定率型と定額型は何が違うのか
住宅ローンの事務手数料には、借入額に率をかける定率型と、金額が決まっている定額型の2つの方式があります。三菱UFJ銀行の説明では、定率型は借入額×2.2%(税込)が目安で保証料が通常かからない方式、定額型は一定額の手数料で保証料が別途かかる方式とされています。保証料の払い方には一括前払い型と金利上乗せ型があり、金利上乗せ型は年0.2%が目安と案内されています(三菱UFJ銀行「住宅ローンの事務手数料とは?」)。
つまり、比較すべきは手数料の金額だけではありません。定額型を選ぶと手数料は小さく収まる代わりに、保証料の分が金利に乗って毎月返済が上がります。手数料は借入時の1回きりですが、金利の上乗せは返済が終わるまで毎月効き続けます。どちらが少なくなるかは、残り期間の長さで決まります。
以下では、このサイトの計算エンジンで両方式の総支出を出して比べます。手数料以外の諸費用(抵当権設定の登録免許税、司法書士報酬、抵当権抹消費用、印紙税)は両方式で同じ条件に揃えているため、差額はそのまま手数料方式による差です。
残債3,000万円・残り25年で比べる
残債3,000万円、残り25年、元利均等・ボーナス返済なしで計算します。定率型の適用金利を0.6%とし、定額型はそこに0.2%を上乗せした0.8%としました。定額型の手数料55,000円は、このサイトが既定値として持っている金額です。実際の金額は金融機関ごとに違うため、見積もりの数字で読み替えてください。
| 項目 | 定率型(2.2%) | 定額型(55,000円+金利0.2%) |
|---|---|---|
| 適用金利 | 0.6% | 0.8% |
| 事務手数料 | 660,000円 | 55,000円 |
| 諸費用の合計 | 900,000円 | 295,000円 |
| 毎月返済 | 107,712円 | 110,366円 |
| 総利息 | 231万円 | 311万円 |
| 諸費用込みの総支出 | 33,213,567円 | 33,404,733円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。手数料以外の諸費用は両方式で同額に揃え、金利と手数料方式だけを変えています。
手数料そのものは定率型の方が605,000円高く、毎月返済も定額型の方が2,654円高くなります。総支出で見ると定率型が191,166円少ない結果でした。残り25年という長さでは、0.2%の金利差が積み上がって手数料の差を追い越しています。
残り期間別|有利な方式が入れ替わる境目
同じ残債3,000万円で、残り期間だけを変えて計算します。差額は「定額型の総支出 − 定率型の総支出」で、プラスなら定率型の方が少ない、マイナスなら定額型の方が少ないという意味です。
| 残り期間 | 毎月返済(定率型) | 毎月返済(定額型) | 総支出の差 | 少ない方 |
|---|---|---|---|---|
| 10年 | 257,637円 | 260,216円 | −295,508円 | 定額型 |
| 15年 | 174,320円 | 176,922円 | −136,761円 | 定額型 |
| 20年 | 132,681円 | 135,308円 | +25,462円 | 定率型 |
| 25年 | 107,712円 | 110,366円 | +191,166円 | 定率型 |
| 30年 | 91,078円 | 93,760円 | +360,362円 | 定率型 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。残債・金利・手数料の条件は固定し、残り期間だけを変えています。
残り10年と15年では定額型の総支出が少なく、残り20年以降は定率型に逆転します。1ヶ月刻みで逆算すると、入れ替わるのは残り19年3ヶ月でした。これより短ければ手数料を小さく抑える方が残り、長ければ金利を低くする方が残ります。
ここで注意したいのは、残り20年の差額が+25,462円しかない点です。境目の近くでは、どちらを選んでも総支出はほとんど変わりません。差が小さい帯では、総額ではなく手元資金をどれだけ残したいかで決める方が実際的です。
金利上乗せ幅別|何ポイントから定率型に傾くか
上乗せ幅は商品によって違います。残債3,000万円・残り25年に固定して、定額型の上乗せ幅だけを変えて計算します。
| 上乗せ幅 | 定額型の金利 | 定額型の毎月返済 | 総支出の差 | 少ない方 |
|---|---|---|---|---|
| 0.05% | 0.65% | 108,371円 | −407,108円 | 定額型 |
| 0.1% | 0.7% | 109,034円 | −208,473円 | 定額型 |
| 0.15% | 0.75% | 109,698円 | −9,011円 | 定額型 |
| 0.2% | 0.8% | 110,366円 | +191,166円 | 定率型 |
| 0.25% | 0.85% | 111,036円 | +392,162円 | 定率型 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。残債と残り期間は固定し、定額型の金利上乗せ幅だけを変えています。
上乗せ幅0.16%が境目で、これを下回ると定額型、上回ると定率型の総支出が少なくなりました。上乗せ幅0.15%の行では差が−9,011円とほぼ互角です。見積もりで上乗せ幅が示されたら、目安の0.2%と同じだと決めつけず、実際の数字で計算し直す価値があります。
残債別|借入額が変わると結論は変わるか
定率型の手数料は借入額に比例して増えます。では残債が小さいほど定額型が有利になるのか、残り25年・上乗せ幅0.2%で確かめます。
| 残債 | 定率型の手数料 | 総支出の差 | 少ない方 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 220,000円 | +100,405円 | 定率型 |
| 2,000万円 | 440,000円 | +145,794円 | 定率型 |
| 3,000万円 | 660,000円 | +191,166円 | 定率型 |
| 4,000万円 | 880,000円 | +236,565円 | 定率型 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。残り期間と上乗せ幅は固定し、残債だけを変えています。
この条件では、残債1,000万円から4,000万円まで、どの行でも定率型の方が少なく、有利な方式は入れ替わりませんでした。手数料が借入額に比例して増える一方で、金利差による利息も借入額に比例して増えるため、両方が同じ向きに動いて打ち消し合うからです。差額の絶対値は残債が大きいほど広がりますが、どちらを選ぶかという結論は残債では動きません。
結論を動かすのは残り期間と上乗せ幅の2つです。「残債が少ないから定額型」という整理は、この試算では成り立ちませんでした。
どちらを選ぶかの判断基準
第一に見るのは残り期間です。返済期間が19年3ヶ月より長いなら金利の低さが効く側、短いなら手数料の小ささが効く側に傾きます。借り換えで期間を短くするなら、短くした後の期間で判断します。
第二に、繰上げ返済や再度の借り換えを考えているかどうかです。定率型で払った手数料は、早く完済しても戻りません。金利が低い状態を長く使えないなら、先に大きな手数料を払う前提は崩れます。逆に定額型の上乗せ金利は、繰上げ返済で期間が短くなればその分だけ負担も減ります。この点では定額型の方が後から方針を変えやすい構造です。
第三に、手元資金です。3,000万円の定率型なら手数料は660,000円で、諸費用の合計は900,000円になります。これを現金で払うと生活防衛資金が薄くなる場合、総支出が191,166円多い定額型を選ぶ判断もあり得ます。生活防衛資金を削って総額を数十万円下げるのが自分の家計に合うかは、総額だけでは決まりません。
なお、諸費用を借入に上乗せすると住宅ローン控除の対象外になる部分が生じます。上乗せ分は按分で控除から外れるため、手数料の大きい定率型を上乗せで払うと影響も大きくなります。詳しくは諸費用を上乗せしても控除は増えないで扱っています。
申込前に確認する手順
最初に、候補の金融機関で手数料方式を選べるのかを確認します。方式が1つしかない商品もあり、その場合は方式の比較ではなく商品間の比較になります。また、借入後に方式を変更できない商品もあるため、申込時点の選択がそのまま最後まで続く前提で見ます。
次に、それぞれの方式での適用金利を実額で聞きます。ここで聞くべきは「上乗せ幅の目安」ではなく、自分に適用される金利そのものです。上乗せ幅は0.16%を挟んで結論が変わるため、目安と実額のずれがそのまま判断のずれになります。
そのうえで、手数料を含めた総支出を残り期間で計算します。見積書の諸費用の内訳を、手数料とそれ以外に分けて書き出すと、方式による差がどこから来ているかが見えます。保証料の戻りがある商品かどうかも、このときに確認します。
最後に、繰上げ返済の予定があるなら、短くした期間で再計算します。手数料と金利のどちらを重くするかは、実際に返す期間で決まります。
借り換えで比べるときの注意
借り換えの場面では、手数料方式の差は諸費用全体の一部です。残債3,000万円の場合、定率型の諸費用合計は900,000円、定額型なら295,000円でした。この差605,000円を回収できるかという問いは、そもそも借り換えで金利が下がるかという問いとは別です。
先に見るべきは、借り換え自体が成立するかどうかです。借り換えの金利差は何%から得かで出している通り、諸費用を回収できる金利差には下限があります。金利差が足りなければ、手数料方式をどちらにしても総支出は増えます。諸費用の内訳そのものは借り換えの諸費用は総額いくらで項目別に積み上げています。
また、定率型を選んだうえで繰上げ返済を重ねると、手数料を払った期間を使い切れません。繰上げ返済の手数料と削減額の関係は繰上げ返済の手数料は何円まで見合うかで扱っています。手数料方式の選択は、借り換え後にどう返すかという計画と合わせて決める方が無理がありません。
事務手数料の方式についてよくある質問
定率型の方が高い手数料を払うのに、なぜ総支出が少なくなるのですか
手数料は借入時の1回だけですが、金利の上乗せは返済が続く間ずっとかかります。残債3,000万円・残り25年の試算では、上乗せ0.2%による利息の増加が80万円で、手数料の差605,000円を上回りました。期間が短ければこの関係は逆になります。
繰上げ返済で早く完済する予定なら、どちらを選ぶべきですか
実際に返す期間で判断します。繰上げ返済で残り期間が19年3ヶ月より短くなる見込みなら、この試算では定額型の方が総支出が少ない側に入ります。定率型の手数料は完済を早めても戻らないため、期間を短くする計画と相性が良いとは言えません。
定率型の手数料は住宅ローン控除の対象になりますか
控除は年末残高を基準に計算されるため、手数料そのものが控除額を増やすことはありません。さらに諸費用を借入に上乗せした場合、上乗せ分は控除の対象外として按分されます。手数料の大きい定率型を上乗せで払うと、控除の対象から外れる割合もその分だけ大きくなります。
まとめ
- 残債3,000万円・残り25年では、定率型の総支出が191,166円少ない
- 有利な方式が入れ替わるのは残り19年3ヶ月。これより短ければ定額型
- 上乗せ幅0.16%が境目。見積もりの実額で計算し直す
- 残債の大小では結論が動かず、効くのは残り期間と上乗せ幅