間の利息194万円を284,164円上回る
  • 控除と利息が一致する金利は0.69%。これを超えると控除では埋まらない
  • 完済までの利息326.7万円に対しては、控除13年分は68.1%にとどまる
  • 年収300万円や借入5,000万円では、金利0.6%でも控除が利息を下回る