年収が下がると控除額はいくら減るか
条件を固定して比べます。入居2025年・省エネ基準適合住宅で、控除率0.7%、 控除期間13年、借入限度額3,000万円。年末残高は3,000万円で据え置き、年収だけを 600万円から1割ずつ落としていきます。名目の控除額は残高が同じなら動かないので、 変わるのは「いくらまで引けるか」という上限側だけです。
| 年収 | 下げ幅 | 所得税額 | 住民税からの上限 | 控除できる上限 | 名目の控除額 | 実受取額 | 基準との差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 600万円 | 基準 | 204,710円 | 97,500円 | 302,210円 | 210,000円 | 210,000円 | 差なし |
| 540万円 | 10%減 | 164,891円 | 97,500円 | 262,391円 | 210,000円 | 210,000円 | 差なし |
| 480万円 | 20%減 | 125,072円 | 97,500円 | 222,572円 | 210,000円 | 210,000円 | 差なし |
| 420万円 | 30%減 | 92,400円 | 93,000円 | 185,400円 | 210,000円 | 185,400円 | 24,600円減 |
| 360万円 | 40%減 | 72,491円 | 73,500円 | 145,991円 | 210,000円 | 145,991円 | 64,009円減 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。年末残高を3,000万円に固定し、年収だけを変えています。所得税額は概算です。
1割減の年収540万円でも、2割減の480万円でも、実受取額は210,000円のままです。 控除できる上限が222,572円あり、名目の210,000円を上回っているためです。 差が出るのは3割減の420万円からで、年24,600円。4割減の360万円では年64,009円減ります。
控除が減り始める年収は残高で変わる
頭打ちになるかどうかは、年収単独では決まりません。名目の控除額が残高に比例するため、 残高が小さい人は上限に当たりにくく、年収が下がっても影響を受けにくくなります。 残高別に、名目の控除額を全額引ける最低の年収を1万円刻みで逆算しました。
| 年末残高 | 名目の控除額 | 全額引ける最低年収 | その年収の所得税額 | 住民税からの上限 | 控除できる上限 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1,500万円 | 105,000円 | 287万円 | 51,968円 | 53,400円 | 105,368円 |
| 2,000万円 | 140,000円 | 350万円 | 69,683円 | 70,750円 | 140,433円 |
| 2,500万円 | 175,000円 | 405万円 | 87,397円 | 88,100円 | 175,497円 |
| 3,000万円 | 210,000円 | 462万円 | 113,126円 | 97,500円 | 210,626円 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。名目の控除額を全額引ける最低年収を1万円刻みで探索しています。
残高3,000万円では462万円、残高1,500万円では287万円が境目でした。 残高が半分になると境目の年収も大きく下がります。返済が進んで残高が減っていく人は、 年収が同じでも頭打ちから抜けていくことになります。
控除期間13年の合計ではいくら差が出るか
単年ではなく期間合計で見ます。借入3,000万円・35年・金利0.6%の元利均等で返済した場合の 各年の年末残高を使い、13年分の実受取額を積み上げました。残高は毎年減るので、 名目の控除額も年々小さくなり、途中から上限に当たらなくなります。
| 年収 | 下げ幅 | 控除できる上限(初年度) | 上限に当たる年数 | 13年の合計 | 基準との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 600万円 | 基準 | 302,210円 | 0年 | 2,225,789円 | 差なし |
| 480万円 | 20%減 | 222,572円 | 0年 | 2,225,789円 | 差なし |
| 420万円 | 30%減 | 185,400円 | 4年 | 2,181,801円 | 43,988円減 |
| 360万円 | 40%減 | 145,991円 | 11年 | 1,885,905円 | 339,884円減 |
このサイトの計算エンジンによる算出値です。各年の年末残高は返済スケジュールから求め、年収は13年間同額として扱っています。
2割減では13年合計も2,225,789円で、基準と同額でした。差が出るのは3割減からで43,988円、 4割減では339,884円です。3割減のケースで上限に当たっているのは 4年分だけで、残高が下がるにつれて差は消えていきます。 年収減の影響が「控除期間の前半に寄る」のは、残高が大きい時期と重なるためです。
控除できる上限は所得税と住民税の2階建て
控除できる上限の内訳を見ると、2つの層に分かれています。 住宅ローン控除はまず所得税から引き、引ききれなかった分を翌年度の個人住民税から引く仕組みです。 住民税からの控除は、前年分の所得税の課税総所得金額等の5%が上限で、 97,500円が限度と定められています (総務省の案内)。
最初の表の住民税側の列を縦に見ると、年収480万円以上では97,500円で止まっています。 一方、年収420万円では93,000円、360万円では73,500円で、 限度額に届いていません。課税総所得金額等が小さいと、5%の方が限度額より先に効くためです。 年収が下がるとき、減るのは所得税額だけではなく、住民税から引ける枠も一緒に縮む区間があるということです。 最初の表の「控除できる上限」の列で、年収420万円から360万円へ下がる区間は 所得税額が19,909円減り、住民税の枠も19,500円減っています。
名目の控除額は残高と限度額で決まる
もう一方の軸である名目の控除額は、年末残高と借入限度額の小さい方に控除率をかけた額です。 入居2025年・省エネ基準適合住宅の借入限度額は3,000万円、控除率は0.7%、 控除期間は13年と定められています (国税庁 No.1211-1)。 年間の控除額はこの組み合わせで210,000円が上限になります。
つまり年収減で控除が目減りするのは、名目の210,000円に対して納税額側が足りなくなったときだけです。 残高が限度額を下回っていれば名目自体も小さくなるので、頭打ちはさらに起きにくくなります。 控除額の計算そのものと合わせて見ると、どちらが先に効いているか切り分けられます。
なお住宅ローン控除には合計所得金額2,000万円以下という要件もあります。 年収が下がる方向ではこの要件は問題になりませんが、逆に上がる局面では確認が必要です。
年収が下がったときに確認する順番
まず源泉徴収票で、住宅ローン控除を適用する前の所得税額を見ます。これが上限の大きい部分です。 次に住民税の課税決定通知書で課税総所得金額等を確認し、その5%と97,500円の小さい方を足します。 この合計が、返済予定表の年末残高から計算した名目の控除額を上回っているかどうかが分かれ目です。
上回っていれば、年収が下がっても控除の実受取額は変わりません。下回っていれば差額が引ききれない分で、 その年の実受取額は上限までになります。残高は毎年減るので、同じ年収でも翌年には頭打ちが解けることがあります。 判定は一度で終わらせず、年末残高証明書が届くたびに置き直すのが現実的です。
返済負担率の側から年収減を見る場合は年収減少時の返済負担率、 控除が終わる年の段差は控除終了後の負担増で扱っています。
繰上げ返済や借り換えの判断はどう変わるか
「控除期間中は繰上げ返済を待つ方がよい」という一般論は、名目の控除額を全額受け取れている人の話です。 控除が頭打ちになっている人は、残高を減らしても実受取額が減らない区間があります。 表の年収360万円・残高3,000万円のケースでは、名目210,000円に対して上限が145,991円なので、 残高を減らして名目が145,991円に近づくまでは実受取額が動きません。
借り換えの判断でも同じことが起きます。借り換えで残高が減れば控除額も減るのが原則ですが、 頭打ちの区間にいる場合は減らないことがあります。逆に、返済期間が10年未満になると 控除の対象外になるため、こちらの影響の方が大きくなります。控除の増減だけでなく、 諸費用と金利差を含めた総額で比べる必要があります。
控除中の繰上げ返済の判定も、頭打ちかどうかで結論が入れ替わります。 自分がどちら側にいるかは、上の2つの数字を比べるだけで分かります。
年収減と住宅ローン控除についてよくある質問
年収が下がったら控除の手続きをやり直す必要がありますか
会社員で年末調整により適用している場合、控除額の計算は年末残高証明書と給与の金額をもとに行われます。 年収が下がったこと自体で別の手続きが生じるわけではありませんが、引ききれなかった分が住民税へ回る扱いは 自治体側で処理されます。具体的な手続きの要否は、勤務先と市区町村にご確認ください。
育児休業などで所得税がゼロになった年の控除はどうなりますか
所得税額がゼロであれば、所得税から引く控除額もゼロです。住民税側の枠が残っていれば、 課税総所得金額等の5%(97,500円が限度)までは引ける計算になりますが、 課税総所得金額等も小さくなるため枠自体が縮みます。引けなかった分を翌年以降へ繰り越す仕組みはありません。
共働きで配偶者の年収が下がった場合はどう計算しますか
住宅ローン控除は借入をしている本人の所得税額と住民税を基準に計算します。 連帯債務やペアローンのように持分と借入が分かれている場合の按分は、このサイトの計算エンジンでは扱っていません。 本ページの数字は、単独で借入している前提の概算としてご覧ください。
まとめ
- 年末残高3,000万円の名目の控除額は210,000円
- 年収600万円が480万円へ2割下がっても実受取額は210,000円で変わらない
- 3割減の420万円で年24,600円、4割減で年64,009円減る
- 境目の年収は残高で動く。3,000万円なら462万円、1,500万円なら287万円
- 13年合計の差は3割減で43,988円、4割減で339,884円