上限が下がるのは、上限が返済額から決まるから

125%ルールは「改定後の返済額は直前の1.25倍まで」という決まりです。基準になるのは今の返済額なので、今の返済額が下がれば上限も下がります。返済額軽減型の繰上げ返済は、まさに今の返済額を下げる方式です。

3,000万円・残り35年・金利0.6%の毎月返済額は79,208円で、次の改定の上限は99,010円です。ここで300万円を返済額軽減型で返すと返済額は71,287円になり、上限は89,108円まで下がります。差は9,902円です。

上限の決まり方そのものは125%ルールの上限はいくらか早見表で確認できます。

繰上げ額ごとに、上限と危険水位はどう動くか

同じ繰上げ額で、返済額軽減型と期間短縮型を並べた結果です。危険水位は未払利息が発生し始める金利で、残債と返済額から逆算しています。

繰上げ額軽減型の返済額軽減型の上限軽減型の水位短縮型の上限短縮型の水位
返済しない79,208円99,010円3.17%99,010円3.17%
1,000,000円76,568円95,710円3.17%99,010円3.28%
3,000,000円71,287円89,108円3.17%99,010円3.52%
5,000,000円66,007円82,508円3.17%99,010円3.8%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。残債3,000万円・残り35年・金利0.6%・元利均等で、繰上げ返済を1回だけ行った直後の値です。上限は返済額×1.25の円未満切り捨て、水位は残債と返済額から未払利息が出始める金利を逆算しています。手数料は含めていません。

読み取れるのは2つです。軽減型は上限を下げますが繰上げ直後の水位は3.17%から1度も動きません。元利均等では返済額が残債にほぼ比例するため、残債が減ると返済額も同じ比率で減り、両者の比で決まる水位が変わらないからです。期間短縮型は返済額が79,208円のままなので上限も99,010円で動かず、残債だけが減るので水位が上がります。

上限が下がると、何が良くて何が悪いのか

良いのは、1回の改定で上がる金額が小さくなることです。上限89,108円なら、改定で増えるのは最大17,821円までです。繰上げ前の上限99,010円では最大19,802円増える計算だったので、増加の幅が抑えられます。

悪いのは、上限が低いほど「上限で止まる」機会が増えることです。上限で止まった分は消えず、元金の減りが遅れる形で残って次の改定に回ります。差額の行方は上限で止まった差額は次の改定で戻るで計算しています。

つまり軽減型は、返済額の上がり方をならす方式です。払う総額そのものを小さくする効果は、期間短縮型のほうが大きくなります。

水位を超える上昇が来た場合に残るもの

危険水位を超えると、利息が返済額を上回って未払利息が出ます。水位が動かない軽減型と、水位が上がる期間短縮型で、何が残るかを比べた結果です。300万円を繰上げ返済した場合で、上昇は5年かけて起き、その後は横ばいという仮定です。

上昇幅到達金利方式未払利息返済額の最大値
+3%3.6%繰上げなし発生しない142,015円
軽減型300万円発生しない127,814円
短縮型300万円発生しない132,948円
+3.5%4.1%繰上げなし63,420円164,877円
軽減型300万円57,078円148,409円
短縮型300万円発生しない150,987円
+4%4.6%繰上げなし829,932円196,939円
軽減型300万円747,024円177,237円
短縮型300万円62,340円181,397円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。同じ前提で5年ルール・125%ルールあり、元利均等として月次で計算しました。未払利息は利息が返済額を超えた月の差額の累計で、返済額の最大値は完済までの各月の返済額のうち最も大きい額です。

+3.5%(到達金利4.1%)の行が分かれ目です。繰上げなしでは未払利息が63,420円出ます。軽減型300万円でも57,078円残りますが、期間短縮型では発生しませんでした。

分かれたのは改定後ではなく、据え置き期間の途中です。未払利息が最初に出るのは48ヶ月目で、このときの金利は3.4%でした。到達金利4.1%まで待たずに発生しています。

方式48ヶ月目の水位そのときの金利未払利息
繰上げなし3.35%3.4%発生する
軽減型300万円3.35%3.4%発生する
短縮型300万円3.78%3.4%発生しない

このサイトの計算エンジンによる算出値です。+3.5%のシナリオで、繰上げなしの場合に最初に利息が返済額を超えた月(48ヶ月目)を取り、その月の残債と返済額から各方式の水位を計算しました。水位は固定値ではなく、残債が減るにつれて上がります。表1の水位は繰上げ直後の一点で、この表の水位は48ヶ月目の値です。

繰上げなしと軽減型の水位は、この時点でも3.35%で同じでした。軽減型は残債と返済額が同じ比率で下がるため、何ヶ月経っても繰上げなしと同じ水位をたどります。だから金利3.4%が水位を超えた時点で、どちらも発生します。

期間短縮型だけは水位が3.78%まで上がっていました。返済額を79,208円に据え置いたまま残債だけが減るので、利息は71,218円にとどまり返済額を超えません。これが未払利息ゼロの理由です。

一方で返済額の最大値は軽減型が148,409円で、期間短縮型の150,987円より低くなりました。毎月の負担の山を低くするのは軽減型、未払利息を避けるのは期間短縮型という結果です。

どちらを選ぶかの判断材料

2つの方式は別のものを守ります。選ぶ基準は、いま困るのが「毎月の金額」か「最終回の一括請求」かです。

  • 改定後の返済額が家計に入りきらない心配が先 → 返済額軽減型。上限が下がるので改定の山が低くなる
  • 未払利息が最終回に回ることを避けたい → 期間短縮型。水位が上がるので発生しにくくなる
  • 総支払額を小さくしたい → 期間短縮型。上の表でも総額は期間短縮型が小さい(4.1%で47,481,576円対51,448,042円)

方式そのものの違いは期間短縮型と返済額軽減型どっち、水位を上げる必要額は危険水位を1ポイント上げる必要額で計算しています。

上限が下がることを使う場面

改定の時期が近く、改定後の返済額が払えるかどうかが不安な場合に意味があります。改定の直前に軽減型で返すと、改定の基準になる返済額が下がった状態で上限が計算されます。

ただし改定をまたぐ前後で効果が変わります。改定の直前と直後のどちらで返すかは繰上げ返済は改定の直前か直後かで比べています。次の改定の時期そのものは借入年月の早見表で目安が読めます。

水位が動かないことの意味

表1で軽減型の水位が3.17%から動かなかったのは、このサイトの計算で元利均等を前提にしているためです。元金均等では返済額の決まり方が違うので、同じ結果にはなりません。元金均等に未払利息が出るかどうかは元金均等に未払利息は出ないのかで扱っています。

水位は残債と返済額だけで決まるので、残債が大きくても残り期間が短ければ高くなります。残り期間との関係は未払利息は何%から出るか早見表で確認できます。

自分の上限と水位を確かめる手順

  1. 返済予定表で今の毎月返済額・残債・次回の改定時期を確かめる
  2. 今の返済額を1.25倍して、繰上げ前の上限を出す
  3. 金融機関のサイトか窓口で、軽減型にした場合の返済額を試算する
  4. その返済額を1.25倍して、繰上げ後の上限を出す
  5. ツールに残債と返済額、想定する上昇幅を入れて、未払利息が出るかを確かめる

軽減型と上限についてよくある質問

期間短縮型では上限は下がりませんか

下がりません。期間短縮型は毎月返済額を変えずに期間を縮める方式なので、上限の基準になる返済額が79,208円のまま残ります。上の表でも上限は99,010円で動いていません。代わりに残債だけが減るので、危険水位が上がります。

上限が下がると総支払額も減りますか

上限が下がったことで減るわけではありません。繰上げ返済で元金が減った分だけ利息が減ります。同じ金額なら期間短縮型のほうが総額の減りは大きく、上の表の4.1%の行では3,966,466円の差が出ました。

軽減型で返すと未払利息は避けられますか

試算では避けられませんでした。軽減型は残債と返済額が同じ比率で下がるため、水位が繰上げなしと同じ経路をたどります。+3.5%のシナリオでは48ヶ月目に金利3.4%が水位3.35%を超え、軽減型でも57,078円残りました。未払利息を避ける方向では期間短縮型のほうが効きます。

まとめ

  • 軽減型で300万円返すと上限は99,010円から89,108円へ下がる
  • 一方で危険水位は3.17%のまま動かない
  • 期間短縮型は上限が99,010円のまま、水位が3.52%へ上がる
  • 返済額の山を抑えるなら軽減型、未払利息と総額を抑えるなら期間短縮型