入居月で初年度の控除額はいくら変わるか
住宅ローン控除は「年末残高等 × 0.7%」で計算し、居住の用に供した年分から適用されます (国税庁 No.1211-1)。 年末残高が基準なので、年の早いうちに入居して返済回数を重ねた人は、12月末の残高がその分だけ小さくなります。
条件は借入3,000万円・35年・元利均等・金利0.6%・毎月返済79,208円、 2025年入居の省エネ基準適合住宅(借入限度額3,000万円)、年収600万円とします。 入居した月に借入と初回返済が始まるものとして、12月末の残高から初年度の控除額を出します。
| 入居月 | 年内の返済回数 | 12月末の残高 | 初年度の控除額 | 1月入居との差 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年1月 | 12回 | 29,227,375円 | 204,500円 | 基準 |
| 2025年4月 | 9回 | 29,420,966円 | 205,900円 | 1,400円 |
| 2025年7月 | 6回 | 29,614,267円 | 207,200円 | 2,700円 |
| 2025年10月 | 3回 | 29,807,278円 | 208,600円 | 4,100円 |
| 2025年12月 | 1回 | 29,935,792円 | 209,500円 | 5,000円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。控除額は100円未満を切り捨てています。
1月入居の初年度は204,500円、12月入居は209,500円で、差は5,000円です。 入居が1ヶ月遅れるごとに、返済1回分の元金(初回は64,208円)が年末残高に残り、 そこに0.7%が掛かる分だけ控除額が増えます。
13年合計でも差は残る
初年度の差は5,000円なので、それだけなら小さく見えます。ただし年末残高の差は翌年以降も続きます。 12月入居のローンは、どの年末でも1月入居より11回分だけ返済が進んでいないためです。 控除期間13年分を合計すると次のようになります。
| 入居月 | 初年度 | 13年合計 | 1月入居との差 | 1年あたりの差 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年1月 | 204,500円 | 2,225,100円 | 基準 | — |
| 2025年4月 | 205,900円 | 2,243,500円 | 18,400円 | 1,415円 |
| 2025年7月 | 207,200円 | 2,261,700円 | 36,600円 | 2,815円 |
| 2025年10月 | 208,600円 | 2,279,800円 | 54,700円 | 4,208円 |
| 2025年12月 | 209,500円 | 2,292,000円 | 66,900円 | 5,146円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。各年の12月末残高を13年分計算し、年ごとの控除額を合計しています。
1月入居の13年合計は2,225,100円、12月入居は2,292,000円で、差は66,900円です。 借入額・金利・返済期間が同じであれば、総返済額そのものは入居月では変わりません。 変わるのは控除として戻る側だけで、受け取り方の差がこの金額になります。
なぜ月で変わるのか——基準は12月末の残高
控除額の計算に使うのは、その年に払った利息でも返済額でもなく、年末時点のローン残高です。 毎年の控除額は、金融機関が発行する年末残高等証明書の金額をもとに決まります。 2年目以降は、この証明書を年末調整や確定申告で使います (国税庁 No.1212)。
そのため、12月に入居した人は「1回だけ返した残高」に控除率が掛かり、 1月に入居した人は「12回返した後の残高」に掛かります。 2つの12月末残高の差は返済11回分の元金にあたる708,417円です。 元利均等返済の初期は元金の減りが小さいため、残高の差もこの範囲にとどまります。 ここに0.7%を掛けると約4,959円で、100円未満を切り捨てた表の控除差5,000円に対応します。
同じ理屈は、年末に繰上げ返済をしたときにも働きます。12月中に繰上げ返済をすると年末残高が下がり、 その年の控除額も下がります。年末と年始のどちらに入れるかで差が出る点は 繰上げ返済は12月か1月かで扱っています。
所得税額で頭打ちになる人には差が出ない
控除は納めた税金から差し引く仕組みなので、年末残高から計算した金額を、 その年の所得税額と住民税からの控除上限で頭打ちにします。 住民税からの控除上限はこのサイトの設定値(5%・上限97,500円)を使っています。 年収別に、1月入居と12月入居の初年度控除額を比べると次のとおりです。
| 年収 | 控除の上限(所得税額+住民税枠) | 1月入居 | 12月入居 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 172,263円 | 172,200円 | 172,200円 | 0円 |
| 500万円 | 235,845円 | 204,500円 | 209,500円 | 5,000円 |
| 600万円 | 302,210円 | 204,500円 | 209,500円 | 5,000円 |
| 900万円 | 726,946円 | 204,500円 | 209,500円 | 5,000円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。年収から所得税額・住民税の課税所得を概算しています(社会保険料は年収の15%と仮定)。控除額は100円未満を切り捨てています。
年収400万円の行では、1月入居も12月入居も172,200円で、差は0円です。 年末残高から計算した金額が上限を上回っているため、残高が多い側の有利さが消えます。 つまり入居月の差が効くのは、控除額が残高で決まっている人に限られます。 自分がどちら側かは、住宅ローン控除はいくら戻るのかの計算で確認できます。
入居が年を越すと変わるのは金額ではなく制度
12月入居と翌年1月入居は、カレンダー上は1ヶ月違いですが、扱いが大きく変わります。 控除率・借入限度額・控除期間は住宅の区分と居住した年で決まるため、入居年が1年ずれると適用される条件そのものが入れ替わります。
このサイトでは制度の数値を data/loan-config.json に持たせ、2026年8月時点の制度基準を基準にしています。
2025年入居は控除率0.7%・控除期間13年・省エネ基準適合住宅の借入限度額3,000万円として計算しました。
翌年以降の入居分は設定上「未確定」として扱っているため、ここでは金額を出していません。
引き渡しが年末にかかりそうな場合は、入居年がどちらになるかで条件が変わる前提で、金融機関と税務署に確認してください。
どの数字を見て判断するか
入居月は物件の引き渡しや工事の進み方で決まることが多く、控除額のために自由に選べるものではありません。 そのうえで、判断に使える数字は3つに絞れます。
1つ目は、初年度の控除額が年末残高で決まっているか、所得税額で頭打ちになっているかです。 頭打ち側なら、入居月をずらしても控除額は動きません。 2つ目は、13年合計の差です。この試算では66,900円、1年あたり5,146円でした。 3つ目は、入居が年を越すかどうかです。金額の差より、適用される制度が変わる方が影響は大きくなります。
控除は13年で終わります。終わった後に返済額は変わらないまま手取りの負担が増える点は 控除が終わると負担はいくら増えるかで計算しています。 借入が限度額を超えている場合の効き方は控除の借入限度額を超えたらを参照してください。
入居後に確認する手順
まず、入居した年を確定させます。登記や住民票の異動日ではなく、居住の用に供した日が基準です。 次に、金融機関から届く年末残高等証明書で12月末の残高を確認します。表の金額と自分の残高がずれていれば、 借入額・金利・返済開始月のどれかが試算と違っています。
控除を受ける最初の年分は、給与所得者でも確定申告書の提出が必要です (国税庁 No.1212)。 2年目以降は年末残高等証明書を使う方法が案内されています。 あわせて、適用要件には返済期間が10年以上であることが含まれます。 借り換えで残りの返済期間が短くなる場合は、この要件を先に確認してください。
最後に、源泉徴収票で自分の所得税額を見ます。所得税額と住民税からの控除枠の合計が、 年末残高から計算した金額より小さければ、その年は頭打ち側です。この場合、残高を増やしても控除額は増えません。
入居月と控除についてよくある質問
12月に入居した方が控除の総額は大きくなりますか
この試算の条件では、12月入居の13年合計が2,292,000円、1月入居が2,225,100円で、差は66,900円でした。 どの年末でも残高が高い側が有利になるためです。ただし所得税額で頭打ちになる年は差が出ません。
初年度は入居した月数で控除額が按分されますか
控除額の計算に使うのは年末残高で、入居していた月数で按分する形ではありません。 年末残高に控除率を掛けた金額を、所得税額と住民税からの控除上限で頭打ちにします。
入居を翌年に遅らせれば控除は増えますか
控除率・借入限度額・控除期間は居住した年で決まるため、年をまたぐと適用される条件が変わります。 金額の比較だけで決められる話ではなく、入居年ごとの制度を確認したうえで判断する領域です。
まとめ
- 控除額の基準は12月末の残高。入居が遅い年ほど初年度の控除額は大きくなる
- 3,000万円・35年・0.6%・年収600万円では、初年度の差は5,000円
- 13年合計の差は66,900円。1年あたり5,146円にあたる
- 年収400万円のように所得税額で頭打ちなら、入居月による差は0円